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有村麻央をプロデュースするには、私の心は弱すぎた話

有村麻央が学マスPのことを好きだとしても、私は学マスPが大嫌いだ。

これは有村麻央のプロデュースをした感想です。


はじめに

学園アイドルマスターのシナリオはプレイしやすく、キャラクターもキャッチーである一方で、少しご都合主義的な部分があると感じます。
それが悪いということではなく、短い育成シナリオを周回するゲームシステムや昨今のソシャゲ事情にいい塩梅でマッチしていると思います。

筋肉を落とし、脂肪と体重を増やす‥。寝たきりで脂質中心の食生活でも送らないと難しいのでは‥?

上記のような深く考えたらダメなんだろうなというシーンもありますが、そこも含めて楽しい学園アイドルマスターです。

朝4時に女子高生がランニングするのは危険すぎるので絶対やめたほうが良いと思いますが‥。(小声)

なにがともあれ、こういった部分も楽しんでいた自分でしたが、流石にこれはどうなんだと思うシナリオがありまして

それが有村麻央の育成シナリオです。

有村麻央について

幼少期からの憧れである「王子様」のようなカッコいいアイドルを目指す3年生。アイドル科の寮の寮長をしていたり面倒見がいい。本人の想いとは裏腹に可愛らしい容姿から「リトルプリンス」と呼ばれ、慕われている。

というのが、有村麻央のプロデュースをする前に知っていた情報です。
菊地真や白瀬咲耶など、過去のシリーズでも登場している、いわゆる王子様系アイドルの系譜に属することから注目度が高い有村麻央。
なんとなくですが、学マスをプレイせず二次創作のみを見ている人も「王子様のようなカッコいい存在になりたいが可愛らしい容姿の影響で上手くいかない」というキャラクター像は浸透している気がします。

この情報だけ見ると有村麻央のプロデュースは、理想と現実の狭間での葛藤を描く、結構王道なシナリオなのかなと考えていました。
よく見るシナリオだからこそ、理想を追い求めて成功ないし破滅するのか、現実を受け入れ前に進むかなど様々な展開が予想できます。
有村麻央はどのような着地点を見つけ、どんなアイドルになるのかワクワクしながらプロデュースを開始しました。

衝撃

親愛度第1話
最終試験敗退イベント

麻央のプロデュースで一番驚いたのがこのスピード感。1回目のプロデュースでここまで進むとは思いませんでした。
あまりの速さに追いつけない方もいると思うので出会いのストーリーから振り返っていきます。

親愛度1話 出会い

理想の存在と身体の成長のギャップに悩んでいることをしっかりと知った上でスカウトに行くプロデューサー。

スカウトのために女子寮に向かうと不審者と間違えられ、麻央に関節技を決められる学マスP。
その後なんだかんだで誤解が解け、スカウトしに来たことを伝えると‥

な、なぜ!?

可愛いアイドルではなく、歌劇団のスターのようなカッコいいアイドルになりたいと伝え、
自分の意にそぐわないプロデュースは受けるつもりはないと言う麻央。
1つ目のセリフの「みんな」という言葉は、友人や先生なども含まれているかもしれないと思うと本当に辛くなりました。

そういった真央の意志は知った上でプロデュースさせてほしいと再度申し出る学マスP、そしてこの人は他の人と違うかもしれないと感じ、受け入れる麻央。
こうして麻央のプロデュースシナリオが始まりました。

親愛度2話 学マスPが感じた、麻央の魅力

スカウトを全て断っている自分に声を掛ける理由が気になる麻央、

そして麻央のモノローグから始まる過去回想、日頃から可愛いアイドルになるように求められることに悩んでいるようです。

困っている後輩を見つけるとすぐに声を掛ける麻央先輩

嫌なことを言われたとしても優しく話す、本当に優しい人です。
この一部始終を見た学マスPは麻央に興味を持ったようで

聞き込みを始めました。
他のプロデュースシナリオをプレイしてて学マスPに「なんでお前こんなにアイドルの個人情報に詳しいの?」と思う場面は多々ありましたが、まさか警察官みたいに足で情報を稼いでいるとは‥。

麻央について調べているとまた人助けの場面に遭遇する学マスP

こういった噂に違わぬ王子様のような振る舞いを見てプロデュースすると決心したと伝えました。

親愛度3話 悪夢

さきほどスカウトした理由について会話の続きです。
具体的なプロデュースの方針を問う麻央。
今まで自分の意にそぐわないプロデュースを提案され続けてきた麻央からすると当然の疑問です。

自身の理想の根本にあるものをきく学マスP。

子どもの頃、かっこいい王子様に憧れて劇団に入り、子役の頃は理想を叶えていた麻央。

ただ歳を重ねるにつれ身体の変化と理想の存在とのギャップが生まれてしまい、劇団をやめることになってしまう。

体の変化の影響で歌劇団のスターになれなくても、
カッコいいボク
を守ったままトップアイドルになりたい麻央。
幼少期から憧れていた歌劇団のスターという夢は、容姿の変化により、具体的にはみんなが言う「可愛い」という部分から閉ざされてしまいました。
可愛い」という言葉が麻央をどれほど苦しめていたのか察するに余り有ります。

現実でも、思うように身体が成長せず、自分の夢を諦めることになった人はたくさんいます。
私の友人にも、ジョッキーを目指していたけれど高校で急激に身長が伸びて諦めざるを得なかった人や、幼少期から男子バレエをしていたけれど身長が伸びず、プロを目指すことを諦めた人がいます。

身体の成長は自分ではどうすることもできないシビアな問題です。

そのような問題と正面から向き合い、自分の理想を叶えようとする麻央は本当に強い人です。
そんな麻央に学マスPがかけた言葉が‥

というもの。
私も麻央と同じ感想です。どういうことなんだ?

「成長して変わってしまった自分を受け入れるのが嫌で、目を背けるために、理想の王子様演じていませんか?」

これほど残酷なセリフはない。
理想の存在から離れていく自分を受け入れることなんて、そう簡単にはできません。
なんなら生涯受け入れられないまま死んでいく人も大勢いると思います。
さらに付け加えると学マスPは彼女をプロデュースすると決心した理由が

王子様のように後輩を助ける場を見て、プロデュースを決心したという学マスP。
麻央からすると他者から否定され続けてきた自分の理想を肯定してくれる存在に見えると思います。
そんな人物から
「成長して変わってしまった自分を受け入れるのが嫌で、目を背けるために、理想の王子様演じていませんか?」
突然ハシゴを外される。あまりにも残酷なセリフです。
そして

それができたら苦労しねえよ!
しかもこの会話、親愛度第2話の会話の続きなのでまだ出会ってから間もない時期なんですよね。
そんな信頼関係で行われている会話と考えると恐ろしいものがあります。
‥‥‥。まだ続きます‥。

お前は人の心とかないんか?
可愛いという言葉が麻央にとってどのようなものであるのか理解している上でのセリフです。
この時点で確信しました、
私は学マスPのことが嫌いです。

憧れの存在と対極のもの。付け加えると憧れの存在になるための障害となっている「可愛い」ボク。
受け入れることは容易ではないでしょう。

よかった。麻央の心を蝕み続けてきた「可愛い」という言葉を安易に使ってるわけではなかったようです。 
でも一体どんなプロデュースをするんでしょうか‥?

確信しました。
私は学マスPのことが大嫌いです。

そもそも麻央プロデュースは「可愛い」アイドルを目指したくないという本人の意を汲んで始まりました。そしてこの会話の正確な時系列はわかりませんが、スカウトの理由やプロデュースの方針を聞いていることから、まだ出会って間もない時期のものだと思われます。

まともな信頼関係を築いていない状態で、可愛いアイドルとしてプロデュースをしないと言っていた人物からの
「まずは、とびっきり「可愛い」アイドルを目指してください。」
というセリフ、まさに悪夢でしょう。

全くもって同感です。

そして麻央がいない場でのプロデューサーのひとり言。
受け入れてくれるといいんだが‥‥‥じゃないんですよ。そんなどちらに転ぶかわからない状況で人のコンプレックスに踏み込むなよ‥。

親愛度4話 悪夢は続く

親愛度4のストーリーです。場面は戻って先程の会話の続き。
他の人と同様に可愛いアイドルになれという学マスP憤る麻央ですが

どうやら認識が違ったようです。

学マスP、女の子に可愛いと言ったら喜ぶと思って言っているなら絶対に止めた方がいい。本気で気持ち悪い。
それはともかく「素のボク」という新しいワードが出てきました。

「はい。あなたは今の自分に目を背け、理想の姿を無理に演じてきました。」

理想と現実とのギャップを埋めるための努力をこんな言葉で表現するなよ。周りからみると不格好に見えたかもしれませんが、本人は真剣に迷って悩んで苦しんでるのですから‥。

カッコイイ王子様への憧れは捨てなくていい、あなた自身のことを好きになってください。

ここから話を始めたらダメだったのだろうか?
可愛いアイドルになれだの、理想の姿を無理に演じているだの、散々傷つけてからようやくまともな言葉が出てきました。

今の自分を好きになれるかどうかもわからないほど自信を失っている麻央を見ると本当に悲しくなります。
ここから段々とゆっくり前に進んでくれ‥。

さきほども出てきた「素のボク」というワード、これがこれからのシナリオのキーになりそうです。

そう、なんだ‥。ボーカルやビジュアルのステータスを上げてトップアイドルを目指すゲーム上、なんかあんまりしっくりきません。

内に秘めた本来の魅力。ふんわりとしたワードなのでこの段階だと具体的なことはわかりません。
ただ文脈的に理想の存在になるための葛藤はそれに含まれないというのはわかります。

ふんわりとした表現やワードが続いた後、「無敵の王子様系アイドル」という強い言葉がでてきました。
麻央もこの言葉は興味を惹かれたようで、初めて笑顔を見ることができました。

「無敵の王子様系アイドル」という言葉が決め手になり、改めて学マスPのプロデュースを受けることを決めました。
そして「無敵の王子様系アイドル」への第一歩として可愛いを極めることに決めた麻央。
親愛度4のストーリーはここで終わります。

この親愛度3〜4のストーリーですが、
今の有村麻央を否定する。
彼女が自信を失くし弱っているところに「可愛いアイドル」になること勧める。
拒む彼女を「素のボク」「内に秘めた本来の魅力」という、聞いた彼女がクエスチョンマークを浮かべる言葉でごまかす。
最後に「無敵の王子様系アイドル」という甘い言葉で説得する。

話の順序の影響もありますが、会話の運び方が洗脳や詐欺のやり口のように思えます。
結果が伴わなかったら責任は取れるのでしょうか。

まとめ


親愛度5以降の内容ですが、女性らしい服を買ったり、ヘアスタイルを勉強したり、宣材写真を変えたり、時々カッコいい一面を評価されたりしながら成長していき、最終的にはカッコ可愛いアイドルとして定期公演で成功を収めます。

結果からするととびっきり「可愛い」アイドルを目指させることは後々の成功に繋がりました。
ただ、麻央が「可愛い」という言葉に苦しみ続けていることを知った上で可愛いアイドルを目指すことを学マスPのように提案できるでしょうか? 

私はできません。
正面からコンプレックスと向き合えと言えるほど私の心は強くありません。

余談

という風に学マスPのプロデュース方針に文句を言いまくってきましたが、では一体どんなプロデュースだったら納得できたのでしょうか。

麻央プロデュースシナリオをプレイしていて感じるのが「可愛い」「カッコいい」という言葉が多くでてくること。
本人が一番気にしていることなんだから当たり前だろうと思うかもしれませんが、「素のボク」という存在を可愛い、カッコいいという言葉だけで表現するのは少し違和感があります。

というのも彼女の魅力って可愛い、カッコいいということだけではないと思うんです。
親愛度2話のように、積極的に人助けをする優しさであったり、

Luna say maybeの2話では後輩を気遣って自分を下げるような発言をする(カッコいい王子様を目指している人の発言だと思うと優しさが際立ちます。)
最高学年かつ寮長という立場からくる大人っぽさであったり、たくさん魅力のあるキャラだと思うんですよね。

こういった可愛い、カッコいい部分以外にもフォーカスして「素の自分」というものが表現されていたら良かったのかなぁと思います。
可愛い、カッコいいだけが有村麻央を構成するものではないのですし‥。

あとは記事内で散々と言っていますが、麻央にとっての「可愛い」という言葉は夢や憧れの存在への障害になっているということをもう少し丁寧に描いてほしかったです。
出会ってすぐの話し合いでとびっきり「可愛い」アイドルを目指すと決定するのは駆け足すぎると思います。

女の子は可愛いって言ってあげたら喜ぶなんて簡単な話ではないのですから。

あとことねを他のモブキャラと同様に物語を進めるための道具のように使うのはやめたほうが良いと感じました。
先に共通シナリオとことねの個人シナリオをプレイしてたこともあって(こんなこと言う子じゃないだろ‥‥)って少し悲しくなりました。

これことね推してる人はかなりきつい内容でしたし

本当に良いキャラクターですし、題材も素晴らしいと思うからこそ、少し残念なシナリオでした。

追記6/22


自分が想定していたよりも多くの方に読んでいただいていることもあり、少し追記します。

まず大前提として「有村麻央は絶対に可愛いアイドルになるな!!」と考えているわけではありません。
また、憧れの存在と現実の自分とのギャップを自覚している彼女がカッコいい王子様を目指し続けることを望んでいるわけでもありません。

自分らしいアイドルを目指す過程で他者から「可愛い」と言われる自分と向き合う必要も出てくると思います。

ただこの長年悩み続けた理想の自分との乖離を助長している「可愛い」という言葉。
このワードをあまりにも軽々しく扱いすぎている学マスP、並びにシナリオは違和感がありました。

このような容姿に関わるコンプレックスにほぼ初対面の人間が安易に踏み込んでしまうとどのようなことか起きるのか想像に難くないです。

プロデューサーとアイドルという関係だから‥という意見もあるかもしれませんが、自分の意志を汲んでプロデュースすると言った人間がその意志と相反する言葉を使ってくるのです。

心を閉ざしても不思議ではないです。

この言葉をすぐ受け入れてしまったからこそ親愛度5以降のシナリオは消化試合というか、なんというか‥。
学マスPのプロデュース方針の答え合わせのように感じてしまいました。

その学マスPに関する話も
有村麻央が人助けをしている姿と過去の資料を見るだけで、

彼女が理想の存在になるために無理をしていて、自分らしさを見失っている。だから一見カッコいい王子様と相反する、とびっきり「可愛い」アイドルを目指させることで自分らしさに気付いて、カッコ可愛いアイドルとして成功できる。

とわかるくらい学マスPは優秀でした!!
さらにプロデュース方針を伝えるために嘘をつけるしたたかな人間でした!!
といった内容。

学マスPがここまで想定していたのかはわかりません。
しかし、想定していないすると「とびっきり可愛いアイドル」を提案したシーンで本当に最悪な人間になってしまうので想定していたと信じています‥。

また真央のジェンダーに関する話もよく議論されていることですが、個人的にはあまり関係のない話だと考えています。そもそも真央が憧れている王子様というのは、女性が演じていたわけですし‥。

キャラ萌えが重視されているゲームですし、キャラクターのパーソナルな部分に寄り添うようなシナリオは期待していませんでしたが、流石に少しついていけないシナリオでした‥。

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