SZA

Facebookを見ていたら、今年のフジロックのメンツが発表されていた。
トリはクラフトワーク、ノエル・ギャラガー、そしてSZAという見たことのない名前。
まず読めない。ウータン・クランにRZAという人がいたがあれはレザと読んだはずだ。
SZA。スザ?セザ?しかしフジロックのトリを務める人なのだから名のある人なのだろう。そしてその名前を知らないという事は、もうおれは前時代の人間なんだ、という現実を痛感したのである。
まあ別にいい。新しい音を常に欲しているわけではないし、おれの知らない音は古い音楽でもまだまだたくさんある。
でも一応チェックはしてみようかなとSZAというその名前を検索してみた。
どうやらシザと読むらしい。グラミー賞取ってる。それだけの情報を持って、音を聴いてみた。
クセがない。ジャンルでいえばR&Bなのだろう。でも、ビヨンセほど暑苦しくないし、ビリー・アイリッシュほど冷めた毒でもない。エイミー・ワインハウスほどスレてもいない。生楽器を使ったオーガニックなサウンドと、力まずリラックスした声。ゴリゴリのR&Bというよりは、アリシア・キーズのようなソウルに近いかもしれない。でも、アリシア・キーズほどゴージャスではない。それよりは少しばかり人肌に近いサウンド。少しだけ、孤独を感じるサウンドだ。ヒップホップを感じさせる曲もいくつかあり、どことなくNujabesに通じるメロウなサウンドもある。
とにかくクセがなくて聴きやすい。暑苦しいR&Bは少々苦手なので、BGM代わりにしばらく聴いていた。聴きながら、おれはなぜこのサウンドに惹かれているのだろうと考える。おれは音楽を聴くときにどこで評価しているのだろう、そんな事を考える。
物語なのかな、と思った。そのアーティスト自身の物語、楽曲が描く物語、そして、それを聴いている人の物語。きっと、おれはその3つのうちどれかを見出した楽曲やアーティストに惹かれているのだろうと思う。
このSZAに関して言えば最も強く感じたのは「それを聴いている人の物語」である。仕事は充実している、恋人も、友人にも、家庭にも家族にも恵まれている。あなたは幸せだと感じる。でも、どこかに何かが足りないとも感じる。漠然と、もやもやとしたものがあなたを揺さぶる。友達や恋人に、「どうしたの」と聞かれればあなたは笑って何でもない、と答える。それはきっと、誰かと共有することのできない感情なのだろうと思う。そんな物語が、SZAの楽曲からは紡がれているような気がする。
フジロックで見たいか、と言われると答えはNOだ。フジのような野外の大きな空間よりは、もっと小さい、もっと濃密な空間で見たいと思う。ビルボードライブ、ブルーノート、あるいはもっと小さなクラブ。
そんなところでライヴするのなら見に行くかな。おれが思い浮かべた物語を確かめに。


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