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雷鳴と軽やかなヘソ隠し
いつも通り、ケイくんをお迎えに行き、手をつないで公園を通って一緒に帰る。
どのような日を過ごしたのか、気になってついつい毎日聞いてしまう。
もしも、お友だちとイヤなことがあったら、いきなり友人ネタはキツいだろうから、いつもまずは食事ネタから入る。
お昼ごはんはよかったけど、おやつがあんまりだった…など、ひと通り話し終えたあと、今日お友だちと遊んだことをぽつぽつと話してくれる。
「サトルくんと”おにかけっこ”したんだよ」
「追いかけっこ?」
「ううん、おにかけっこ」
(ちがいがよくわからなかったけれど、どうやら追いかけっこと鬼ごっこの合体版らしい)
「毎日サトルくんと遊んで仲よしだね。ナオユキくんとは今日は遊ばなかったの?」
「今日はお昼の前はケイくんのこと仲間に入れてくれなかったんだ。お昼のあとは一緒に遊んだけど」
「ふーん、そうなんだ」
と何気ない風を装いつつ返事をするが、こころの中は少しざわつき始める。
イジメとかではなく、小さい子同士のその日の軽い気分によるもので、翌日にはケロっと一緒に遊んだりすることはわかっている。それでも仲間に入れてもらえなかった、などと聞くと、どうしてもかなしい気持ちになってしまう。
ケイくんには少しでもかなしい気持ちになってほしくない。
幸せ、楽しいと感じる時間ができるだけ多くあってほしい。
でも、これから大きくなるにつれて、どんどん親の目や手が届かないところへ行って、自分で解決したり乗り越えたりしなければならないことが増えてくるのだろう。
お腹の中、ゼロ距離からスタートした母子の関係は距離がどんどん広がる一方だ。
1日中一緒にいてイヤなことやつらいことから守ることはできないけれど、そんなことがあったとき、わたしの存在やおうちの中がこころ休まる回復できる場所でいられたらと半ば祈るように思う。
ざわつくわたしをよそに、遠くの雷鳴を耳にしたケイくんは「うわっ!大変だ!ヘソかくさなきゃ」と急いでロンTをパンツにインして小走りで坂をおりていった。
ひとつも深刻そうではない。
軽やかさそのもののケイくんの姿に、今はむしろわたしの方が安心させられている。
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