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白鷗大学WEBフォーラム「きたやまおさむと語る 危機と日本人」聴講レポ

7/10(日)、白鷗大学の主催により開催されたWEBフォーラムを聴講させて頂きました。
フォーク・クルセダーズのメンバーで精神科医、また同大学の学長を務める北山修さんに加え、THE ALFEEの坂崎幸之助さん、エッセイストで作詞家の松山猛さんをゲストに迎えた今回は「今よみがえる『イムジン河』~この分断の時代に~」と題し、1968年リリースの名曲をこの時代に改めて振り返る場でした。

①きたやまおさむミニ・レクチャー

冒頭ではミニ・レクチャーとして、フォークルの活動の中で4回発売された『イムジン河』の歴史を紹介。
この文脈で引用された、小室等さんの発言が非常に印象的でした。

もし東京と大阪の間で分断されたら?

東京で行われたコンサートにて、関西フォークの新星として出演していたアマチュア時代のフォークルに投げかけられた問いかけ。『イムジン河』で描かれたテーマは遠い異国の話ではなく、「私たちの問題」として歌われなければならないというメッセージは深く心に響くものでした。

②松山猛・坂崎幸之助にとっての『イムジン河』

ここからは、この曲の訳詞を手がけた松山猛さんが曲への思いを語ります。

京都での中学時代、朝鮮学校にサッカーの試合を申し込みに行った松山さんは、コーラス部が歌う朝鮮語の旋律をふと耳にし、惹かれるように。
いてもたってもいられず辞書を頼りに日本語訳。この時、プロパガンダ色が強いと思われた2番以降は削除し、後に北山さんの要望により、半島に帰った友人への思いを込めた2、3番を追加したそう。

ここで3人の生演奏による『イムジン河』が披露された後は、坂崎さんが少年時代からのフォークルファンとして、またプロのミュージシャンとしての視点から『イムジン河』を語るパートに。
坂崎さんが好きな歌詞として挙げたのは「誰が祖国を分けてしまったの」。関西の少年たちとは違い、東京生まれの坂崎さんにとって在日コリアン社会は遠い世界の話。 学校で教えてくれない問題を音楽から教わったことが大きな体験だったと語ります。

後に自身のラジオ番組で『イムジン河』を取り上げた特番を放送した坂崎さん。その背景として、放送前に韓国のレコード店を訪れた番組プロデューサーがフォークル版の『イムジン河』を見つけたという驚きのエピソードも紹介されました。

③『イムジン河』が新たに意味を持つ時代

ここで話は変わり、50年以上前のこの曲が、現代において再び意味のある曲になったという話題に。
松山さんと坂崎さんはともに「21世紀になればもっと良い時代になると期待していた」と。
激変の時代、誰にとっても予想外だったコロナ禍や戦争といった出来事が現実感を帯びてくるこの時代、北山さんが「日本人が今まで避けてきた」と語る「分断の痛み」に直面せざるを得ない状況になってきたという事実を痛感します。

④きたやまおさむ まとめ

最後に、北山さんによるまとめの時間に入ります。
こういう非常時に、つい誰もが思ってしまう問い、「この分断は誰のせい?」。
北山さんは「あいつが悪い」とは言いません。出てきたのは「私かもしれない」という言葉。
何とも含みのある表現ですが、序盤で言及した小室等さんのメッセージに全て集約されるのだと解釈しています。
かつて朝鮮半島を襲い、今もなお解決の糸口を見出せずにいる「分断の脅威」は、今や日本人にとっても対岸の火事では決してない。
そんな状況下で、音楽を生業にする方々だからこそできることは何かを問う、濃密な1時間半でした。

【感想】

テーマがテーマなので、よほど緊張感を持って真面目に聞くべきなのか?と気張りながら臨んだ部分もありました。
しかし、気心の知れた3人の鼎談がそんな堅苦しいものであるはずはなく、笑いを交えて楽しく学ばせて頂きました。

何より、音楽に対する、そして世界に対する御三方の強い愛情を改めて知ることができたのが大きな収穫でした。

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