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エイプリルフール朝の夢は、次郎が死ぬ夢だった

エイプリルフールか~、夢か~、と思うことなかれ。私の夢は実感を伴って、体験したのと同じ感覚をその後に残す。今朝の夢は正に、次郎が殴り殺された後の自分をありありと見る夢だった。

タイトルが縁起でもないので、タイトル写真は、子どもたちが小さかった頃の写真を使った。ちょうど20年くらい前か?中央の次郎が7歳の誕生日写真だ。

20年後の現在は27歳になった次郎だが、重度知的障害者27歳と聞いた時、人々はどんなイメージを持つだろうか?私が知る次郎は、この写真の7歳の時となんら変わらない次郎だ。言葉はしゃべれないままだし、出来ないことも多いけれど、優しくて、明るくて、面白いヤツだ。けれど、体が大きくなり、力が強くなり、そしてよだれを垂らしている。中身を知らなければ、怖いと思う人もいるのかもしれない。

それは、知的障害のある多くの男性障害者が持たれる偏見であることから、『気は優しくて力持ち』とプリントしたTシャツを作ろうかと、頭の中に構想があるくらいだ。どうかな?需要があれば作ります。てか、次郎ひとりのためだけでも作ろうかな?それほどまでに、誤解と偏見を私は畏れている。

その畏れをまざまざと見せつけられるニュースを最後に貼りつけるので、よかったら見てほしい。青梅市の自立支援施設で、2022年3月28日、入所者の松井祐太朗さん30歳が職員から殴られ、その後死亡する事件があった。ここに松井祐太朗さんのご冥福をお祈りして、二度とこのような事件のない社会にする努力をすることを誓います(何度私は誓ったろう。力不足を申し訳なく思う)。松井祐太朗さんの命は戻ってこないけれど、もしも、あなたの名誉を傷つける発言をする人がいれば私は許しません。

最後に貼り付けたニュースの施設側のコメントがひど過ぎる。一般社団法人自立支援塾 理事長は「(亡くなった松井さんは)本当にハンパな力じゃないんですよ。職員が両手両足を抑えるような。そんなこともあったので」とのうのうと答えている。亡くなってしまった直後だというのに。さすがに非難されたのか、今、この法人のHPも削除されているので、どんな施設だったのか知ることも出来ない。しかし、隠蔽だけは素早かったことから、また、職員ひとりの責任にして、逃げるのだろうか?

このような事件に触れて「でも、暴れたとしたら、仕方ないかも?」と思う方が居たら、ちょっと長いかもしれないけれど、以下に貼り付ける動画『子どものこころ発達医学教室 本田秀夫教授司会』の吉川徹医師の話し(4:40頃~)を聞いてほしい。吉川徹医師は、育ってくる中で、力で押さえつけられてきた子どもは、自分の力が強くなった時に、力にものを言わせる(暴力で要求を通す)ようになる、と解説されている。

https://youtu.be/rQw7ooPrAw0

もしも、「やむなく力で押さえつけるしかない」と思っている人が居るとしたら、思考を停止しないで、考え続けてほしい。力では解決するどころか、事態を悪化させるばかりだと知ってほしい。「しょうがない」ということの果てには、自分が認知症になった時に、笑顔で介護されるのではなく、手足を拘束される将来が待っているのだから。

さて、エイプリルフールの朝に見た夢だ。(夢の話)次郎が殴り殺されて、私は真実が知りたいと右往左往する。ところが次郎が暴れたからとか、しかたなかったとか言われる。「お母さんだから、次郎さんを庇いたい気持ちはわかりますけど、他の利用者さんも守らなくてはならないんです。施設としても困ってたんですよ。」そう言われて言葉を失った私は気がふれる。

(夢の続き)次郎が死んだことを受け入れないと決めた私は、何もなかったように、次郎が帰ってくる夕方4時に次郎を迎えて話しかける。「おかえり~。なに?今日は浮かない顔してるけど、なにかあったの?」幻の次郎が答える。『今日は嫌なこと言われたんだよ~』私は答える。「そんなこともあるよ~そうだ、ケーキあるけど食べる?」幻の次郎が答える。『食べる』私は冷蔵庫からケーキを一つ出す。幻の次郎が言う。『あれ、二つあったのに、どうして一つなの?』私は答える。「え?覚えてたの?次郎のことだから忘れると思ってたのに。バレたか?お母さん一人でひとつ食べちゃったんだよね」幻の次郎が言う。『覚えてるよ。じゃ。このケーキはボクのだよね。』私は答える。「そうそう、これは次郎のケーキ。だから、お母さんにちょっとちょうだい」幻の次郎が言う。『そういうことなら、いいよ、分けてあげる』私は言う。『ありがと~。いやね、このケーキ美味しくて、黙って一人で二つ食べちゃおうかと思ったの』それを聞いた幻の次郎が大笑い。私も一緒に笑う。そこに次郎の姿はなく、私がケーキを切り分け、大きいほうをだれも座っていない席に置き、私は少しだけ切り分けたケーキを食べながら笑っている。

(夢の続き)「え、もう出かけるの?」と私は幻の次郎が玄関に向かうのを見て言う。『そうだよ、いつもママは遅いから嫌なんだよ』と幻の次郎が答える。「違うよ、次郎がせっかなんだから。お母さん、せっかちな人嫌いよ」と私は言う。『ボクは遅いのは嫌いだよ』と幻の次郎が言う。「夫婦だったら離婚だね」と私が言うと『アハハ』と幻の次郎が大笑いする。私も笑いながら買い物かごに財布と携帯を入れて、おおいそぎで買い物に出かける。

(夢の続き)近所では、夕方に独り言を言いながら買い物をしている私は気味悪がられる。次郎が死んだことを教えてくれる友人も居るが、私は全く聞く耳を持たない。「え?あなたには、見えないの?ここに次郎が居るでしょ」そう言って指さした食卓には、次郎の好物が積まれて、古い順に腐っている。

<夢おわり>

ああ、夢でよかった。ニュースで流れる知的障害のある人の死は、私にとって、次郎のことなのだ。何があったのか?なぜ、そんなことになったのか?真相が明らかになることは、ほとんどない。そして、忘れられてゆく。

佐賀県で2007年に警官に取り押さえられて亡くなった安永健太さんの事件は、斎藤貴男さんによって「健太さんはなぜ死んだか」という本になっているので、ぜひ、読んでほしい。私は、福岡高裁に傍聴に行った時に、健太さんの弟さんが「兄が暴れたと警察は言うけれど、弟の私は兄が暴れているところなど見たことはありません。もしも暴れたというのなら、暴れるようなことをされたとしか思えない」とおっしゃっていた。そして、私に「ネットを見てください、ひどい書かれようです。いや、お母さんは見ない方がいいです。本当にひどいから」とおっしゃった。

健太さんの死と、今回の事件は全く別もので同列にすべきではないけれど、知的障害者が暴行を受けて死亡した事件がニュースになる時、ニュースを受け止める人々の心に、どのような印象を残すのだろう?と思う。

もしも「殺された方にも何か問題があったのだろう」と思わされるとしたら、私はどうやって、それに抗えるだろう?

そう思いながら寝たからだろう。夢で私は正気を失っていた。

今、私に出来ることは、知的障害者・次郎の中身を、知ってもらって、世間に蔓延る偏見と差別をなくすことしかないだろう。

とりあえず、次郎が夕方4時に帰って来ることを喜ぶことにしよう。

帰ってこない知的障害者も居るのだから。



3/30(水) 16:41配信 の内容の書き起こしを張り付けておく(ニュースは消えるので)

東京都内の障害者施設で、職員の男が入所者の男性に暴行を加えけがをさせたとして逮捕されました。男性はその後死亡していて、警視庁は死因や経緯などを調べています。


東京・青梅市の障害者施設の職員、落合大丞容疑者(40)。おととい夜、入所者の松井祐太朗さん(30)の顔面を複数回なぐりけがをさせた傷害の疑いできのう警視庁に逮捕されました。

記者
「こちらの障害者施設で入居者の男性が倒れているのが見つかり、まもなく死亡しました」

警視庁によりますと、落合容疑者は施設3階で松井さんと別の入所者がトラブルになった際、2人を仲裁し、松井さんに暴行を加えたということです。施設などによりますと、その後、松井さんは何らかのはずみで階段の踊り場に転落。さらに2階まで転げ落ちたということです。自力で浴室に行き体を洗っていた最中、意識不明の状態に陥りました。

「入所者が階段から落ちた。風呂場で意識がない」

119番通報したのは落合容疑者。松井さんは病院に運ばれましたが、死亡が確認されました。施設の職員による入所者への暴行。施設の元職員は、落合容疑者が日常的に入所者に暴力を振るっていたと証言しました。

元職員
「運動の時に(落合容疑者が)後ろから (入所者を)蹴りながら、一緒に周りをぐるぐる回るような形はよくやってましたね。車から引きずり下ろすのをおもいっきり引きずり下ろして、首絞めてた。祐太朗(松井さん)の首を」

一方、施設側は、松井さんが亡くなったことについて「残念で申し訳ない」とした上で、職員が厳しい対応を取らざるを得ない事情があると主張しました。

一般社団法人自立支援塾 白井理子理事長
「(亡くなった松井さんは)本当にハンパな力じゃないんですよ。職員が両手両足を抑えるような。そんなこともあったので」

施設の職員
「他の入所者も守らなくてはいけない。お預かりしている身ですから。こうすればいい、ああすればいいという答えは出ないと思います」

落合容疑者は「殴ったことに間違いありません」と傷害容疑を認めているということで、警視庁は松井さんが階段を転落した経緯や死因を調べています。

(30日15:50)


翌日の続報。私は司法解剖で死因がわかることを期待していましたが、死因は特定されず、死人に口なしになってしまって残念です。

東京・青梅市の自立支援施設で、障害者の男性を殴りけがをさせたとして逮捕された職員の男が「言うことを聞かせるために男性を殴った」などと話していることが分かりました。

 落合大丞容疑者(40)は28日、勤務する青梅市の自立支援施設で、入所者の男性(30)の顔を殴るなどしてけがをさせた疑いが持たれています。

 男性はその後、死亡が確認され、顔や胸にあざがありました。

 警視庁の司法解剖で、男性の死因は特定されませんでした。

 捜査関係者によりますと、落合容疑者は「言うことを聞かせるために男性を殴った」などと話しているということです。

 落合容疑者は、男性と他の入所者とのトラブルを仲裁した後に暴行したとみられています。(テレ朝news 2022/03/31 12:17)

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