東京優駿

生涯一度きりのチャンス。
高校球児だった自分は、甲子園を目指した。
野球は好きだ。
スポーツとして。
部活は楽しくなかった。
甲子園という目標を共有している仲間がいるのにも関わらず。
野球が好きで集まってもライバルとしての意識がなくなることはなく、試合には勝ちたくても自分が試合に出たいという意識のほうが強かったのだ。

そして、ミスしたらいけない、バントミス、エラー、思いっきり野球を楽しむよりもプレッシャーも強かった。
父から見られているのも嫌だったし、暑いしきついし、楽しかった思い出がない。
3年間。
中学も含めれば6年間。
部活なんかしなくても、遊び程度でよかったのに。よく続いたものだと、今となっては思う。


そんな野球人生だったが、大学での野球は楽しかった。
サークルの遊び野球。リーグや大会に出場したときは、高校のときよりも勝利に向かってまとまっていた。

ミスをしても楽しく、笑いながら野球ができた。そのおかげか、実力以上の力を発揮し、リーグを優勝を重ね、トーナメント大会でも上位に入賞したりした。

しかし、そんな楽しい野球ができたのも、中学、高校時代の部活があり、父の期待を感じながらプレッシャーに耐えた時間があでたから。

そして、楽しく野球をするためにまとまった仲間がいたから。

ダービーは運の強い馬が勝つ。

勝つ運命を持った馬が勝つ。

一生に一度の取り返しのつかないレース。

プレッシャーが最も不要なファクター。

ダービーまでに最高の状態に持っていくため、馬は辛いトレーニングに耐え、その馬を支える人達。

最後は実力プラス何かがいるというよりも不安なファクターが1つもないこと。

馬が強いだけでも、ジョッキーがうまいだけでもなく、実力も運も備え、不要なファクターがないこと。それが勝者としての条件。

プレッシャーから解放された横山武史。

夏の小倉で走った経験。

多くの兄たちが勝ってきたレース。

夏のような一生に一度の舞台で、すばらしい能力と才能を解き放つ。

そう、キラーアビリティが府中の直線で突き抜ける。

父の墓前に真紅の優勝レイを捧ぐべく。

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