ネタニヤフは動じない

お雑煮の出汁はもちろんカシミール

 動画は、世界の人質救出作戦中、最も成功したと言われる「エンテベの奇跡」を中立に映画化した『エンテベ空港の七日間』。キノフィルムさんが配給してくれました。感謝感謝

 さて、昨年12月初めに始まった「ガザ侵攻」。痛ましい出来事であり、アメリカがここまで警告しても一向に収まる気配がありません。ネタニヤフ首相はなぜそこまでこだわるのか? 僕は、ネタニヤフ首相はそう簡単に和平交渉に臨まないのではないかと思っています。政治的打算以上の決意を感じてしまっています。

 「彼は私にとって北極星のような存在でした。道に迷いそうになると、いつも彼が空で輝いていており、それを目指した歩めばよかったのです」
 ネタニヤフがそう言う相手こそが、ヨナタン・ネタニヤフ。イスラエル軍のエリートで、「エンテベ空港人質奪還作戦」のリーダーです。
 「エンテベ空港人質奪還作戦」とは、イスラエル/テルアビブからパリ/ドゴール空港行きのエールフランス便がパレスチナ解放人民戦線と西ドイツのテロリスト4名にハイジャックされ、ウガンダのエンテベ空港に強行着陸し人質を救出した事件です。
 乗客・乗員計260名の内、イスラエル国民106名が人質としてエンテベ空港に残され、他のフランス人などは解放されます。
 犯人の要求は服役中のテロリスト40数名の釈放。それが敵わないなら人質を殺害すると。イスラエル政府はウガンダ/アミン大統領に交渉するなどしますが進展しません。そこに、軍のエリートから人質救出作戦が提案されます。

 日本が誇る「忠臣蔵」のミッションは「47名のチームで要塞化している敵地に乗り込み、見たこともない一人の老人の首を狩ること。できれば全員無事で帰還すること」でした。1年9か月かけて作戦は実行され大成功します。誰も吉良上野介の顔を見たこともないのに、すごいですよね。
 今回の「エンテベ空港人質奪還作戦」は「1週間以内に、100名ほどの兵士で、反イスラエルのウガンダのエンテベ空港に乗り込み、空港ビルにいるイスラエル人の人質106名を救出しイスラエルに連れ帰る」というミッションです。
 詳細は省きますが、結果としては人質102名救出、ウガンダ兵40名前後とテロリスト全員を殺害。味方の犠牲者は隊長のヨナタン・ネタニヤフ1名のみという大成功でした。
 イスラエル軍がエンテベ空港に極秘着陸し、人質を救出して再び空港を離陸するまで1時間弱。アミン大統領の専用車そっくりのベンツを持ち込んだり、あっと驚く作戦でした。 

 イスラエル国内は歓喜に包まれます。テロリストの屈することなく、かなり難易度の高い救出作戦を人質106名中4名の犠牲と、自国の軍人1名の殉職で成し遂げ、国家の威信を守ったのですから。
 その時アメリカにいたベンヤミン・ネタニヤフも喜びつつも、敬愛する兄を失ったことに激しい憤りも感じていたでしょう。

 ベンヤミンは高卒後7年ほど軍務につき、それを終えてMITで大学、大学院と進み、さらにハーバードでも学んだ後、ボストン・コンサルタント・グループに就職します。兄を失くしたのはMITの頃だと思われます。かなりのエリートですね。
 その後、政治の世界に転身し、国連大使や外務次官を務め1996年に史上最年少でイスラエル国首相に、現在では史上最長期間の政権となっています。
 長期政権のため批判も多く、人気も陰っているらしいです。それを盛り返すために、強硬な姿勢を貫いて政権維持を図っていると言われますが、僕には「北極星」であった兄ならどうしているか?と自問自答しながら、決してぶれずにテロリストの完全排除を目指しているような気がします。

 浦沢さん、長崎さんの『PLUTO』は、アメリカとイスラムの最終決戦を描く物語でした、そこで最後の最後まで語られたのが「復讐からは何も生まれないのだよ」でした。スピルバーグの隠れた超名作『ミュンヘン』も、ミュンヘン五輪テロに対して復讐を遂げていくものの、そこに関わった人たいのその後も続く悲劇を描くものでした。
 イスラエル建国後から続く対立も、同じです。
 復讐からは何も生まれない。

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