絶深海のソラリスをおすすめしたい

 「絶深海のソラリス」という作品激プッシュ(ネタバレ有バージョン)。結構うろ覚えな部分あるので間違ってたらすみません。途中まで質問箱と同じ文章です。 



舞台は22世紀、大災害によって都市が深海に沈みきったあとの世界。

人類はというと、当然のことながら多くがその生命と文化を失いました。

生き残った人類は、3割程度まで減少した陸地で細々と暮らしています。 

そんな人類の中に、深海踏破の異能力“水使い”の適性を持った人間が現れました。彼らは水中でも呼吸や会話ができ、深海でも活動することができます。

その適性を持った人間は某所の育成アカデミーに集められ、将来立派な“水使い”になるために日々訓練を重ねています。


主人公の山城ミナトも、そのアカデミーの卒業生。

彼は卒業後数年間水使いとして活動したのち、教官として再びアカデミーに戻ってきました。


受け持ちの教え子はふたり。 ひとりは彼の幼馴染、星野ナツカ。

天然、ドジっ子、そして巨乳。 彼女はマイペースかつ要領の悪い性格が災いし、アカデミーでも有名な「落ちこぼれ」。

一方でもう一人のクロエ=ナイトレイは学内でも飛び抜けた才能を持つ天才。それ故に高飛車でプライドの高い性格で、周囲から浮いた生徒です。 こちらは金髪ツインテの貧乳欧米人。


まるで真逆のこの二人を共に成長させるため、ミナトは積極的にふたりを引き合わせて指導をします。

ふたりは徐々に打ち解け始め、躓きながらも順調に訓練が進んでいきます。


ある時、ミナトと教え子ふたりはプロの水使いと共に実際に深海に出て活動できる機会を与えられることになりました。 アカデミーでも選りすぐりの優等生達が乗り込んだクルーザーは、かつての日本が沈む沖へ……


突如発せられた深海都市からのSOS信号。

現場を見に行った教官のララがなかなか戻らず、深海で負傷している可能性も。

見つかる訓練生の遺体、沈むクルーザー……

ここからが絶望の始まりです。




ここからネタバレ含む感想




結論から言うと、まっっっったく救いのない超バッドエンドです。読みきった先には絶望しか残りません。


敢えて言いますが、この作品を最大限に楽しめるのは「人が死ぬのが嫌いな読者」です。

おそらくキャラクターへの愛着や感情移入が強い読者はとても傷つき、ショックを受け、読み進めることが難しくなるタイミングがあるのではないかと思うのですが、むしろその暴力的なまでの裏切りこそがこの小説の醍醐味だと思います。

だからこそ、バッドエンドやどんでん返しが好きな人は勿論ハッピーエンドが好きな人にすすめたい(笑)とことんこの作品を大嫌いになってほしい(笑)


どんでん返しや叙述トリックを用いた作品は、そういうトリックが仕込まれていることそのものが最大のネタバレになるので、往々にして結末に差し掛かる頃まで伏せられることになります。


しかしこの作品、帯にも裏表紙の作品紹介にもはっきり「絶望」「大どんでん返し」って書かれてるんです。それもクソデカい文字で。書店スタッフの感想つきで。


まあわたしもそれに惹かれて買った訳なんですが、読み始める前からバッドエンドであることが分かってるって普通ストーリーを致命的に面白くなくしちゃうと思うんですよ。

最初からここから悪くなっていくと身構えて読む時点で、序盤のほのぼのしたラブコメも薄っぺらく感じるし、むしろ引き伸ばされるほどに「なんかあるんだろ?早く出せよ」とイライラしてしまうこともしばしば。私だけかな。


そもそもどんな物語にも当たり前に起承転結があるものなのですが、本を読むときには多くの人がそれを無意識に忘れるように仕向けているのではないかな、と思っています。

「起」「承」の時点で「転」で起こる事件の存在を認知して読むよりも、事件的展開が訪れることすら予測しない、まっさらで平和な状態だと思い込む方が「承」→「転」へのギャップが大きくなり、必然的に「結」への期待も大きくなるからです。


はじめに結末を明かしているこの作品がそれでもなお読者の覚悟を上回るスケールの絶望を与えてくるポイントは、「キャラクターの重さ」と「時折匂う安心感」ではないでしょうか。

丁寧に作り込まれた魅力的なキャラクターが、物語の展開を通じて散々刷り込まれた設定が、いとも簡単に使い捨てられる裏切り。

起承の作り込みとキャラ立てがしっかりしているため、中盤天才クロエあたりが前に出て敵全滅させて終わり、でも充分満足できるほど完成されています。バッド化展開を完全に忘れてしまうのです。


アンダーからひとり逃げ遅れたクロエは、抵抗するすべもなく生きたままの血肉を喰い荒らされます。

その頃のクロエはかなり丸くなり、気高さはそのままに可愛いげのある生徒になりつつありました。

そもそも前提として“天才”なんです。

そんな、前半主要も主要な立ち位置で進んできたクロエが真っ先に犠牲になります。


さらに悲惨なのはメイファ=リーを好きになった方でしょうか。

このキャラクターは後半近くなるまでほぼ目立たないのですが、主人公が命の危機にさらされる場面を救ってから一気に活躍、魅力を増します。かっわいいんですこれが~~!!

言葉少なな中国系のキャラです。それでいてノリがよく頭も切れる面白い子。

ラスボス的クリーチャーを前にしても動じないパワー型、実際さらっと倒せるだけの実力を持っています。メイファが大太刀を振り上げ飛び上がった瞬間「ああ、ここまで犠牲を出してきたけどようやく終わるんだ。やっと助かるんだ」と安心しきっていました。


さすがにもうないでしょ、これだけ人死んでるし、ラスボスよりメイファのが実力的に上だし、現に今にもメイファが斬りかかろうとしている。そのまま一撃、その一撃で物語は終わるはずでした。

しかし次の瞬間、メイファは大きな触手で執拗に叩き潰されヒトの形状すら失っています。ゲロ吐くかと思いましたよ。



ぞっとするのが、立て続けのシリアス展開を軽く淡々と描く描写のしかた。理解が追い付かず「えっ?」と戸惑うその一瞬の間にはすでに何事もなかったかのように元の文体に戻ります。

それが、人の命の軽さやあっけなさを言葉なしに表現しているのではないかと。



結局、主人公はひとり陸に戻ることができます。

ただし、ここでギブアップしてはいけません。絶対。ラスト一粒、だめ押しの絶望が残っています。

いわばこれが最大のどんでん返し。




彼の幼馴染、星野ナツカ。

天然、ドジっ子、そして巨乳。 彼女はマイペースかつ要領の悪い性格が災いし、アカデミーでも有名な「落ちこぼれ」。

一方でもう一人のクロエ=ナイトレイは学内でも飛び抜けた才能を持つ天才。それ故に高飛車でプライドの高い性格で、周囲から浮いた生徒です。 こちらは金髪ツインテの貧乳欧米人。


まるで真逆のこの二人を共に成長させるため、ミナトは積極的にふたりを引き合わせて指導をします。

ふたりは徐々に打ち解け始め、躓きながらも順調に訓練が進んでいきます。


ある時、ミナトと教え子ふたりはプロの水使いと共に実際に深海に出て活動できる機会を与えられることになりました。 アカデミーでも選りすぐりの優等生達が乗り込んだクルーザーは、かつての日本が沈む沖へ……


突如発せられた深海都市からのSOS信号。

現場を見に行った教官のララがなかなか戻らず、深海で負傷している可能性も。

見つかる訓練生の遺体、沈むクルーザー……

ここからが絶望の始まりです。




ここからネタバレ含む感想




結論から言うと、まっっっったく救いのない超バッドエンドです。読みきった先には絶望しか残りません。


敢えて言いますが、この作品を最大限に楽しめるのは「人が死ぬのが嫌いな読者」です。

おそらくキャラクターへの愛着や感情移入が強い読者はとても傷つき、ショックを受け、読み進めることが難しくなるタイミングがあるのではないかと思うのですが、むしろその暴力的なまでの裏切りこそがこの小説の醍醐味だと思います。

だからこそ、バッドエンドやどんでん返しが好きな人は勿論ハッピーエンドが好きな人にすすめたい(笑)とことんこの作品を大嫌いになってほしい(笑)


どんでん返しや叙述トリックを用いた作品は、そういうトリックが仕込まれていることそのものが最大のネタバレになるので、往々にして結末に差し掛かる頃まで伏せられることになります。


しかしこの作品、帯にも裏表紙の作品紹介にもはっきり「絶望」「大どんでん返し」って書かれてるんです。それもクソデカい文字で。書店スタッフの感想つきで。


まあわたしもそれに惹かれて買った訳なんですが、読み始める前からバッドエンドであることが分かってるって普通ストーリーを致命的に面白くなくしちゃうと思うんですよ。

最初からここから悪くなっていくと身構えて読む時点で、序盤のほのぼのしたラブコメも薄っぺらく感じるし、むしろ引き伸ばされるほどに「なんかあるんだろ?早く出せよ」とイライラしてしまうこともしばしば。私だけかな。


そもそもどんな物語にも当たり前に起承転結があるものなのですが、本を読むときには多くの人がそれを無意識に忘れるように仕向けているのではないかな、と思っています。

「起」「承」の時点で「転」で起こる事件の存在を認知して読むよりも、事件的展開が訪れることすら予測しない、まっさらで平和な状態だと思い込む方が「承」→「転」へのギャップが大きくなり、必然的に「結」への期待も大きくなるからです。


はじめに結末を明かしているこの作品がそれでもなお読者の覚悟を上回るスケールの絶望を与えてくるポイントは、「キャラクターの重さ」と「時折匂う安心感」ではないでしょうか。

丁寧に作り込まれた魅力的なキャラクターが、物語の展開を通じて散々刷り込まれた設定が、いとも簡単に使い捨てられる裏切り。

起承の作り込みとキャラ立てがしっかりしているため、中盤天才クロエあたりが前に出て敵全滅させて終わり、でも充分満足できるほど完成されています。バッド化展開を完全に忘れてしまうのです。


アンダーからひとり逃げ遅れたクロエは、抵抗するすべもなく生きたままの血肉を喰い荒らされます。

その頃のクロエはかなり丸くなり、気高さはそのままに可愛いげのある生徒になりつつありました。

そもそも前提として“天才”なんです。

そんな、前半主要も主要な立ち位置で進んできたクロエが真っ先に犠牲になります。


さらに悲惨なのはメイファ=リーを好きになった方でしょうか。

このキャラクターは後半近くなるまでほぼ目立たないのですが、主人公が命の危機にさらされる場面を救ってから一気に活躍、魅力を増します。かっわいいんですこれが~~!!

言葉少なな中国系のキャラです。それでいてノリがよく頭も切れる面白い子。

ラスボス的クリーチャーを前にしても動じないパワー型、実際さらっと倒せるだけの実力を持っています。メイファが大太刀を振り上げ飛び上がった瞬間「ああ、ここまで犠牲を出してきたけどようやく終わるんだ。やっと助かるんだ」と安心しきっていました。


さすがにもうないでしょ、これだけ人死んでるし、ラスボスよりメイファのが実力的に上だし、現に今にもメイファが斬りかかろうとしている。そのまま一撃、その一撃で物語は終わるはずでした。

しかし次の瞬間、メイファは大きな触手で執拗に叩き潰されヒトの形状すら失っています。ゲロ吐くかと思いましたよ。



ぞっとするのが、立て続けのシリアス展開を軽く淡々と描く描写のしかた。理解が追い付かず「えっ?」と戸惑うその一瞬の間にはすでに何事もなかったかのように元の文体に戻ります。

それが、人の命の軽さやあっけなさを言葉なしに表現しているのではないかと。



結局、主人公はひとり陸に戻ることができます。

ただし、ここでギブアップしてはいけません。絶対。ラスト一粒、だめ押しの絶望が残っています。

いわばこれが最大のどんでん返し。




これまでの絶望は、全部、全部、全部……


ここまでやるか……



たった一冊の文庫本ながら、最後の最後まできれいさっぱり絶望をしゃぶり尽くすことのできる良作。

「絶深海のソラリス」ぜひ。

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