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シオコレ3周年企画!支援先インタビュー(音遊びの会編)

『シオコレ3周年企画!支援先インタビュー』

「音遊びの会」代表、塩屋在住の飯山ゆいさんに2024/4/17にインタビューを行いました。

「音遊びの会」
知的な障害のある人、音楽家など様々な約50名からなる音楽団体。2005年より即興演奏を軸としたワークショップを行い、各地で公演多数。活動は、障害のあるメンバーにとって貴重な社会参加の場であり、多様な背景をもつ人が共に生きるための模索と実験の場です。



「障害があるけれど」という注釈が付いたり、天才肌の人が注目されたりすることが多いけど、音遊びの会はそうじゃなくても成立するものとして、取り上げてもらう意味がある。

シオコレ:うみはたフェス(3/31に淡路島で開催された野外イベントで音遊びの会も出演した)どうでした?

飯山さん:音遊びの会を目的に来た人じゃない人に観てもらえたのはやっぱり大きい。
コロナ禍前に障害のある人の文化芸術を支援する法案ができて、全国のいろんなイベントとか、ホールでのステージが増えたのね。それで出演の機会が増えたり、全国で音遊びの会の映画の上映ができて、合わせてトークやライブが組まれたりした。そういう催しにはもちろんその枠組みで見に来る人が多い。イベントそのものが、例えば障害のある人の舞台芸術を作る立場の人のための講習会だったり。機会をもらうという意味ではもちろんありがたいんやけど。

シオコレ:なるほど。そら参考にはなるやろけどねぇ。

飯山さん:障害のある人の舞台というと、「障害があるけれど」という注釈が付いたり、天才肌の人が注目されたりすることが多いけど、音遊びの会はそうじゃなくても成立するものとして、取り上げてもらう意味がある。でも、そんな枠組みの中でなくて、ただ音楽が好きとか、ただエンターテイメントとして見てもらうことも大事やなと。それと、前情報がない人にどうやって受け取られるかというのは、私にとって興味があるところ。野外フェスなんかは特にいろんな人がいる場所なので。うみはたフェスでも、いちプログラムとして、これはなんやねん!って感じで見ている人もいて面白かった。

シオコレ:そういう機会はやっぱり少ない?

飯山さん:そうね、自主企画のイベントはほとんどが音遊びの会を知って来てくれるお客さんやし。

シオコレ:積極的にこういうイベントには出ていきたいと。実際にお客さんからの反応はわかったりする?

飯山さん:なになにって寄ってくる人もいる。で、見てるうちに飽きてどっか行ったりもする(笑)。

シオコレ:玄人ウケするバンドやからね(笑)。

飯山さん:特に野外は空間が切り取られてないし、昼間は照明もないから見る人も注意散漫になるでしょ。ごっちゃなところにごっちゃな人たちが乗っている、お客さんが何を見たらいいのかわからない状態のステージで、ちゃんと見せていくのはすごく難しい。じゃあ、わかりやすいザ・マサハルズとかシュークリームス(音遊びの会内のユニット)とかだけをやればいいのかといったら、メンバーにはそうじゃない人もおるわけで、だからある程度人が離れていくのを覚悟しながらやるしかない(笑)。

シオコレ:集中して見られる静かな場でないとわかりにくい演奏がむしろ多いかも。

飯山さん:初めて観る人にとって、例えばメンバーがステージに立っているだけの状態が「演奏」なのかどうかを判断するのは難しい。あの人は出演者なのかスタッフなのか、何なのか(笑)

シオコレ:そういうことが起こっている状況は面白いですけどね。 


歳をとるにつれ、みんな人生のいろんなステージがあって、それでも音遊びの会には通い続けている

シオコレ:シオコレ3周年で、音遊びの会もこの間に何がかわったかと言う話なんですけど、やっぱり音遊びの会のドキュメンタリー映画ができたことは大きかったですか。

飯山さん:コロナ禍で、ワークショップやステージでの活動自体が難しかったときに、撮影も含めて映画があって2022年に公開されて、その後も映画関係の出演オファーがあったから、タイミングはよかったです。

シオコレ:全国あちこちに行って。

飯山さん:でも予算なんかの都合上、全員で動くというのはなくて少人数。だいたい2~3人で、多くて8人ぐらい。

シオコレ:じゃあそれよりは、日々淡々とワークショップを続けていくことが、やっぱりみんなの意識としては重要やったと。

飯山さん:いつも言うんやけど、音遊びの会の何を楽しんでるか、目的としているかは、メンバーそれぞれで違う。遠征に全く行かずワークショップにだけ来る人もいる。ご家族の関係で近場しか無理なメンバーもいるし、逆に遠征にしか来ない人もいる笑

シオコレ:なるほど外に出る機会にもなっていると。ということは遠征には行ける人で行っている?

飯山さん:全くそのとおりで、名乗りを上げた人で行ってる。

シオコレ:メンバーが似てるから選ばれてるんかなと思ってたけど、違ったんやね。

飯山さん:そうそう、選んで無い。実際、立候補で集まった面子によっては舞台が成り立つか際どいときもあるけど、それはそれとして(笑)。予算的にもう1人いけるというときに編成として管楽器を足そうかというような調整はあるけど、それくらいかな。

シオコレ:メンバーの増減はここ3年でどうですか。

飯山さん:それが4日前に新しいメンバーが

シオコレ:おおー!4日前って!

飯山さん:支援学校を卒業して社会人になったばかりの若手です。本人と明確な会話のコミュニケーションはないのだけど、ビックバンドで演奏する様子なんか、もうすっかり馴染んでメンバーの一員という感じ。よく考えたら障害のあるメンバーでは7年ぶりの新メンバー。

シオコレ:会から入りますかって声かけるんですか。

飯山さん:最初に来られた時に、学校を卒業してからの余暇活動の場所を探していて、入れる可能性はあるかとお母さんから聞かれました。互いの相性もあるし、とりあえず一般参加を続けてくださいということで、1年一緒にやってきて、お互いに良いなぁとなったので。

シオコレ:塩屋のご夫婦でダウン症のお子さんがいる方が、そのうち音遊びにって思ってるんだけどって、まだちっちゃいけど笑。そういうふうに居場所としての可能性をみている人たちもけっこう数いてはるんちゃうかなって。

飯山さん:そやね、実際に入らなくてもこんな場所もあるんやとか、例えば作ろうと思えば作れるんやとかね。

シオコレ:続けていくことやね

飯山さん:来年20周年やから

シオコレ:すごいねぇ、20周年は何か計画がある?

飯山さん:そうやね、やっぱり自主公演をちゃんとやりたい。人数が多いから、それぞれのやりたいことを集めるだけでも時間がかかる。時間がかかることを小手先で、ちゃちゃっとやっちゃったらそれなりの事しかできへんから。去年のアキビンオオケストラとの共演も面白かったけど、互いによく知った関係性に頼って、ちょっと急いでやってしまったことに不足を感じてて。メンバーのやりたいことは、ワークショップを丁寧にやることの中から生まれることでもあるし、読み言葉、書き言葉、会話によるコミュニケーションが難しい、となると、長い時間その場を一緒に過ごす中で互いに感じとっていくしかない。それを積み重ねた上での何かであって。例えば、しおりちゃんという面白い歌を歌う人がいるけれど、彼女はそれを10何年前からやっていて、本人も他のメンバーも、もうそれしかしない人だと思っているところがある。でも、ここ半年くらい彼女が久しぶりにワークショップに参加するようになって、見ていると、やっぱり歌だけじゃない彼女もいたわけ。それがまた舞台に結びつくこともあるでしょう。そうやって長いスパンでやっていく。しおりちゃんは歌だけで十分に面白い。でも、ちょっと違う彼女も面白いかもしれない、それは彼女自身にとってもまた違った楽しみかもしれない。歳を取りながら常に人は変わり続けるし、知らない彼女を探したり期待し続けたいと思って。だから色んな人が出入りして、色んな見方でお互いやりとりすることが大事。それが何か新たな契機になる、そこにしか可能性は無いかなと。
もちろん、ずっと同じことをやり続けるがゆえの境地もまたあるよね。障害がある人の美術は、それが本当に目に見えてわかりやすいけど、多分同じことが音楽でも起こり得る。

シオコレ:なるほどね。

飯山さん:でも、みんな歳をとっていくやん。普段の生活でも他の新しい関わりだとか経験が増えていく中で、全く同じって事はたぶん無い。だから常にポテンシャルがある状態かなと。昔のように元気にぴょんぴょん飛びまわる事はなくなっていってるけど笑

シオコレ:みんな一緒に歳を重ねて。

飯山さん:あるメンバーのお母さんからもし本人が望めば結婚もさせてあげたいと聞いたことがあって。一時期、本人の一人暮らしを考えていたご家族もあった。グループホームという形の自立をしたメンバーもいる。歳をとるにつれ、みんな人生のいろんなステージがあって、それでも音遊びの会には通い続けている、これはどういうことなんやろうな、、(笑)。私自身も関わり始めた時は学生やったけど、今は我が子をつれて参加している。子どもがついて来なくなっても行くのかなとか。

シオコレ:大事な人たちがいて、しかもそこでできることが各々にあるわけやから、そら行くでしょう。音遊びもひとつのコミュニティやから。

飯山さん:そやね。

シオコレ:メンバーもだけど親の年齢も上がる、親のかかわり方の変化ってありますか。

飯山さん:コロナ禍に、部屋の人数制限のために付き添いの親に外に出てもらうことになったんだけど、それが結果的によかった人、表現が自由になった人がけっこういる。メンバーのほとんどはもう成人していて、普段グループホームで生活しているようなメンバーでも、母親が近くにいると、前に出るつど「これでいい?」って確認する。お母さんが口やかましいわけではないのだけど、長年の関係でそうなる。それは舞台に立っていても同じで。母親の姿が見えなくなった瞬間は不安そうでも、演奏が始まるとすごく楽しそうで自由やねん。そんなメンバーが他にもいて、本人にとっても活動としてもいいんちゃうんかと思うし、それを親もわかってる。専門にケアする人が付いていなくても、この場所やったら大丈夫と思えている。本当に何かあったときにはすぐに駆けつけられるところにはいてはるしね。
それとは別に、これから先、親が一緒に来られなくなった時に、例えばガイドヘルパーとか親に代わる人が一緒でないと参加できないのか、という問題もあって。

シオコレ:うーん、難しい。個人にもよりすぎるだろうし。

飯山さん:障害のないメンバーが往復の道中の付き添いも兼ねて、親なしで活動に参加できることもある。障害のないメンバーで、会に参加してから福祉の現場で働くようになった人もいる。もともと障害のある人に馴染みやすいキャラクターの人が会に参加しているとも言えるし、参加しているうちに福祉が身近になった人もいると思う。とにかく続けながらみんなの変化にあわせて考えていくしかないね。

シオコレ:3年たって音遊びの会メンバーがもつチャリティショップへの印象はかわったりしましたか。

飯山さん:シオコレって耳にはしているし、存在は知っているだろうけれど、実際に会ってその場にいてこそわかるメンバーもいるので、もっと店に来させてもらって交流があったらいいなと思う。
シオコレに2年支援を続けてもらった時点で今後の見通しが立って、障害があるメンバーから集めていたワークショップの参加費を無しにした。それから1年経って、今は障害のある/なしで差がある年会費を、同額にできないかということを考え始めた。表現をする者同士イコールであるという考え方をお金にも反映できるのが本当は望ましい。クリアすべき課題はいろいろあるけど、検討できるということだけでも、やっぱり定期的な支援には凄く支えられているなと思ってます。それで…どんなかたちがいいのかな、交流に。

シオコレ:私たちももうちょっとワークショップに行けたらいいよね。

飯山さん:メンバーの理解という意味ではやっぱりこの場所で、お洋服でというのがいい。イベントでお洋服預かって、私たちが代わりに販売させてもらってるのも1つやね。
お店に立って、お客さんに音遊びの会のチラシ渡すとかもいいかも。メンバーたちは普段、単純作業を仕事にしている人もいるから、タグにシール貼るとかもできたり、あとはお洋服が好きな人もいるから販売員的なこと。それから毎月の寄付金の受け取りを順番にまわすとかもアリかもしれない。

シオコレ:交流していくこと、考えましょう。今年の課題ですね。

自分がしたいことを我慢しないというコンセプトの店やから、これから、さらにどこまで働く環境をよくしながら、楽しく続けられるかやね。

シオコレ:他にシオコレに何かあります?

飯山さん:毎月の収支を公開されているので、会の運営費のことを考えている身としては、どうしてもシオコレスタッフの賃金が気になってしまう。生活しながら、すべきこととかやりたいことをどこまでやれるかということと、お金は切り離せないから、そこを…何らかの…方法で…工夫して…改善していったら…いいなあって

シオコレ:めっちゃ言いにくそうやん(笑)

飯山さん:(笑)

シオコレ:そうやね。でも、一気にどないかなるもんでもないし、また一気にどないかなったもんは一気になくなる可能性もあるから、やっぱりちょっとずつなんやろうなと思う。もう嫌ー!ってならんかぎりは続けられるかと(笑)。他で働いたら、今よりお金はたくさんもらえるかもしれないけど。

飯山さん:お金以外に得てるものはすごくあるものね。

シオコレ:やりがいはめっちゃある。とはいえ、全員有償ボランティアというかたちで、よく3年もやってるとも思うよ。みんなシオコレだけで生活しているわけではないし、そもそも自分がしたいことを我慢しないというコンセプトの店やから、バランスよくやってはいるけど。これから、さらにどこまで働く環境をよくしながら、つまり賃金を上げながら、楽しく続けられるかやね。

飯山さん:すごいなあ、3年。

シオコレ:シオコレはお商売のことも何もわかってなさすぎて、怖いもの知らずやったからできたところはあったよね(笑)他には何か言い残したことはないですか。

飯山さん:そうね、去年は神戸市の地域課題に取り組むNPO等の事業として補助を受けた関係で、市の職員やほかの地域活動をする人たちと交流をすることができて。もともと音遊びの会の存在は音遊びだけのものではなくて、世の中にこんなあり方もあると提示するという意味で社会的だと思っているけど、実際の活動がよりそれに伴ったものになっていた方がいいという意識が強まった。オープンな場所で、参加費も安価にした公開ワークショップをしていきたいと思ってます。

シオコレ:めっちゃいい。これはまたやってみて内外の反応がどうか、やね。音遊びの会も変化していく。
よいお話しをたくさんきかせていただきました。ありがとうございました。またよろしくお願いします!


(この記事は2024年5月31日より数回に分けてシオヤコレクションのInstagramに投稿した記事を編集・転載しています)


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