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【ネタバレ】信じてくれ……空田さん信条イベスト感想【アンゼロ】

イベストめちゃくちゃ面白かったです。これぞエンターテインメントですね。

主役の空田さんの見せ場が良いのに加え、依頼を3時間で達成しなければならない緊迫感、3ルートに分かれストーリーが並行することにより際立つ全キャラの個性や有能さ、華麗なミスリードに伏線回収と見事なストーリーでした。これが無料で読めてしまうんだから、有料コンテンツは商売上がったりですわ……。

ここから先は空田さん信条イベのストーリーを読んだ感想で、ネタバレしかしていないのでご留意ください。全シーン・全セリフに意味がありそうで1つ1つ語っていきたいのですが、原作の100倍の文字量になってしまうので、ぐっと堪えて割愛します。それでも6000文字オーバー! イエーイ!!

あらすじ

平和な休日を過ごしていた空田と七篠は、血まみれの男・氏屋を発見し事務所で保護。山神が治療に当たる。

氏屋はトツベという女に金を届ける途中、同僚の繰井に襲われた。空田と七篠が代わりにトツベを探し、金を届けることに。

繰井は氏屋と空田・七篠を追い、凶器を振り回しながら街を徘徊。警察も動き出す。繰井のターゲットである空田・七篠は使われていない倉庫に身を隠し、トツベ捜索を夏井・東海林に任せる。

夏井・東海林がトツベの居場所を見つけると同時に、繰井が倉庫に入って来る。空田が繰井を引きつけ、七篠は脱出して金をトツベに届けに行く。

空田さんの信条とは何だったのか?

イベストでは空田さんのポジティブさ、判断の速さ・的確さ、危機に対する圧倒的な経験値が描かれていました。うまい書き方でしたね、依頼達成への焦りや繰井に対する恐怖をストレートに感じるメイメイに対して、空田さんは終始明るいんですよ。一見、先輩が後輩を励ます普通の描写ですけど、命のかかった局面です。焦りも恐怖も無い空田さんがいかに超人……というか「異常」であるかが暗に示されていました。

また、氏屋さんを発見したときは空田さんのスピードについていけないメイメイでしたが、繰井と空田さんの戦闘シーンではナイフを蹴ってパスするなど阿吽の呼吸が見られました。空田さんとの距離を縮めてメイメイが成長するストーリーでもあると感じました。

では、しばし空田さんの話を。

氏屋と戦場での仲間

事務所に運ばれて山神さんの応急処置を受けたあと、氏屋さんはトツベに金を届けたいと願いを口にします。空田さんは動けない氏屋さんに代わって願いを叶えると言い、それには過去の仲間の姿が重なっていました。

空田さんが戦場でともに戦った仲間の一人は、「頼みがある」と言ったきり二度と喋れなくなったそうです。空田さんは「何が救いになるかなんて本人にしか決められない」と言いましたが、過去の仲間はそれすら口に出せずに亡くなりました。

空田さんは「氏屋っちの願いを叶えてあげたくなった」と言いましたが、そんな湿っぽい理由で頼みを引き受けたら、普通、「歯を食いしばり、涙を堪えながら『その願い、俺たちが叶える』と手を握った」みたいな描写になると思うんですよ。でも空田さんは爽やかに「オッケ、わかった」と軽く承諾しましたよね。

ここに空田さんと過去の仲間の関係が表れていると思っています。涙で濡らすべき記憶ではないのだと感じました。空田、強い。

判断の速さ

空田さん交流ネタバレなので気になる方は読まずにブラウザを閉じて欲しいのですが、



(たしか)コーヒーをあげると、「二択のときは右って決めてる。一瞬の迷いが命取りになることがあるから」的な会話が出ます。うろ覚えすみません、概要は合ってると思う。

今回のイベストのバッセンのシーンで、空田さんは「何が正しいのか俺もわかんない」「昔は自分が正しいって信じてた」「信じて突っ走って戦場で迷子になった」「迷うことがなかった自分を戦場に置いてきちゃった気がする」と言っていました。

つまり「自分が正しいと信じていた空田」は戦場を経て「自分が正しいと信じられなくなった」のですよね。戦場での経験が彼に迷いを覚えさせ、しかし迷った結果判断が遅れ、誰かが傷つくことがあったのかもしれません。それで「二択のときは右」など自分のルールを作ったのかなと思いました。

信じることの重み

そういえば今回のイベスト、火村班の男たちが出てきませんでした(直くんは火村班ですが、住み込みゆえの登場としてノーカン)。結城班は、新規カードの空田さん、山神さん、東海林さんだけでなく、所長、風晴さんも少し登場しました。この2人は、当日不在の理由が作中で明示されてるんですよ。わざわざ登場させて、「不在です」と言わせている。とても意味深。

一方、メイメイこと主人公は火村班の所属。あ、これは暗に、結城班と火村班の対比を表しているな、結城班イベとも取れるな、ということで、『ネオン差す街 よい子には向かない職業』の16話(所長がメイメイを火村班に振り分けた最終話)だけ読み返してきました。全話再履修する時間はなかった、ごめんなさい……。

というわけで、ここからは空田さん信条イベに加えよい子イベもネタバレします。見たくない方はブラウザを閉じてくださいね。



よい子16話では、所長とメイメイが「今回の調査どうだった?」的な会話をします。「なんでも始めから疑ってかかるほうが楽だろ」と言う所長に対し、「それでも信じたい」とメイ。他にも材料はあったと思うけど、この発言が火村班配属の決定打になったと思われます。

言い換えると、結城班に所属しているのは「なんでも始めから疑ってかかるタイプ」です。空田さんもその一人だとすると、信条イベで言った「メイは俺のこと信じてくれてる」「信じた上で一緒に戦ってくれてる」にますますの重みを感じませんか?

「信じる」は空田さんが自給自足できないもので、付き合いの浅いメイメイがどうして自分を信じてくれるのか分かってない可能性があると思います。メイメイとしては、空田さんの迷いの無さや俊敏さに対して、歌舞輝町を上回る場所での経験値を感じ取ったのだろうし、それは空田さんを信じるには充分な根拠なんだけど、本人は「そんなことで信じてくれちゃうの?」と思っているような気がする。大したことではないでしょ、的な。

そんな「始めから疑ってかかる側」の空田さんですが、メイメイに手を握られたとき、メイメイが空田さんを信じていることが伝わったようで……本当に良かったです。倉庫での「またあとで、メイ!」「はい!」激アツでしたね~。バッセンで直接ではなくネット越しに重ねた手が、あともう少しの距離感を表していると感じました。

メイメイ的には空田さんの居場所が「ここ」になってほしいんですかね? 二人で探しに行くエンドも良さそうだと思いました。恋愛ゲームとしてどうか分からないけど。

結局、空田が分からねえ

ただ、上記は空田の過去の経験から派生する行動であって、どれも原理ではないんですよね。信条イベで色々分かった気分にはなったけど、行動の「原理」の部分が分からないから、よく考えると何ひとつ理解が進んでいない(なのに分かった気になれる、充実した気持ちになれるあたり、ストーリーテリングが巧みすぎて妬けます)。私がまだ親密レベルを上げられていないからかもしれませんが……。

空田さんの一番解せないのが、「戦場に魂を半分置いてきちゃった」と言いつつ、戦場でない場所に身を置いていることです。君はどこにいたいの? どこにいるのが幸せなの? って話。歌舞輝町の仮初の平和をウソみたいに感じていて、消えそうな命が当たり前に溢れているほうがホントなんですよね? 戦場が自分の居場所なら、倫理的な話は置いておいて、積極的にそこを選んでも良いと思うんです。

私が彼を理解できない一番の理由がこれです。なぜ歌舞輝町にいなきゃいけないのか分からない。私の読解力不足かな。だとすると、個別ストが来ても私だけ理解できないかもしれない……。

戦場が自分の居場所だと自覚しながらも、戻れない理由があるのでしょうか。または、戦場にいたくない自分もどこかにいて、綱を引き合った結果、そこそこ治安の悪い歌舞輝町に落ち着いているのでしょうか。

個別スト0章のインタビューで、所長と火村さんに衝撃を受け、肩を並べられるようになりたいと言っていたので、彼が触れて来なかった価値観がハローにはあるのかも。だとしてもそれが何なのか分からないので、「結局なんも分かんねー!」としかコメントしようがないですね。

空田さんが歌舞輝町で何をしたいのか、何のために歌舞輝町にいるのか、早く知りたいところです。(次イベのチラ見せ予告を見て思ったんだけど、結城怜二の信条で各キャラが所長のどこに引きつけられたのか推察できる可能性ある……?)

他のキャラクターについて

前々回より前回、前回より今回とどんどんイベストが面白くなっているのは、作り手側も世界観やキャラへの解像度が高まっているからだと思います。狂言回しや便利屋のようなキャラの使い方をしなくなり、それぞれがお話の中で「動いて」いましたよね。

メイメイの成長については少し触れたので割愛し、他のキャラの絡みについて語っていきます。

山神・雪原ライン

雪原先生、カードにいないのに良い役回りでしたよね。雪原先生と山神さんは過去に何かあった旧知の医師たちで、絶縁状態というか接触を避けているのですが、遠隔でいちゃつくのどうにかなりませんか?

すぐに病院に連れて行かないと命が危ない氏屋さん。しかし追手から守るためにはハローに置いておきたい……ということで、空田さんは「雪原先生から必要なものを借りてきて、山神さんがどうにかする」と提案しました。雪原先生に断られると心配する直くんに対し、

山神「断らないさ。僕の第六感がそう囁いている」

東海林さんと直くんが一番街医院に必要なものを借りに行くと、山神さんのメモを見ながら「本来なら手術中から必要な処置」とキレつつ

雪原「……こんなこと、あいつには釈迦に説法だろうが」

テレパシーで会話成立すな!!!!!

夏井さん信条イベでも、雪原先生がメイメイにトマトを押し付け、「リコピン不足のやつがいる」「リコピンもデコピンもいらんねん」と遠隔でいちゃついてましたよね。

山神さんと雪原先生の間に何があったかは別として、それぞれの有能さは分かっている安心感。誰かの命を助けるためなら、「いや~、あいつとは組みたくないっすね~」みたいな私情は挟みません。

イベストで山神さんが名医っぷりを披露したのは、今回が初めてだと思います。「あっ、この人、ネタ枠じゃなくてデキる人なんだ」と思った人もいるのでは。雪原先生の名医っぷりはこれまでにも描かれてきたので、歌舞輝町の医師たちの過去を描く準備が整ったという形でしょうか。

夏井・東海林ライン

狐と猫のコンビ。二次創作と妄想で既に1億回見た気がする禁断の組み合わせに、公式が乗り出してきました。乗るしかない、このビッグウェーブに……!

夏井さんと東海林さんが組んだ(組まざるを得なくなった)のは、空田さんとメイメイが倉庫に隠れて動けなくなったとき。空田さんが取引を持ちかけ、空田さんとメイメイに代わり、夏井さんと東海林さんがトツベさんを探すことになりました。完全に空田さんの手のひらの上、29歳の年上ムーブが感じられました。

このシーン、夏井さん、東海林さん、空田さんの3人が1つの画面に並んだのが最高でしたよね。Aさんが喋っているときにBさんの表情が変わるなど、アニメのような動きをしていました。

夏井さんも東海林さんもスマートなので、空田さんとメイメイのように足でビルを1つずつ当たるのではなく、文明の利器を活用して調査します。ここで記憶力バトルが始まり、サイメシアの東海林に夏井敗北かと思われましたが、方向感覚バトルで一矢報いることができました。

二人とも、それぞれがメイメイを案じていたのも良かったです。空田イベなので空メイがベースですが、夏メイ、広メイのフラグも見えました。

気になったところ

ストーリーが面白かったので全く問題ありませんが、細かい部分で気になったことはあります。例えば、

  • 計画性無しに街中で刃物を振り回す人がいたらすぐに捕まるはず

  • トツベのビルを徒歩で総当たりで探すのか……(ナイトさんなら一瞬で見つけられそう)

  • 東海林さんが夏井さんと会ったあと、凶器持った男がうろついてるのに直くんを一人にして良かったのか?

  • 新宿署総出で繰井を探しているとき、秋元さんは電話番?

  • ぐちゃぐちゃの一万円札がいつのまにか札束になっている

などですね。同じく引っかかりを感じた方がいるのではないでしょうか。

特に1点目、私情で申し訳ないのですが、警察の能力が低く描かれるのは苦手です……。私、殺されそうになった経験がありまして、110番して誇張ではなく秒で駆けつけてくれた警察官に助けてもらったんです。

日本の警察ってとても優秀なんですよ。土地にもよるかもしれませんが、110番したら1分か2分で来てくれます。たまにJKのスカートの中を盗撮する警官が現れて組織に泥を塗りますけど、そんなのは一部で、ほとんどの警察官は本当に素晴らしい人たちです。

個人的な経験から、歌舞輝町のような都会で刃物を振り回し、見境なく通行人を脅し付ける奴が現れたら、すぐに居場所がバレて包囲されるはず……。ちなみにミステリー小説では、警察以外のキャラクターに事件を解決させるため、警察の能力を低く設定するという手法がありますが、あまり多用すると興ざめするので現代では禁じ手とする傾向があります。

ただし、その他の気になる点も含めて全部ねじ伏せる勢いで、読者を圧倒するエンターテインメントを展開したのは凄いと思います。16話という短さで完結させるために都合を優先したのも理解しています。致命的な箇所だとは思わないし、お話の面白さを損なうものではありません。個人的にちょっと気になっただけです。

さいごに

他にも語りたいことは山ほどあるんですよ、例えば

  • 空田さんのセリフで「匿名」に「とくめー」のルビ、「言われたわ」ではなく「ゆわれたわ」

  • メイメイの「心の中は、外側からはよく見えない」

  • 出血量ゆえ東海林さんのトラウマを抉らないか心配。直くんにも刺激が強すぎたのではないか

  • 夏井さん、直くんに警戒されすぎ。秋元さんだったら違う展開になっただろうな……

  • トツベさん、一時的に借金を返せても一件落着ではなく、これからも自転車操業なのでは

  • 氏屋、繰井、トツベの関係性

など、色々。

あと、これはどこに書いたらいいのか分からないのでここに書いとくんですけど、ハローについて

氏屋「"あの"探偵事務所か……?」
山神「そう、"あの"さ」

って気になったよね~。

細かいところを詰めるとあれれな箇所が出てくるので、深読みしすぎるのも禁物だと思います。よくある「運営そこまで考えてなかった現象」ですね。今回のイベストも、運営が天然で「なんでオタク阿鼻叫喚してるの???」とか思ってる可能性がある。無意識にこれが作れたら天才極まりないですが。抱いて。

ナイト信条、秋元信条、夏井信条、空田信条と回を重ねるごとに運営側のキャラクター造形も定まってきた感じがして、勝手かつ無根拠な予想ですが、新たな個別ストが来るとしたら、空田さんか夏井さんではないかと思いました。

それでは皆さんご唱和ください。

結局、虎のタトゥーには何の意味があったんですか???


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