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ふまじめのきろく ③

クニちゃんをさがせ。

前回の投稿のおわりに、もうちょっと創作論を書きますとお伝えしてましたが、それを書き出すとゴールに辿り着く前に公開が終わってしまいそうなので、別の話題にします。

やっぱりまずはキャストのことを書かなければと思います。
今回は小規模映画ということもあって、自分が今までやっていない事に挑戦してみました。それは、メインキャストをオーディションで決めるということです。そもそもオーディションが苦手です。資料で判断するのは難しいし、一瞬会っただけでその方の能力が把握できるはずもありません。なので、過去作ではオーディションを行わず、ほとんどキャスティングで選んできました。ただ、それだとすでに知っている俳優の中から選ぶ事しかできず、まだ会ったこともない僕にとって未知の俳優と出会う機会がなくなってしまいます。なので、今回はほとんどの役をオーディションで選ぶ事にしました。と言っても、最初はこんな小規模な映画に、ましてや「ふまじめ通信」という呑気なタイトルの映画に、それほど応募がこなかったらどうしようかと不安がありました。100人くらい応募があれば嬉しいなと思っていたら、その10倍以上の1200人ほどから応募がありました。驚きました。驚くと同時に困りました。「この膨大な数の中からどうやってメインキャストを見つければよいのか?」中でも一番数が多かったのは主演のクニちゃん役です。募集要項にキャラクターの設定「まじめすぎて疲れ果て、ふまじめに生きる方法を模索している女性」と載せたところ「これは私の話です」というメッセージが多く届きました。そんな、自分を重ねられるクニちゃん役に強い意欲を持った俳優がたくさんいる中で、ひときわ目をひいたのが「宇乃うめの」さんでした。オーディションでは課題シーンを演じた動画を送ってもらう事になっていました。まず、宇乃さんの動画は、画面が暗かったです。そして、演じる宇乃さんがとても自信なさげでした。画面の暗さに関しては映画公開後のトークで理由がわかりました。すごく陽の当たる明るいところで撮り始めたのですが、たくさん練習してたら陽が傾いてしまったそうです(このエピソードだけで、クニちゃんっぽい)。そして、自信がないように見えました。オーティションなので、嘘の自信を持ってのぞむことはできたと思います。僕も人前に出たりするときは虚構の自信を持っていくことがよくあります。そのほうが見栄えがよくなるはずです。審査の印象も良くなると考えてしまいます。でも、宇乃さんは自信のないままを見せてくれました。その自信のなさが、僕にはとてもよかったのです。人はみんな弱いので、自分を大きくみせたり、強いふりをします。生物が生き残るためには必要な能力なのしれませんが、僕は強いふりができない人にとても信頼ができます。この映画の主人公も強くない人です。そして、弱さを隠さない人です。たぶんこの映画の観客も、ほとんどが強くない人だと思ってます。観客に「これは私の物語です」と思ってもらうことが、この映画を作った目的です。そのためには、観客の気持ちに寄り添える一番近い存在が必要だったと思ってます。それが、宇乃さんに、クニちゃんをお願いした理由です。映画を見終わった方から「これは宇乃さんに当て書きしたのですか?」と良く聞かれます。当て書きではありませんが、そう思ってもらえるのはとても嬉しいです。今となると宇乃さん以上に、クニちゃんにハマる俳優はいなかったと確信しています。僕らが1200人の中から、クニちゃんを見つけるつもりでしたが、結果的には、宇乃さんがたくさんある企画の中から「ふまじめ通信」を見つけてくれて、そしてクニちゃんに出会ってくれたのだと、感謝しています。

この映画を通して「宇乃うめの」を知ってくださった方もいると思います。一度見たら忘れないビジュアルと、唯一無二の空気感と、観客に近い存在感で心の隙間を埋めてくれる俳優だと思います。この先も間違いなく活躍していきます。約束します。断言します。次はどんな「宇乃うめの」が見れるのか、僕も楽しみにしています。

最後に、これまでの宇乃さんのプロセスを語ったネット記事がとても良かったのでご紹介します。

https://news.yahoo.co.jp/articles/cfe4fc6de03475160b49cdddfe7ef493764eee98

これからも、宇乃さんを応援してください。僕ももちろん応援します。

ここまで読んでくださりありがとうございます。では、また次回。

              まつむらしんご拝


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