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変化の激しいECの世界で「20年間ずっと変わらないこと」

拙著『まんがでわかるECビジネス』(2019年11月20日刊)の「はじめに」と「あとがき」をアップします。
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はじめに

変化の激しいECの世界で「20年間ずっと変わらないこと」

「わが社もいよいよEC(Eコマース、電子商取引)ビジネスに取り組まなければいけない」
「会社からECサイトの立ち上げを命じられた。しかもほぼ丸投げ」
「ECサイトを立ち上げたけど、全然売れない」
「売れるようになったけど、全然儲からない」
「競合が増えてきて、価格競争が激しい」
「せっかく売れたモノがすぐマネされる」
「巨大ECサイトの台頭や大手メーカーの参入で、中小企業では太刀打ちできない」
「リアルとネットの融合って、どう考えたらいいのだろう」などなど、

 この本を手に取ってくださった方の問題意識はこんなふうに多岐に渡っていると思います。

 ビジネスの世界が「VUCA(ブーカ)」になったといわれるようになって数年が経ちます。すなわち、変化に富んでいて(Volatility)、確実な正解がなくて(Uncertainty)、複雑にからみ合っていて(Complexity)、見通しが曖昧(Ambiguity)になってきていると。

 私が身を置くECビジネスの世界は、1990年代の黎明期からずっとVUCAです。しかも変化のスピードが急激なので、3年前にうまくいっていたやり方が賞味期限切れでまったく通用しなくなる、というのはふつうのことです。

 私はそんなECの世界で、20年間にわたって数万店舗のネットショップを見続け、直接または間接的に支援してきました。いろんな成功事例・失敗事例があります。数字が伸びて成功だと思っていたことが、のちに「あれが失敗の元だった」という評価に変わるようなシーンも少なからず見てきました。

 一方で、長く見てきたからこそわかる「20年間ずっと変わらないこと」もあります。

「ここを誤解していると次へ進めない」という落とし穴の数々。そして、楽しそうに仕事をしている人たち(かつて落とし穴に落ち、気づきを得て、自らを変化させてきた人たち)が口を揃えて言う「商売の本質」や「あり方」です。

 この本は、まんがのストーリーの力を最大限に活かして、ECビジネスを考えるにあたって大切になる本質的な視点を、できる限りわかりやすく凝縮しようという試みです。

 というわけで、本書はこんな方にならお役に立てるはずです。

・落とし穴(よくある誤解)を知っておきたい
・考え方のよりどころとなるフレームワークを知りたい
・消耗戦を抜け出すヒントを得たい
・実店舗の商売で培った経験をECに活かすヒントを得たい
・新人に「ウチの店もこういう経緯で今があるんだよ」と共有する機会をつくりたい
・仕事が楽しくなるヒントを得たい

 ハナシが長くなってしまいました。それでは、まんがの続きをどうぞ!


あとがき

「まんがでわかるECビジネスの本をつくりませんか?」

 編集者さんからの提案に、うっかり「いいですね!」と答えてしまってから、本ができるまでに2年かかりました。

 ECの世界は変化が激しいので、「今」を切り取って「すぐに役立つ具体的手法」をまとめても、本が出る頃には状況が変わっていたりします。ウェブサイトで鮮度の高い情報をいくらでも発信できる時代に、わざわざ本という形で賞味期限の短いものをつくっても仕方ない、せっかくなら長く読んでもらえる内容にしたい。

 というわけで、「自分がこのタイミングにECビジネスの本を出す意味ってなんだろう?」と考え始めたら、とっても時間がかかってしまったのでした。

 これまで20年間、数万社のネットショップを観察しながら支援してきました。そのなかに月刊誌を発行する仕事があって、数百人のネットショップ店長のインタビュー記事をつくってきたのですが、そこでわかったことがあります。

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 それは、「ネットショップ運営というものが、ものすごく人を成長させること」と「その成長ストーリーが驚くほど似通っていること」です。

 なぜ成長するかというと、ネットショップではアクションを起こしたときに、それがよければすぐ反応があるし、反応がなければ「これではいけない」という反応がすぐ返ってきた、ということになります。だから、「仮説→アクション→フィードバック→学び→次のアクション」という試行錯誤サイクルを高速回転させやすいので、どんどん成長していくのです。

 成長ストーリーが驚くほど似るのは、なぜでしょう。よくわかりませんが、人間というのはそんなに急激には変化しないものなのかもしれません。みんな同じところで落とし穴にハマり、同じ「大切なこと」に気づいて成長ステージを上がっていきます。

 まんがの力を借りることで、その2つ(ECの成長促進性と、成長ストーリーの普遍性)をわかりやすく伝えることができたら意味があるのではないか。さらには、「ECの世界で、20年間変わらないもの」のハナシなら、自分が世に出す価値があるかもしれない。

 そんな想いからできたのが、この本です。

 まんが自体はフィクションですが、設定やエピソードのほとんどは「これはあの店長さんのハナシ」と具体的な顔を何人も思い浮かべながら、アレンジをしたものです。

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「この内容、実際にネットショップやっている人におもしろいと思ってもらえるかな?」と気になったので、まんがのラフ原稿ができた時点で、ネットショップ店長有志(ベテラン多め)に集まってもらい、原稿を読んでもらう「サキ読み会」をやってみました。

 そうしたら。

「このまんがは私たちが経験してきたそのもの」
「経験したからわかるけど、これを経験してない人が読んだときに伝わるだろうか」
「これ、月商数億円レベルなら十分あてはまるし、商材も問わないよね」
「スタッフみんなで読み合わせしたい」
「これはECの神話なんだと思う」

という、うれしい声をいただきました。

 実はこの本は、「20年前の自分に渡してあげたい本」です。もしタイムマシンがあったら、マニュアルも前例もなく、ネットショップ店長さんたちとひたすら試行錯誤を繰り返していた頃の自分に、「これ読んでみて」と手渡したい本になりました。

 最後に、この場をお借りして、20年のあいだにご一緒したネットショップ経営者・運営者のみなさんに感謝申し上げます。みなさんがお客さんと真摯に向き合う姿勢から、たくさんの大切なことを学ばせていただきました。本当にありがとうございます!

 まんがをつくるにあたっては、ざっくりしすぎな私の構成にユーモアを交えつつ素敵なストーリーに仕上げてくださった漫画家の高田千種さん、編集者の畭俊之さんに大変お世話になりました。作画のための取材では、ネットショップ仲間の「ロリアン洋菓子店」小島有加里さんのところへおじゃまさせていただきました。ありがとうございます!

「楽天市場」という壮大な試行錯誤の場をつくってくれた三木谷浩史さん、いつも気の利いたトークで笑わせてくれつつ仕事を応援してくれる妻と息子にも感謝です。

 この本が、誰かにとって「仕事が楽しくなった」と思えるきっかけになったとしたら、望外の喜びです。

                        2019年11月 仲山進也

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