私とともに眠るコート
一去年の秋のこと。
おうちがすきなわたしは
重い腰を上げて、
コートを探しに街へ向かいました。
福岡のおしゃれさんが集う、天神・大名。
人とすれ違うたびに、
息が詰まってしまう、
怖いのです。
こだわりの詰まったお洋服を身に纏い、
颯爽と、歩いてゆく人たちが。
わたしの中の淀んだ何かを浮き彫りにするようで。
あまりに眩くて、背を向けていました。
気づけば、目の前には憧れのお店が。
くるっと回って、おうちへ…
という考えも浮かんだけど
ここで引き返すわけにはいかないと思い
恐る恐る、扉に手をかけました。
そこからは緊張していて
店員さんと何をお話ししたのか、あまり覚えていません。
ただひとつ、確かなことは
あるコートの虜になったということ。
YAECA -八重日-
この言葉には、日々重ねて着てもらえる服作りがしたい、
というデザイナーさんの願いが込められているそうで。
そして、シーズンごとにコレクションを作っていくのでは無く、
一つ一つのアイテムと向き合い、毎年少しずつアップデートを繰り返しながら、
最高のベーシックウェアを完成させていく、
というスタイルなんだそう。
わたしのこころの中にあるパズルに
ぴったりはまった気がしました。
今まで、どんな手持ちのピースでも、埋まらなかった部分が、
ようやく。
ああ、これだと、たまらない幸福感に包まれました。
もしかしたらこれまで
寂しさを感じていたのかもしれません。
トレンドが終わってしまったり、
くたくたになってしまったお洋服たちと
1年限りでお別れしてしまうことに。
このコートおうちに迎えてからとういもの、
不思議と、
お出かけするのが待ち遠しくなりました。
誰かに会う前の日にはいいイメージばかり膨らむように、
街を歩くのも、ちょっとだけ怖くなくなってきました。
ちょっとだけ、ね。
なんだか、スーパーマンのマントを手に入れた気分。
ほんとだよ。
お洋服の持つパワーって、すごい。
きっかけをくれたこのコートの終わりは、
わたしとともにあってほしい。
みなさんのきもちをしっかりと受けとって、カタチにしていきます。