無地のキャンバスに描かれたはじまりの場所。『近藤玲奈 1st LIVE 〜Listen〜』感想

2021/1/30に開催されました、『近藤玲奈 1st LIVE 〜Listen〜』にお邪魔させていただきました。

以前から応援させてもらっていた声優・近藤玲奈さんの、アーティストとしての初ライブということで期するものがありましたが、彼女のパフォーマンスの魅力がふんだんに詰まった最高のライブでした。

今回のライブは楽曲リリース前のライブということで、レーベルメイトの日本コロムビア声優アーティストのカバー楽曲を中心に歌唱されました。
セットリストはこちらです。

【昼公演 Pop Side】
01. Open Tuning(原曲アーティスト:.lady.)
02. アップルミント(内田彩)
03. Sweet Rain(内田彩)
04. 最後の花火(内田彩)
05. Last Promise(山崎エリイ)
06. 永遠ラビリンス(悠木碧)
07. 帰る場所があるということ(悠木碧)
08. Baby, My First Kiss(村川梨衣)
09. Listen~真夜中の虹(近藤玲奈)
10. 桜舞い散る夜に(近藤玲奈)

【夜公演 Rock Side】
01. Open Tuning(.lady.)
02. afraid...(内田彩)
03. 十代交響曲(山崎エリイ)
04. Unbreakable(悠木碧)
05. Break down(悠木碧)
06. 死線上の華(悠木碧)
07. レクイエム -Requiem-(村川梨衣)
08. はじまりの場所(村川梨衣)
09. Listen~真夜中の虹(近藤玲奈)
10. 桜舞い散る夜に(近藤玲奈)
11. [アンコール] 桜舞い散る夜に(近藤玲奈)

カバー楽曲の公式Spotifyプレイリストも貼っておきます。

変幻自在のカバー楽曲パート

昼公演のPop Sideはアップテンポなポップナンバー中心の選曲でした。
オープニングの「Open Tuning」「アップルミント」でのエネルギッシュなパフォーマンスと客席への煽りは、発声禁止ライブであることを忘れてしまうような熱量がありました。
キャラクターとしてのライブは何度も見させてもらったことがありますが、アーティストとしての近藤さんがここまで場を熱くすることができるなんて、レーベルメイトの先輩の楽曲の力を借りているとはいえ、正直意外なほどでした。

永遠ラビリンス」「Baby, My First Kiss」などにおいては、ボーカルも振り付けもキュートな方向に振り切っていたのが印象的でした。
特に「永遠ラビリンス」のアウトロでは、原曲をリスペクトしたようななかなかにあざとい猫のポーズ(伝わりにくい)をされていたのがそこそこの衝撃でした。
バラエティ配信での罰ゲームなどでそのような可愛いポーズを強要されたときは茶化してその場をしのぐことが多い近藤さんですが、これが、アーティスト近藤玲奈の、ライブパフォーマンスなのですね…(遠い目)

一方、Popと銘打たれていたものの、曲調や歌詞にどこか寂しさや切なさをはらんだ曲もありました。
最後の花火」「Last Promise」などでは他とうって変わって、間奏でも静かに立ち尽くしていたり、物哀しさを感じさせる表情で歌を紡いていたのが印象的でした。
先輩の楽曲を自分のスタイルに乗せて歌うというよりはむしろ、近藤さんなりに1曲1曲の世界観を丁寧に咀嚼してパフォーマンスに昇華させていたようなものだったと思います。


夜公演のRock Sideでは、昼公演以上に更に重いバンドサウンドが楽しめる楽曲が目白押しでした。
(例えば「レクイエム -Requiem-」では、バックバンドの方が7弦ギターに持ち替えたりしていました笑)
ふわふわして不思議な近藤さんのパブリックイメージを、良い意味でかなり裏切るセットリストだったのではないでしょうか。

afraid...」のA~Bメロでは、今までに見たことのないような眼光の鋭さが印象的でしたが、直後のMCで「死んだような目で歌った」と述べられたのは近藤さんらしい表現だなと思いました(笑)
そして中盤の悠木碧さん楽曲・村川梨衣さんの「レクイエム -Requiem-」の重厚な4曲のラッシュは、まさに圧巻の一言でした。
これまで自分が経験してきた近藤さんのキャラソンライブはポップス調の楽曲が中心だったのですが、ここまでハードなロックナンバーを表現して歌いこなす近藤さんの姿は、むしろ想像すらしたことがありませんでした。
本人も「こんなに自由に暴れて歌ったのは初めて」とMCで語られており、もしかすると自分の思い描いていたものとはまた違ったアウトプットがなされていたのかもしれません。

そんなRock Sideですが、激しい姿を見せた先ほどとは一転してバラード調の「はじまりの場所」でカバー楽曲パートを締めます。
今日という船出にふさわしいこの楽曲の歌詞を噛み締めながら歌い上げる近藤さんの声は、姿は、これからのアーティスト・近藤玲奈の無限の可能性を感じさせられるものでした。

アーティスト・近藤玲奈のスタート地点

そして昼夜ともに終盤は、近藤玲奈さん自身の楽曲の初披露となりました。

今回のライブタイトルのモチーフにもなっているデビューシングルカップリング曲「Listen~真夜中の虹」は、はじめて聴くアーティスト・近藤玲奈の楽曲としてはびっくりしてしまったほどに荘厳な楽曲でした。
そして何より、近藤さんのボーカルがその威厳に引けを取らないものだったのです。
カバーパートでは先輩方の楽曲をものにしてパフォーマンスされていましたが、(少なくとも私が予め知っていた曲に関しては)原曲キーで歌唱していたということがあり、もしかすると近藤さんの音域に完全にフィットしていないこともあったのかもしれません。
カバーでも、キャラクターソングでもない、近藤さんの歌声のために作られたこの楽曲は、近藤さんのボーカリストとしてのポテンシャルを存分に引き出していたように感じます。
ここまで近藤さんの歌声に圧倒されたのは、ライブ・音源含めて初めてでした。

そしてデビューシングル表題曲の「桜舞い散る夜に」は、どこか暖かさを感じるミディアムテンポなナンバーで、近藤さんは歌詞を噛み締めながらしっとりと、でも確かに芯のある歌声で歌い上げていました。
心に響くフレーズがいくつも散りばめられていたので、4月のCD発売で歌詞を眺めながら聴き込むのが本当に楽しみです。
これからアーティストとしての道を歩んでいく近藤さんですが、その道程が長くなればなるほど、このはじまりの楽曲は特別な意味を持つようになっていくと思います。
そんなアーティスト・近藤玲奈の歴史のはじまりが、2021年現在の近藤さんのぬくもりが感じられるこの曲で良かったなと思えますし、将来振り返ったときに「桜舞い散る夜に」がはじまりの曲で良かったなと思える未来が待っていればいいなと思います。

アーティスト・近藤玲奈のこれから

1/12にアーティストデビューが発表され、1/30にカバー中心の1stライブを行うという、なかなか普通ではない発想とスピード感でライブが行われていて、このあたりは賛否が分かれるところだと思います。
近藤さん曰く、このアーティストデビューは1年ほど前から準備してきたとのことなので、このタイミングでデビュー発表・1stライブをすることは、何らかの意図のもの行ったものなのでしょう。
日夜多くの声優アーティストが生まれている今、テンプレから外れたプロモーションをすることで目を引くこともあるかと思うので、今後も新鮮な驚きをくれることを期待しています。
(とはいえ、デビュー発表即1stライブ先着チケット販売に出遅れてしまいそこそこ凹んだので、次回からはもう少しびっくりしない感じでお願いします…笑)

コンテンツとしてのライブ、2018年の誕生祭キャラソンライブなどで幾度も近藤さんのライブパフォーマンスには触れてきましたが、アーティストとしての近藤さんはそれらのどれとも異なるものでした。
若干の緊張は見られつつも、ひとたび楽曲に没入すると歌声・表情・動き全てに引き込まれるあの魅力は、ファンの贔屓目を差し引いても、とてもデビュー前のアーティストとは思えないものでした。

まだオリジナル楽曲がほとんどなく、そしてこんなにも多彩なカバー楽曲で魅了してくれた近藤玲奈さんは、これから何にでもなれる無地のキャンバスのようなもののように思います。
近藤さん自身も、「自分から何かをやりたいですというよりは、たくさんのことに挑戦させてもらって、いろんな色になれるようなアーティストになりたい」というような言葉を残されていました。
これからそのキャンバスがどんな色に染まっていくのか、アーティスト・近藤玲奈の行く先を見守らせてください。

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