見出し画像

ジジと歩いてみた

猫好きな 女の子だった。
ハイツでは 猫が飼えないから
その子はいつも 外猫さんとおはなしをしていた。

一緒に タオルを買いにいったときに
どれにしようか これもいいよね
なんて言いながら お互いにとっかえひっかえ 手にするタオルの肌触りを 確かめて 選ぶことを楽しんでいた。


薄くてもだめ かたいのもいや
使えれば なんでもいいというわけではなくて 柔らかくて 顔をうずめると ふわん と吸いこまれるような
気持ちよさが 欲しかった。


そのとき その子は こっそりと
なぞの行動をしていた。
こっそりなのに わたしには わかってしまった。
その子は タオルの鼻ざわりを
ひそかに 確認していたのだ。


こっそりと なのだから
気がつかなかったことにする 優しさもあったのだけれど こころがムズムズする。ダメだ。
その領域に はいっていいのは
わかるときだけのはずだが わたしには ウェルカムと門を開かれたように感じたのだ。


わたしにとっても タオルの鼻ざわりは タオル選びの条件のなかでも 外せないものの ひとつである。


すこし ドキドキしながら
ねぇ いま タオルの鼻ざわりを
確認してた? と たずねてみたら
ひみつにしてたのに バレちゃった〜✨✨と 笑いはじめて 
わたしが 鼻ざわり 大事やもんね〜 と言うころには 笑いがとまらなくなって 泣きながら 笑っていた。

ふわふわのタオルに 鼻をうずめると
その 鼻ざわりに 安心感とともに
ものすごく 癒される。
世界のなかで 取り残されたように
感じる こころ細くなったときにも
それをそっと やることで
癒やされながら なにかを確認したりする。




彼女とふたりで 大笑いしたときに お互いひみつにしていた
自分の癒しかたが おなじだったと知り おなじなんだ という感覚の
喜びを分かち合うことが 素敵なことなのだという意識が芽をふいた。



はじめて 彼女のおうちへ
遊びに行ったとき 待っててくれた
通りから ハイツへと続く細い道へと
わたしを案内しながら
ここでちょっと 待ってて と言って
すこすこと 先に歩いてゆき
茂みのなかで 丸くなっている 外猫さんに ごあいさつをしていた。

いつも こんなふうに おはなししてるんだなぁ と 彼女の日常の様子に 想いをめぐらせながら
そこへ 割りいってゆかないように
それを静かに楽しみつつも 待っていた。


外猫さんとの おはなしは
彼女が 自分とおしゃべりしているように そっと 語りかけていた。

ごあいさつが終わったのか
ごめんねー と走ってきた顔や彼女が
黒猫さんのように見えた。
わたしは 彼女に許しをえて
ジジと呼ばせてもらうようになった。

ジジは 骨格が華奢で 物腰がやわらかな 黒猫さんだ。
そとで あまり自己主張しないぶん
うちで いっぱい 好きというものを
楽しんでいて キラキラした雰囲気を
持っていた。

すきが たくさんあると
うちから ひかるのかな
ねぇ ジジ もっと遊ぼうよ

ジジは 病気とにらめっこ しながら
晴れた 風の穏やかな日には
動物園へ行ったり 共通のおともだちへの お誕生日プレゼントをさがしに
三宮へ お買い物に行ったりしてくれた。


朝 いつもより早起きして
からだを整えて 仕事へゆくことも
ほかのひととは ちがっても
自分との つきあいかたなんだよって
いうことも 教えてもらった。


どんなに遅く 眠りについても
はやめに起きて 静かな時間を大切に過ごす習慣がついたのも ジジから
分けあたえられたものだと 思ってすごく感謝している。


うちのキッチンに置いてある時計は
つねに 10分はやい時を刻むように
合わせている。
最初は 電車の時間に遅れないようにと思って はじめたことが
いまは その10分を 楽しむために
用意されるものへと 変わってきた。


持ちものひとつ 選ぶのにも
とりあえず あれば ではなくて
ちゃんと 理由があって そばにおく
寄り添ってもらう意識になれる
そんな感じが その10分を 好きでいさせてくれている。
こころのなかも カバンのなかも
いっぱいにして 飛びだしてゆくのが
わたしらしくて お気に入りだ。

ジジは わたしよりも ひと足はやく
お空へと かえってしまったけれど
ジジの想いは いまも わたしとともに ここにあるのだと思っている。
いまは そばにいないけれど
わたしを 支えてくれているジジに
ありがとう〜✨✨と 叫びたい🍀

ジジ ありがとう❗❗
これからも いっぱい がんばるね🍀
そして 追い風になってくださる
みなさまの 追い風となれるように
すすみたい。すすめるように 叫びたい🍀
ありがとう❗❗

















 











この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?