比較政治学の教科書おすすめまとめ

実証政治学のうち、比較政治学というなんだかよくわからない名前の各国に共通する政治現象の理論を作ろうという分野の教科書を見ていきましょう。


比較政治学の展望

比較政治学というのは、なんだかよくわからない名前である。今となっては比較して理論を作ろというのはごく当然の営みのようであるが、そうでなかった頃にそういった手法で研究をなすべきと主張するための方法指向の名前のようである。だから今となっては「国内政治学」とかでいいと思う。
まあそれはともかく、比較政治学にはざっくり次のように分類されることが多いと思う。

  • 政治体制論:国家、民主主義体制、権威主義体制とはといったマクロに国家を論じる部分

  • 政治制度論:選挙制度、執政制度を中心に、国の運営にあたる各種制度を見ていく部分 広い意味では政治体制も制度の一つと見れなくはない

  • 政治過程論:政治過程のアクターに注目する部分

  • 政治経済学:経済的側面と政治とのかかわりを比較する部分

  • 公共政策学:政策に注目して、政策がどのように動いているかを議論する部分

  • (政治学方法論):政治現象を比較するための方法論を論ずる部分

あとは、対象によって「民主主義国指向」か「権威主義国指向」かという軸もあるように思われる。

入門のかたは、次のページにまとめてあるのでそちらをご覧になることをお勧めします。

分野の地図の紹介はここまでとして、さっそく中身に入っていこう。

教科書紹介(比較政治学全体)

粕谷(2014)『比較政治学』ミネルヴァ書房

概論的な教科書で定評があるのはこちら。

実証政治学でよく取り扱われるテーマがきちんと押さえられながら、比較的新しい研究の動向、将来の研究への示唆も書かれていて、研究者向けでもある中級との評判が多い印象です。
刷を重ねている定評のある本です。
内容には流れがあって読みやすい印象があります。
政治体制(国家・ナショナリズム・民主主義)とかの記述が中心的で、政治制度論や政治過程論は別の本で学ぶとよいでしょう。

久保・末近・高橋(2016)『比較政治学の考え方』有斐閣

2冊目は、こちら。

授業などでよく紹介されているし、安定のストゥディア系統なので間違いはないと思う。
方法論といった基礎から論じられており、初心者は粕谷よりはとっつきやすい(という評判だが、自分はどちらでも難易度に大差はないと思う)。
特徴としては、(まえがきにもあるように)政治体制論・政治過程論いずれも権威主義国とか新興国を中心にしてる点か。政治制度論は最低限しかない。そういう意味で、教科書として独自性はあるものの、ベーシックな内容とはちょっと離れる、ややニッチ向けのように思う。
粕谷の本と並んで刷を重ねているみたいです。

岩崎・松尾・岩坂編著(2022)『よくわかる比較政治学』ミネルヴァ書房

(私は未読ですが)大学関係者では有名なよくわかるシリーズです。
見開き1頁読み切りで、テンポよく読めるのがいい点の一つ。長文が苦手な人などとても良いと思う。
とともに、内容もきちんと満遍なく取り扱われているのもよい点だと思う。

岩崎(2015)『比較政治学入門』勁草書房

上の本ほどは見かけないが、この本が紹介されることもある。
題名から見る限り、政治体制論や政治制度論中心、民主主義国中心の構成か。

教科書紹介(政治制度論概論)

建林・曽我・待鳥(2008)『比較政治制度論』有斐閣

政治制度論の教科書の名著といえばこちら。

合理的選択新制度論という、先端で流行っている考え方が超体系的にまとめられている。
一回で理解するには多分難しいと思います。
が、最近の実証政治学のエッセンスがぎゅっと詰まっています。
制度論は実証政治学で主流ということもあり、また政治体制論と比べ身近か制度が注目されているということもあり、実証政治学に挑戦される方には必読の書。

教科書紹介(政治過程論概論)

松田・岡田(2018)『よくわかる政治過程論』ミネルヴァ書房

私は未読だが、最近の教科書で政治過程論がよくまとまっている本ではないかと思う。
公共政策学に関する内容が多いのも特徴的。

伊藤・田中・真渕(2000)『政治過程論』有斐閣

政治過程論の各分野が手広くまとめられています。
が、2000年刊行と古いですし、内容的にも上でご紹介したより新しい久米ほか『政治学〔新訂版〕』でカバーできそうなので、今読むこともないかなとは思います。
一昔前の定番書、というふうに自分は思っています。

といろいろ紹介していきましたが、政治過程論については各アクターの概説本をこつこつ読んでいくのがいいように自分は思いますがね(追って紹介できればと思います)。


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