「幸せを呼ぶ雨」

どしゃ降りの雨の中を
ただ呆然と歩いていた。
"好きな人が出来たんだ、店の売上にも貢献してくれてるし、だから別れて欲しい。なるべく早めに出ていってほしい"
彼にそう言われて私は荷物をまとめて取り敢えず彼のマンションを出た。
「こんなはずじゃなかった。彼には出来ることはしてきた。欲しいものがあると言えば買ったし、お金がいるといえば渡してた。愛してるよって口先だけの言葉に惑わされて、私は自分を見失っていた。好きな子が出来たから別れてとあっさり捨てられた。馬鹿みたい。今まで何してたんだろう」冷たい雨の中で涙がとめどなく溢れて意識が遠くなってゆく。
遠くで誰かが呼んでるのに
瞼が開かない…

"眩しい…"目を覚ますとカーテンを通して日差しが入っていた。
"ここは何処?"
一人で眠るには広すぎる
ベッドに寝かされていた。
「目が覚めた?」
柔らかなウェーブのかかったショートヘアの男性が声をかけてきた。
かなりのイケメン、スラリとした長身でまるでモデルさんみたい。「あの、私どうしてここへ?あのあなたは?」
「まず君の名前は?」「速水梨沙です」「青山でね、車で通りかかったときに君が倒れてるのを見つけて車に乗せて家へ連れてきた。失礼だと思ったけどびしょ濡れだったし服を脱がせて僕のスウェット着せたんだ。ちょっとおっきいけど」「えーそんなご迷惑を、申し訳ありませんでした」「熱はないみたいだけど、あとでシャワーするといいよ。服は洗ってもう乾いてるからね」「何から何までお世話かけました。あの」「あ~僕は香坂幸(ゆき)。カメラマンをしてる」「あの着替えさせてくれたって事は」「んっ裸にして身体拭いて着せたんだ。風邪ひくといけないからやむを得ずね、ごめんね」「あ~恥ずかしい」「だってびしょ濡れだったんだよ?ホントならお風呂に入れてあげたかったけど」「えー」顔から火が出るほど赤くなってるのがわかった。
「ふふっ、とにかくお風呂入っておいで服置いてあるから、それから朝ご飯食べよう?」「はいありがとうございます」
バスルームを教えてもらいシャワーを浴びて髪を乾かすとリビングへ行った。
「ありがとうございました。気持ちよかった」
「それは良かった、どうぞ座って」食卓には美味しそうな朝ご飯が並んでいた。
ワンプレートにホットサンド、ヨーグルト、イチゴ、マカロニサラダが乗っていて、傍にスープとアイスティーがあった。
「美味しそう」「アイスティーでよかった?」「はい、ありがとうございます」「食べよう」
手を合わせて頂きますをして食べ始めた。
「美味しい、こんな時でもちゃんと食べれるんだ…」
「よかったら話し聞くよ?うなされてたけど」「1年半付き合ってた彼がいたんです。彼には欲しいものは買ってあげたしお金も上げてたし、出来ることは何でもしました。でも好きな人が出来たから別れてくれって言われて愛してるなんて言葉に惑わされて馬鹿みたい」「彼は何してる人だったの?」「ホストです」「あーそれはダメだね。女性を金づるとしか思ってない。店には行ってたの?」「お店はあまり行ってなかった、出会ったのがお店じゃなかったから」「そうか、辛かったね、それで雨の中を歩いてたの?」「彼のマンション出たら雨が降り出して、そのまま歩いていたんです」
「なるほどね彼にはいくらお金渡してたの?」「200万です」「店は何処?」「新宿のルイーズ」「ルイーズ?マジ?僕に任せてくれる?取り返してあげるから」「えっそんなご迷惑かけられません」「いいよ、縁あって知り合ったんだから、それにルイーズのオーナーは知り合いだから大丈夫だよ。任せてくれる?」「はい、じゃよろしくお願いします」「任せて!」
朝食が終わって片付けをしてから彼は言った。
「送ってくよ?家は何処?」
「あの、実家出て彼のマンションにいたんです」
「じゃ荷物は彼のとこ?」「はい」「わかった、持ち出さないといけない大切なものはある?」「いえ洋服とかお化粧品とかだけです。通帳やカードはいつも持ち歩いてるので」「そう、じゃそれは彼と縁が切れたってことで放っとけばいいよ。こっち来て」
彼は隣の部屋へ案内してくれた。「この部屋使って、今日からここで暮らすといいよ。僕は仕事で遅いときもあるし気にしなくていいからね」「でもそんなご迷惑でしょ?」「迷惑なら言わないよ、どうせ一人だし君が嫌じゃなかったらね」
「あのどうしてそこまで?」「君は妹に似てるんだ、1年前病気で亡くなったんだけどね。」「そうなんですか」「ここで暮らす?」「はい、よろしくお願いします」「そうとなったら服とか着替えとか買物行こうか?ちょうど今日は休みなんだ。君は?」「私は昨日仕事辞めたんです、何もかも嫌になってしまって。彼の部屋で荷物の整理して会社には電話で辞めるって言って、その後部屋を出て歩いてた」「なんの仕事?」「会社で受付してました」「なるほど、じゃ辞めても差し支えはないね。じゃ仕事紹介するよ」「えっいいんですか?」「僕カメラマンしてるの、スケジュール管理してくれるマネージャー欲しかったんだよね、やってみる?」「マネージャー出来ますか?私」「出来るよ。ホントはさ、モデルやって欲しいくらいだよ。一度撮らせてくれる?」「はい、喜んで」
そんなわけで話はトントン拍子に進み私は彼のマネージャーとして仕事をすることになった。
彼に連れられてあちこち買物に行き美容室に連れて行かれて髪をカットした。長い髪をバッサリと切ってイメージチェンジした。
「うん、めちゃくちゃきれいだよ。ロングもいいけどショート似合うよ」「ショート小さい頃以来です」「リサ美人だね」彼に言われてテレてしまう。
「出かけたついでにお昼ご飯食べよう、何がいい?」
「ラーメン食べたいです」
「いいよ、行こう」
彼がよく行くラーメン屋さんに行き野菜たっぷりの塩ラーメンと餃子を食べた。彼は優しくてふんわりと包んでくれる人間的な大きさのある人だった。色白で端正な顔立ちで笑顔が素敵な人だ。「買い忘れたものはない?」「ん…あっお化粧品ない」「メイク一式?スタジオ行ったらあるよ。予備で揃えてあるから、スタジオ行く?」「はい」
彼に連れられてスタジオに行く。「わぁ素敵」
控室に行き棚からメイク道具一式を出してくれる。
「これ基礎化粧品ね、それからこっちがメイク用品欲しいやつ選んでね、ブラシセットはこれ」可愛いメイクボックスに化粧品を詰めていく。「ユキさんこんなにいいの?」「いいよ君なら」「洋服から何からいろいろ買っていただいてありがとうございます。」
「就職祝いね」
彼の笑顔が心の中に広がって
ドキッとする。その後携帯ショップに行き新しいiPhoneを買ってもらった。
「必要な人には転送出来た?」「はい」「じゃOKだね、過去のリサにバイバイしよう」この日から私は生まれ変わった。
彼がすべてを変えてくれた。1週間後「ルイーズ」のオーナーと彼が話をして貸したお金と別にいろいろ買わされたもののお金と合わせて300万円が戻ってきた。
「ユキさんありがとうございました。」「よかったね、もう大丈夫だね?」「はい大丈夫です」「リサここに座って」ソファーの彼の隣に座る。「リサ、俺ね君と初めて会った時雨に濡れて倒れてる君を見たとき助けなきゃって思った。ベッドに寝かせてる時もうなされて、気になって朝まで傍にいたんだ。何故か気になって」「ホントに?ごめんなさい」「もう大丈夫?彼を忘れられる?」「もう吹っ切れました。幸さんのおかげです」「ホントに?良かった。俺君が好きだよ。君を守りたい」そう言って彼は私を抱き寄せ唇を塞がれた。何度も繰り返される甘く深いKissに感じて蕩けそうになる。「俺のものにしたい。いい?」私は彼を見つめて頷いた。すると彼は私を抱き上げて寝室のドアを開いた。ベッドに寝かされてKissをされながら洋服を脱がされて裸にされる。彼も裸になり身体を重ねる。優しい手のぬくもり伝わる身体を滑ってゆく唇と舌の感触が私の身体を熱くさせる。敏感すぎる身体を愛撫され、やがて彼が私の中に入ってきた。突き抜けるような快感が身体を駆け抜ける。"こんなの初めて"
押し寄せる絶頂感に意識が遠くなる。上書きと称した営みが何度となく繰り返されて私は彼のものになった
「今日からはここで寝るんだよ、俺の傍でね、子猫ちゃん」「ふふっ、ニャオー」「可愛い、堪んないな、ずっと抱きしめていたい」「抱きしめていて?いつもあなたを感じたい」
「ふぅ可愛い。そろそろユキって呼んでくれないかな?」「うふっユキ、大好き」「ふふっ。嬉しい」そしてまた二人は一つになった。彼のマネージャーとしての仕事はスケジュール管理からモデル事務所ヘの連絡。広告代理店との打ち合わせ等色々あるけれど一番大事なのは彼が私を欲しがるときにはちゃんと相手をすること。「リサ膝の上来て抱かせて」「はい」ソファーに座る彼の膝に跨がって座り抱き合ってKiss「あーこの時間がホッとする」「お疲れ様。今日は忙しかったね」彼はブラウスのボタンを外しブラをずらしてお山を露わにすると突起を口に含んで弄ぶ。
「ユキ、あんっ…ダメっ感じちゃうから…」「シーッ黙ってこれは俺のだからね」「んんっ…ユキ」「ホラこっちも」彼はお山(胸)が大好きで弄っては喜ぶ。
耳にKissをしながら囁く声に身体が熱くなる。
スカートの中に入った手が下着の中へ伸びて指を入れてかき混ぜられると身体がピクンと波打ち反応する。中は蜜で溢れていた。
「ホラ凄いよ?」「ユキ…お願い」「薬飲んだ?」「うん」
彼はパンツと下着を脱いで梨沙の脚を開いて中へ入ってくる。
「はぁっ…あんっ…ユキ…」
腰をグラインドさせて奥へ突き上げ動きが激しくなると梨沙の甘い喘ぎ声が彼を刺激する。「んんっユキ…ユキ…イッちゃう…ユキ…」
梨沙がイクと同時に彼も果てた。身体が繋がったまま梨沙をホールドして抱擁する。「リサ…お前の中めちゃくちゃ気持ちいい」
「ユキ…ねぇどうしよう、気持ちいい…ユキ」「リサ…お前性欲強いね?堪んないな。帰ろうか?」「お家帰るの?」「んっお前を抱き潰したい」「んっ帰ろう」
そんな甘い蜜な日々を過ごしていたある日の事。
「リサ話があるんだけどいい?」「はい、なぁに?」
「実はねあるフラワーショップの仕事でモデルを探していたんだけど、中々相手側が納得出来るモデルが居なくて、リサのポートレート見せたら相手側が気に入ってさ、宣伝用のポスターのモデルをリサにしてほしいって言うんだよ。この子はモデルじゃないからと言ったんだけど、どうしてもリサにやってほしいって。どう?」「リサに出来る?」「出来るよ、リサの笑顔はきれいだからさ花屋にはもって来いなんだよね。相手側と話してみてくれるかな?」「わかった、幸の力になれるならやってみる」「ホント?ありがとう。助かるよ。ブライダルフェアのポスターだからウェディングドレスなんだよ」「ワァーホント?楽しみ」「きっときれいだね」
それからフラワーショップの方と面談して正式に梨沙がモデルを引き受ける事になった。衣装選びからメイクに至るまですべて幸が監修してスタジオにて撮影された。あまりの美しさに見とれてシャッター押すのを忘れてしまった幸だった。この広告が公開されてから梨沙の人気が出てきてCM等の依頼もあった。
ある日撮影が終わって幸とスタジオを出たところで一人の男性が梨沙の前に現れた。梨沙は顔を見て後ずさりした。
「リサ久しぶりだな。
それは元カレの涼だった。
「お前広告やCM出て凄いじゃん?きれいになったし。たまには飯でも食わないか?」涼に言われて梨沙は幸の後ろに隠れた。
「梨沙に近づくな、そう言われなかったか?」「アンタ何者?俺はこいつの元カレなんだよ」「知ってる。梨沙に金をせびったりしてたダサい奴だよな」「テメエ」と涼が殴りかかろうとしたが、あっさりとかわされてパンチをくらった。
「これ以上近づいたら警察に言うからな、お前のことは知り合いの刑事に話してあるんだ」「何だって」「言っとくが梨沙は俺のフィアンセだから近づいたらたたじゃおかないからな」
涼はチッと舌打ちして去っていった。「大丈夫か?」「大丈夫、ありがとう。びっくりしちゃった。ねぇリサはユキのフィアンセなの?」「そうだよ。わかってんのかと思ってた」
「わかんないよ?言ってくれなきゃ」「じゃちゃんとプロポーズするからね、行こう。」そう言ってジュエリーショップに連れて行かれて婚約指輪を買ってもらった。それからフラワーショップで薔薇の花束を買ってもらいホテルのティールームへ行った。
薔薇の花束を梨沙に渡し左手を握りしめる。
「リサ俺と結婚してください。必ず幸せにするし、家事も子育てもちゃんと協力して君だけに負担はかけない。約束する。俺の妻になってくれる?」梨沙は幸の目を真っ直ぐ見つめて
「はい、不束者ですがよろしくお願いします」と言った。幸は指輪を出して左手薬指に嵌めた。
「ありがとう嬉しいユキ」
そこへウェイターがおしゃれなトレーに載せられ花火みたいなろうそくで飾られたケーキを持ってきてくれた。「ご婚約おめでとうございます香坂様」「きれい、ありがとうございます」「写真撮ろうねインスタに載せなきゃ」「ありがとう」その場にいたお客様からも祝福されて幸せな二人だった。
それから3ヶ月後に二人はハワイで挙式をした。
「あの雨の日の出会いからこうしてリサと結婚できて俺幸せだよ。二人で仲良くやろうねリサ」「はいユキのためなら何でもするから言ってね?」「あぁよろしくお願いします。愛してるよリサ」「リサも愛してるわ、ユキ」そうして二人は何度もKissを交わした。

あの雨が二人に幸せを呼んでくれた…。

 終わり

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