見出し画像

鷹匠壽 予約への挑戦 13日目

 
前回までのあらすじ。
鷹匠壽の予約をとるべく、若旦那に土下座。しかし、首を縦に振らず肩を落として帰ろうかと思ったが、仕入先トラックを追いかけ、鴨の仕入先 肉のとりせんにたどり着き、鴨が新潟にいるという情報をもらう。そのまま新潟に向かい、福島カモ養殖場で、真鴨の肉をゲット。鴨をゲットしたことを鷹匠壽へ報告すると、天然物じゃないことをバカにされたため、大日本猟友会経由で、フランス産の天然真鴨をゲット。
七輪で焼くための玉鋼(たまはがね)の鉄板を作ってくれそうな山奥の刀匠(とうしょう)を見つける。
話しを進めたが、そもそも割れやすい玉鋼を鍛錬し鉄板にすることは技術的に難しいと言われ、一旦白紙に。
しかし、次期人間国宝とも呼ばれる刀匠の吉原氏であれば、作れるかもしれないと名前があがる。
早速、吉原氏へ電話したが断られるも、ダメ元で七輪を担いで直接会いに行ってみると話だけは聞いてくれることになった。
実は、昔 奥さんと壽に行ったことがあり、玉鋼の鉄板を見たことがあった。さらに良い玉鋼の鉄板を作りたかったので、作ってもいいが出来るとは断言できないと言われる。カルフォルニアのナパのワインが好きという情報を得たため、七輪を担いでナパに飛び、吉原氏の好きなワインをゲット。一ヶ月後に連絡があり、見事鉄板を受け取る。
-------------------------
 
昨日は、炭の最高峰 紀州備長炭の調達の旅に出ていた。
 
まず、浅草にある炭専門店 斎藤商店に向かった。
紀州備長炭の良いものは、すぐ手に入るとおもいきや、
仕入れ数が決まっているため、一般の人には売れないと言われる。
 
そこで、最大手でもある佐藤燃料さんというところなら譲ってくれるかもしれないという情報をもらい、早速行ってみるも、結果は同じ。
契約している高級飲食店に卸すため、一般には売ることができないとのこと。
 
しかし、一連のマイ鴨ストーリーを話し、佐藤燃料さんから「和歌山の紀州備長炭を作っている窯元に行ってみたら、もしかすると直接売ってくれるかもしれない」と情報をもらう。
 
日も暮れていたので、そのままの足で京成上野駅から出ている和歌山行きの夜行バスに乗り込んだ。
9時間窮屈なバスのシートに揺られ、朝7:00和歌山駅に到着した。
 
着いてすぐ、現地のことを調べてみると、紀州備長炭振興会、紀州備長炭記念公園という施設があることがわかった。
実際に、現地に行けばあっさり買えるかもと思い、レンタカーで現地に向かう。
 
山道を2時間ほど走ったところ、紀州備長炭振興会に到着した。
着いてすぐ、炭を作っている窯元を紹介してほしいと頼んだところ、200m先に窯元があるということだったので
そのまま徒歩で山を登って行った。
 
すると、小さな小屋を発見。大きい釜が2つあり、炭独特の香りが漂っている。
奥を覗くと、木を同じ長さに切っている人を発見した。
 
早速、声をかけて一連の話をするが、やはり紀州備長炭を一般の人に直接売るのは、木炭組合の関係で出来ないということだった。
周辺には備長炭らしきものが無造作に転がっていたが、出荷できない状態の半端物が転がっているだけだという。
しかし、作業中だった手を止め、炭を実際にどのようにして焼くのかなどを丁寧に教えてくれた。

それによると、
 
まず、山に自生しているウバメ樫(ガシ)という木を窯にいれ、3日間ずっと焼く。次に、蓋をして4日間ゆっくり燃やし、
最後の2日間で空気を入れることで1000度の高温で焼く。炭を取り出し、灰をかけ急激に火を消す。出荷するまでの作業全体で2週間前後かかる。
紀州備長炭の中にもいろいろあってサイズによって、上小丸(じょうこまる)、切丸(きりまる)、特切丸(とくきりまる)などがある。
炭には、白炭と黒炭があって、紀州備長炭は白炭に分類される。黒炭は、上質なものでも臭いが出るが白炭は、臭いが出にくいため、
室内利用に向いている。なので、料理人からは白炭である紀州備長炭が、好まれる。

そんなような話だった。
炭の香りを後に、次の場所、紀州備長炭記念公園に向かうため、1時間ほどさらに山奥へ向かった。
 
着くと先ほどの所よりも、少し大きい施設のようで、そこには受付の人と館長の2人がいた。
館長に、これまでのマイ鴨ストーリーを聞いてもらった。

館長 : そういうことでしたら、この施設の裏にある窯元を紹介しますよ。ちょうど昨晩、窯から炭を出していましたので。今、出荷作業をしていると思うから、製炭士(炭を作っている人)に直接交渉してみてくださいよ。
 
一緒に館長が付いて来てくれることになったので、岩松と共に窯へ向かった。
そこには大きな釜が5つ、直径50m以上あろうかというとても大きな施設になっていた。
  
ちょうど、出荷作業中で忙しくしている製炭士を発見。
館長同席のもと、一連の話をさせてもらった。と同時に、鷹匠壽の食べログから勝手に拝借した写真を印刷し、
七輪と鉄板の隙間から少しだけ見える燃えた炭の写真をみてもらった。

 
岩松:これと同じ、最高の紀州備長炭を探してます!譲っていただけないでしょうか!
 
製炭士:この写真に写ってる炭は、紀州備長炭じゃないな。ただの黒炭だろう。
 
岩松:えっ。違うんですかっ!
 
製炭士:この写真の炭よりもウチの炭のほうが良いよ。館長もいるし断りづらいなぁ。君の話にも興味が湧いてきたし、、、これを持って帰りなさい。紀州備長炭の最高級上小丸という物だよ。それと、写真の七輪にちょうど良いサイズなら切丸という物だな。
 
製炭士:組合の関係もあるから、私の名前を伏せるという条件であれば譲ってあげるよ。それと、これはまた来ても売ってあげること出来ないから許してね。
 
岩松:ありがとうございます!!

こうして、岩松は紀州備長炭 最高級 上小丸と切丸を手に入れたのであった。
 
窯をあとにし、清々しい気持ちで下山中、滝を発見した。
誰も見てないので、全裸で滝に打たれ、そのまま また11時間ほどバスに揺られ、今朝、三軒茶屋まで戻ってきたのである。

14日目に続く
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?