「トライアングル」

スタジオRUI
「香菜、もうちょい右向いて、いいよ笑顔頂戴」
カメラマンの要望に応える
真っ白なドレスを着たウェービーロングヘアの美少女
透き通るように色白でまつ毛の長い大きな瞳が愛くるしい売れっ子モデルの香菜
「はーいOK、お疲れ様でした」CM撮影とポスター撮りが終了。
「ちゃんと出来た?瑠偉」
「うん、出来たよ、キレイだった」「ホント?良かった」"香菜ちゃんドリンクどうぞ"スタッフからドリンクを手渡される。
「ありがとうございます。すみません」
「香菜めちゃくちゃきれいだったよ」ヘアメイクの
志音が髪を撫でながら褒めてくれる。「ありがとうございます。ドレス脱いでいいかな?」「ん、もういいよ、脱がせてやろうか?」
「うん、着替える」
香菜は志音と控室に行く。
長い髪を掻き分けて志音がドレスのファスナーを下ろしてドレスを脱がせると下着姿の香菜をホールドする
香菜の身体に手を滑らせて撫でると感じて小さく声をあげる。
「可愛い香菜、愛してるよ」志音は上を向かせてKissを落とした。甘い濃厚なKissが繰り返されてリップ音が部屋に響く。
「Kissでこんなに感じるなんて、お前ホントに敏感だね」「あんっ志音…」
耳を舐められて身体をピクリとさせる香菜。
崩れそうになる香菜を抱きとめる志音。ソファーに座らせて着替えの洋服を持ってきて着させる。
「志音欲しい」上目遣いで見上げる香菜を抱き寄せる
「わかった、今夜は香菜を食べようかな。眠らせないからね」香菜は嬉しそうに微笑んで志音に甘える。
そこへドアをノックして瑠偉が入ってくる。
「お疲れ様飯行こうよ」
瑠偉が食事の誘いにやってきた。香菜をハグ。
「香菜は何食べたい?」
「焼肉〜」「志音は?」
「オレも焼肉がいいな」
「焼肉食べても大丈夫?」
「ふふっ大丈夫だよ、スタミナ付けないと朝まで頑張れないだろ?」香菜は恥ずかしそうに志音を見つめた。「昨日だって一日中ベッドにいたじゃん?」
「うふふ、だって…」
顔を真っ赤にして俯く香菜
「まぁ離さなかったのはオレだけどね、お前最高だったし」「香菜悪いけどカフェオレもらってきてくれるかな?」「はい、志音は?」「オレも頼むよ」
香菜は部屋を出て行った。
瑠偉は志音に言った。
「志音、話したいことがあるんだ、急がないから時間のある時に」「いいよ。香菜のことか?」「香菜にも関係ある」「わかった。お前さぁなんかあったのか?」志音に聞かれて瑠偉は神妙な顔を見せた。
「ん、また話すから」
「了解。考え込むな?」
その後3人は焼肉を食べに出かけた。
それからしばらくして次の撮影のための打ち合わせをしたあとに瑠偉は志音と話をした。
「実はねオレ養子だったんだよ」「養子?お前が?」
志音は驚いて聞き返した。
「オレの父親と今の父が親友で大学までずっと一緒だったらしくて、オレが2歳の時に家族で出かけていて事故に巻き込まれて両親は亡くなりオレだけが助かったらしいんだ。その後祖父母に引き取られたんだけど病気がちの祖父が亡くなり祖母も身体が弱かったから今の父がもし何かあった時はオレを頼むと言われてたらしくて祖母が亡くなってから俺は今の父に4歳の時に引き取られたらしい。その頃のはっきりした記憶がなかったけど、オレが来てから香菜が生まれたんだ」
「香菜は知ってるのか?」
「知らないと思う」「香菜とは血の繋がった兄妹じゃないってことだよな?」
「ん、オレがその事を父から聞かされたのは二十歳の成人式の時だった。おかしいと思ったんだよな」「何が?」瑠偉は思い詰めたように考えて口を開いた。「香菜が好きなんだ、オレずっと香菜だけを見てきた」「瑠偉…」
「香菜がお前と付き合うようになった時オレアメリカへ逃げた」「あの時か?」
瑠偉の言葉に志音は絶句した。「ん、香菜を見てるのが辛かったんだよ。もちろんお前はオレの親友だし香菜を託せるのはお前しかいないと思ってる。だけど成長して恋してキレイになってゆく香菜を見ていたら辛くなるんだよ。すまない志音」「瑠偉…オレはお前の気持ちはわかってたよ」
「えっ?」「実はお前がアメリカへ行ってから叔父さんから打ち明けられたんだ、お前の事。お前が多分香菜を好きでそのために離れたんだと言うことを叔父さんたちはわかってたんだよ。でもその時オレと香菜は付き合っていたし香菜と別れる気もなかった。」
「そうか父さんたちにはわかっていたんだな。」
「あのなぁお前は分かりすぎるんだよ?香菜しか見てない。真っ直ぐに香菜だけを見てる。もしかしたら香菜だって勘づいてるかもしれないぞ?」「えぇっそれは困るよ、どんな顔していいか分からない」「ふふっ可愛いねお前」「何かさぁ、頭ではわかってんだけどね、香菜にはお前がいるしオレの入る余地ないし」
「そんなに香菜好きか?」
「好きだよ、好きが止まらない。妹として育ってきたのに、血が繋がらないとわかったときからオレの中で香菜への愛しさが兄としてのそれでなくて、一人の女の子として見るようになったんだ」「ならどうしてオレが香菜と付き合いたいと言ったとき許した?」
「お前はオレの親友だし香菜を好きな想いはわかってたからな。オレと同じなんだってわかってたから反対は出来なかった」「そうか、ゴメンな、お前の気持ち知っていたらな」「イヤ、いいんだよ、香菜はお前といて幸せそうだし、オレは見てるだけでいい、それだけでいいんだ。香菜が幸せで笑ってさえいてくれたら…香菜の幸せを傍で見守っていたいと思ってる」「瑠偉…香菜がもしお前と血が繋がらないと知ったらどうする?告白するか?」
「分からない、それが原因で気まずくなるのイヤじゃん?」「そうだな、でも…香菜の初恋の相手誰か知ってるか?」「イヤ知らない」「だろうな、鈍感ヤロウ、お前だよ」「オレ?」
「香菜が言ってたよ、香菜は瑠偉が初恋なの、お兄ちゃんカッコイイし優しいし大好きなんだって」「エーそれめちゃ嬉しい」「香菜がお前に甘える時の態度や仕草でわかんねぇか?オレの時とは違う。ハグの仕方だって、話すときだって恥ずかしそうにはにかんでさ、可愛いったらないよ、オレは逆にお前が羨ましかった。叔父さんから真実を聞かされたとき、いつか香菜がオレから離れてしまうんじゃないかと、そんな気がしてならなかったよ」
「志音…でも確かに香菜の態度はいつからか変わってきたかなぁ?それはお前がいるからだと思ってたけど」「オレはもしかしたら香菜が気づいてるんじゃないかと思うけどな」「でも父さんは香菜には話してないって言ってたけど…」
「もし香菜が気付いていたらお前の気持ちを伝えてみたらどうだ?好きって胸に秘めたままは辛いだろ?スッキリさせたら?」「オレが香菜を好きだったって言ってもいいのか?」
「まぁ他の奴なら絶対許さないけどお前なら仕方ないわ。1日香菜を貸してやるからデートしてこいよ。告白してからな」
「うん、分かった」
瑠偉の表情がパーッと明るくなった。
あの頃、瑠偉はアメリカで写真の勉強をして2年後に日本へ帰国した。定期でファッション雑誌の仕事があったりCM撮影があったり結構忙しく仕事をこなしていたが、あるCMで企業側がモデルに納得しなくて香菜の写真を見せると会わせて欲しいと言われて香菜を説得し、清涼飲料水のCMでデビューとなった。香菜は瑠偉専属で瑠偉しか香菜を撮らない。CMがきっかけで女性誌のモデルに決まったり、そのチャーミーボイスが気に入られアニメ映画の声優もしていた。最初にCMが決まった時から志音は香菜のヘアメイクを担当していた。マネジャーは瑠偉がカメラマン兼任で行なった。単純に他の男には香菜を任せられないという理由だった。告げられない想いが瑠偉の中で膨らみ夜毎泣くこともあった。志音から告白を許されたものの兄妹ではないという事実を告げる勇気はまだなかった。

続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?