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ペットパノムルンの紹介と考察

Twitlongerに投稿した"ペットパノムルンの紹介"と"ペットパノムルンの考察"
をパブリックな場所で見てもらうためにnoteにも少し加筆して転載。

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ペットパノムルンの紹介

原口健飛との対戦が取り沙汰されて以降「ペットパノムルンはすげえ強豪なんだ!」って感じで超強豪というのが届いてる感じがするけどぼんやりと伝わってる感じが勿体ないので軽くペットパノムルンを紹介する。

ペットパノムルン・キャットムーガオ
"Petpanomrung Kiatmuu9"(เพชรพนมรุ้ง เกียรติหมู่9)
※ONEの日本中継でキアトモー9と表記されてるのは無視していい。

本名.パンサン・アイアムスリ "Aiamsiri Pansang"
26歳 ブリラム県出身。
ファイトマネー・150万バーツ
愛車はホンダ・シビックとベスパのスクーター。
国際式で活躍したパノムルンレックは実兄

インスタ・https://www.instagram.com/petchpanomrung_kiatmoo_9/
FB・https://www.facebook.com/profile.php?id=100014938867291

主な実績
・タイ国プロムエタイ協会バンタム級、Sフェザー級王者
・トヨタムエマラソン64㎏トーナメント優勝
・グローリーフェザー級王座4度防衛

"キャリアの変遷"
15歳からルンピニーで頭角を現し打撃と崩し技のキレの良さからムエタイ専門誌のシンラパムエタイに「現地ではサーマートの再来と呼ばれている」と書かれていた。
2012~2016年にかけてムエタイの壁にぶつかり始め超1流クラスとの対戦を取りこぼしが目立つ。2度のルンピニータイトル戦挑戦失敗、サムエーに負け越し、ポーゲーオ、ノンオー、ペンエーク、ムアンタイ、パコーン等超1流どころとの対戦を落としムエタイ時代は試合は面白いけどあと一歩の所で勝てないよね的なポジションだった気がする。

2017年から海外キック挑戦に本腰を入れる。
同年にウェイルイとロスマレンに地元判定負けを喫し洗礼を受けながらも
効率よく相手を傷めつけるファイトスタイルが海外キックの水と合いすぐに順応。
ガードの内外を割る左ストレート、膝上・腹・胸を蹴り分けるティープ、上半身のどこにでも当たるミドルハイで巧妙に相手を傷めつけ、組んでから3秒間アクション可能なGloryルールで首相撲の技術をいかんなく発揮し、ムエタイ時代よりも安定感ある試合を披露。
ある程度、組んでからのコンタクトが認められるRISEルールならそこまで弱体化しないかも。

ゾウガリ戦とエズビリ戦のKO勝ちはもはやキック界のミーム。
ゾウガリ戦KOシーン・https://youtu.be/3Gs6l9cb-PQ?t=836
エズビリ戦KOシーン・https://youtu.be/np_w_2EFluU?t=685

タイ人選手がONEやRISEで試合するとムエタイのバックボーンありきで語られがちだけど
ペットパノムルンに関しては海外キックの情報だけで大体の魅力が伝わるタイプの選手だと思う。

技の考察

左ミドル(テッサイ)
ペットパノムルンを語るうえで外せないのは左ミドルを起点とした上中下の蹴り分け。
キレ・精度ともに抜群で状況に応じた蹴り分けでスコアリングからダメージングまでそつなくこなすペットの主力技。
特筆すべき点は円滑に行われる全身の運動連鎖を効率的に使った無駄のないフォームで、物体を前方に送る"並進運動"と骨・関節等を作用させ動かす"回転運動"が淀みなく満遍に蹴りのフォームに行きわたっており、結果的に蹴りのモーションを相手に悟られづらくなりスタミナロスの軽減にも繋がっています。

蹴りの初動が下肢や体幹を捻らせる動作を伴わない並進運動始動の打法により初動が非常に悟られづらい特徴がある。蹴り足のかかとを強く踏み出すことで大殿筋・大腰筋が伸展される作用で骨盤前傾と腰椎が前方に引っ張られ、並進運動の推進力となります。強く踵を踏むことによる地面からの反発力も加わることでさらにスピードと伸びが生まれることも期待できます。

並進運動主体の打法はムエタイでは主流の蹴り方となっておりペットパノムルンだけの特別な打法ではありません。代表的な使い手としてはチームメイトのスーパーレックや3年連続MVPを獲得したパンパヤックやペトロシアンをKOした事が記憶に新しいスーパーボン等も該当します。

淀みなく、かつ力強い踏み出しから生まれる並進運動はレスリングのレベルチェンジからタックルや伝統派空手の膝抜きからの飛び込みイメージするとさらにわかりやすいかと思います。

・キレ重視の蹴りと力積重視の蹴り
試合展開や身体の部位によって蹴りの打法・性質を使い分け、攻撃にメリハリを出すのもペットパノムルンの得意な戦術です。
ガード越し・上半身・膝と太腿の外側といった重たい箇所は物体の慣性が大きいため、有効なダメージを与えるために力積が伝わる打撃をヒットさせる必要があります。
ペットは慣性の大きい箇所にダメージを与える際、蹴り上げに合わせて軸足を強く返し腰をうねらせ、蹴り足にフォロースルーを加えることで力積を稼ぎ殺傷力とストッピング効果の高いミドルキックを実現し、頑丈で体格で優るヨーロッパ選手に有効なダメージを与えつつプレッシャーを塞き止めています。軸足と体幹と切り返す動きが伴うためにモーションが見破られやすい弱点がありますが、前述した初動を見破らずらい動作を始動にすることでその弱点をカバーしているのも特徴です。

力積を加えた蹴りは動作が長引く性質上、連打が効かず乱打戦やインファイトを仕掛けられるとセットアップさせてもらえず蹴りずらい弱点があります。
ペットパノムルンはそういった展開に持ち込まれないためのリスクケアも巧みで力積を加えない鋭いミドルキックを交えることで相手の判断を鈍らせ接近を巧く躱しています。
力積重視の蹴りとは真逆で、軸足は内側に踏ん張りを利かせ、蹴り足にフォロースルーを加えずインパクトの直前に左肩を引き、腰を巻き戻すことで左半身にブレーキがかかり鋭くキレのある蹴りを放っています。
これは体幹の力が身体の末端部に作用する運動連鎖(通称PDS)を使いこなしているからです。骨格に作用する回転運動を蹴り足に集約するため左半身にブレーキをかけ軸足は内側に踏ん張りを利かせることで行き場のなくなった回転運動が末端部の蹴り足に伝達させているため鋭くキレのある蹴りを実現しています。

力積重視の蹴りだけでは乱打戦や突貫型のスタイルに相性が悪く、
キレ重視の蹴りだけでは相手にダメージを与えきれずストッピング効果が薄いという弱点がありますが、ペットパノムルンはこの二つ打法を使い分けることでそれぞれの弱点を補っています。

左ストレート
蹴り一辺倒ではなく、キレのあるパンチもペットは得意にしています。
左ミドルでも前述した並進運動主体の打法をパンチにも活かしているためミドルキックと同じく悟られづらいフォームが特徴になっています。
・真っすぐインから伸びるストレート
・外側に大きく踏み込み正面から当てるストレート
・外側に大きく踏み込みガードの側面からフック気味に当てるストレート

といったセオリー通りに真っすぐ打つストレートと踏み込む方向とパンチの方向を一致させずに打つストレートの打ち分け、相手のブロッキングを巧みに割り、メリハリをつけることで相手の反応を鈍らせています。

これもペットパノムルン以外の選手ではムエタイ時代のライバル・ペットモラコットやジョルジオ・ペトロシアンやビック・ダルチニアン等も踏み込む位置とパンチの方向を一致させないパンチを得意にしていました。

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