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【最大66.7‰の急勾配】アプトの道を登ってきた

大型連休後半の4連休、特に出掛けるところもないので
おうちでまったりするのもなんだかなあと思い
またちょっと山でも登ってみっかということで
こちらに行ってきました。

みなさん、おはようございます。

こちらは群馬県安中市にあるJR信越本線横川駅です。
時刻は朝5時半です。

これからこの道を使って山登りをしたいと思います。

「アプトの道」

この道はかつて走っていた
信越本線の廃線跡を整備された登山道です。

信越本線の横川駅と軽井沢駅間には碓氷峠という
最大66.7‰(パーミル)という急勾配の峠があり、
この区間を「アプト」という
2本のレールの間にギザギザのレールを敷いて
機関車についている歯車を嚙み合わせて
機関車が車両を押して登っていました。

アプトの模型(碓氷峠鉄道文化むらより)

密着式電気機関車への置き換えと新しい線路が完成したため
1963(昭和38)年にアプト式の線路は廃線となりました。

横川~軽井沢間は1997(平成9)年9月に
北陸新幹線・東京~長野間の部分開業に伴い廃線。
信越本線は横川駅で寸断され
現在横川から軽井沢へはJRの路線バスで行くことができます。

そのかつての線路を自分の足で歩けるなんて魅力的じゃないか!
と思い、ここまで来たわけです。

でもなんでこんな朝早い時間に来たのか。

日中に来ると気温が高くなってしまうことや
連休最終日とはいえ車の往来が激しくて
帰りの移動時間が長くかかるなど
いろんな理由を考えて、この時間なのです。

ただ心配事がひとつ。
それはクマ、くま、熊。

日本各地でクマが街中まで出没するこの世の中。
クマに襲われて人生オワタとなったらAREなので
念のためクマ避け用のベルをAmazonで購入。

2個セットで来て「そんなにいらね~」と思ったけど
せっかくなので2個とも持って行くことにしました。

あとはクマ避けの歌でも歌っておこうか…

※水曜どうでしょう「ユーコン160㎞」より



出発する前にJR横川駅に寄ってみました。

自動改札機が2台
1~2本/hと関東ローカルらしいダイヤ
「野生動物が入りますので、開けたら閉めてください」って書いてあったけど
すでに半開きだった。


■5:45 JR横川駅を出発

横川駅の車庫だったところは
「碓氷峠鉄道文化むら」という施設になっていて
こちらは無事下山できたら行こうとかなと。

EF63電気機関車とトロッコ列車「シェルパくん」

しばらくは鉄道文化むらの横を進む。

途中碓氷峠の関所があるんだけど、住宅地の中にあるので
この時間はさすがに迷惑だと思って寄らずに先に進む。

クマ出没注意のチラシが

地面に石で押さえられている。
やっぱり出るんですね…。

しばらくすると道が線路と並列になる場所に。

かつて信越本線の旧上下線で、
軽井沢へ向かう旧下り線は
鉄道文化むらとこの先にある峠の湯までを走っている
トロッコ列車用として残しており、
いま歩いているのは横川方面の旧上り線。

ここからは住宅もなくなるので
ここで持ってきたクマ避けベルをリュックに装着。
チリンチリン鳴らしながら登っていく。

使用していた信号もそのまま

この線路の上を上信越自動車道が走る。
橋がすごい高いところにある。柱も太い。
よくこんな所に高速通したなあと思う。
鉄道もそうだけど人間の英知と技術ってすごい。


■6:07ごろ 旧丸山変電所到着(横川駅から1.6km)

煉瓦造りの2棟の建物が右側に見えてきました。

旧丸山変電所。
峠越えするために作られた専用の変電所。

右の建物内に置いてある蓄電池に電池を貯め、
左の建物内で交流から直流に変電して放電する仕組み。

交直切り替えが可能な電気機関車になって廃止になったものの
建物自体は国の重要文化財として残している。

変電所の横にはトロッコ列車のまるやま駅があり
峠の湯へ向かう下り(登ってるのに)のみ停車する。

まるやま駅の近くに自転車が捨てられていたんだけど
アプトの道は緊急車両以外の車両は入れません。

峠の湯の手前で旧下り線をくぐって反対側に出る。
天井が低くて身長172センチの自分でギリギリの高さ。


■6:22ごろ 峠の湯到着(横川駅から2.6km)

天然温泉が味わえる峠の湯。
トロッコ列車はここが終着。

トロッコ列車 とうげのゆ駅

この先碓氷湖まで飲み物を購入するところがないので
ここにある自販機は貴重。

隣にはオートキャンプ場があって、何組か泊まっていたので
この辺ではクマ避けベルはいったんはずす。

帰りに寄ってひとっ風呂と思ったのだが
調べてみたら営業開始時間が10時からだった。
戻ってくる頃にはまだやってなさそうなので
今回は寄らないことにした。

碓氷湖名物「力餅」


峠の湯の先を進むと、本格的な峠に入る。
すぐに第1号トンネル(全長187m)が現れる。

とても歴史を感じる煉瓦づくりのトンネル。

でもその先は真っ暗じゃないか。

トンネルの中は照明がついてるはず。
でも点いていない。

まだ電波が通じる場所なので
スマホで調べてみたら

「アプトの道トンネル内の照明は午前7時から午後6時点灯」

(安中市ホームページより)

と書いてた。

うお~これはしくじった!
照明なんて持ってない。

だけどこんなところで1時間も待てない。
なのでスマホのライトを点灯して
意を決してトンネルに入る。


とりあえず足元だけライトを照らして前に進む。
頭の中でインディージョーンズのテーマが流れる。

こんなところでクマに襲われたら一巻の終わり。
そんなことを考えてたら

出口だ!出口だぞみんな!
緊張がほころぶ。

トンネルを出るとほっとする。

でもこれがあと9個もあるのか。
とりあえずクマが出ないことを祈る。

英語でもクマ出没注意喚起


しばらくすると第2号トンネル(全長113m)へ。
ここもお先真っ暗。

先程の第1号トンネルに比べれば短かったけど、やっぱり暗かった。


■6:40ごろ 碓氷湖(横川駅から3.7km)

中尾川と碓氷川の合流点を堰き止めて造った人工湖である
碓氷湖に到着。

下に降りるのは帰りにしようと思ったので
ここは先に進む。

しばらくすると
コーヒーショップの看板を目にする。

看板を見る限りメニューも豊富で
こういう所で飲むコーヒーは美味しいんだろうなあ。

でもやってないよな。
朝6時半だもの。

コーヒーショップの先にいくと東屋がある。

その東屋に黒い影が!

く…クマか!?

おそるおそる近づいてみるとおじいさんだった。
しかもラジオを流して聞いていた。
地元の主なのか?
ラジオを聞いてみるとNHKぽかった。

そんな不思議な仙人の横をスルーして先へ。


第3号トンネル(全長78m)

第4号トンネルを歩いていたら
前の方から人間が会話するのが聞こえてきた。

人だ!人~!

50代くらいのご夫婦っぽい。

朝だけど「こんにちは~」とあいさつしてすれ違う。
この時間に登ってるの自分だけじゃなかったという安心感。

振り返ってみるとトンネルの中で奥様らしき女性がポーズをとって
旦那さんらしき男性がスマホで写真を撮っていた。
楽しそうでよかった。

第5号トンネル(全長100m)

また長いトンネル…ツラい。
でもさっきすれ違ったご夫婦もスマホのライトひとつで
この第5号トンネルを歩いてたし…。

あ~出口が見えてきた。
出口だ、出口だ、わ~い…(疲労困憊)

第5号トンネルを抜けると
アプトの道メインの場所に到着します。

■6:53ごろ めがね橋(第三橋梁)到着(横川駅から4.7km)

明治25(1892)年に建設された煉瓦造りの橋で全長91m。
川底から31mの場所にあります。

橋の上から眺めるとこんな感じ。

国道18号の旧道に降りられる階段があるので降りてみました。
旧道から見たらこんな感じです。

すごい高さなのが見てわかります。
JR釜石線のめがね橋(宮守川橋梁)を見たことあるけど
あれよりも高い。

また階段を上って、アプトの道に戻るのですが

クマだけでなくヒルも出るのか、ここ。
全身インナーを着て肌の露出を最低限にしているから
大丈夫だとは思うけど。

ここから先は12年前に整備された比較的新しい道。

第6号トンネル(全長546m)

ふたたび真っ暗なトンネル内へ。

第5号トンネルよりも長い第6号トンネル。
先がなかなか見えない。

「なんでこんな朝早くに来ちゃったんだろ、俺」と
少し後悔しながら真っ暗な道をスマホのライトひとつで進む。
トンネルの天井から落ちてくる
しずくを避けながら歩くという上級オプション。

しばらくすると光が!
おお!トンネル抜けるか!

と思ったらそうじゃなかった。

蒸気機関車が走っていた頃の名残である
煙の排気口でした。

天井1カ所と横に3カ所、これが2つ。
それでもなんだか生きた心地がするのは気のせいか。

第7号トンネル(全長75m)

第6号トンネルを抜けると
その先に4つの連続したトンネル。

第8号トンネル(全長92m)
第9号トンネル(全長120m)

ひとつずつが短いので気楽に進める。
気になるのはクマとヒルだけ。

第10号トンネル(全長103m)

4つの短いトンネルを抜けるとついに来ました。

■7:18ごろ 旧熊ノ平信号所到着(横川駅から6.0km)

アプトの道の終点となる旧熊ノ平信号所に到着。
ここまで約90分。
片道2時間と言われる道を30分縮めるハイペースで到着w

ここで持参してきた冷やしてきたアクエリアスでのどを潤す。
うまい、うますぎる。
ビールでもうまいんだろうな。

旧熊ノ平信号所は最初は駅扱いで
最初はここで蒸気機関車の石炭や水を積んだり
列車交換をしていたそう。
新線の複線になってからは信号所扱いに。

未だに線路が残っており
廃線当時の雰囲気が残っていました。

この先旧下り線と旧上り線の間を行くことができるのですが
行けない理由がありました。

それは…

クマではなく
サル、さる、猿。
至るところにサル。

猿の惑星にでも来てしまったのか。

新線のトンネル跡にもサル

近づいてサルに襲われることも考えて
この先へ行くのを断念しました。

いちおうクマ避けのベルを鳴らしてみたけど
ぜんぜん逃げなかったら人間に慣れてるっぽい。
サルにエサを与えてる人がいるのかなあ。

さて、またあの暗いトンネルを通って戻りますか…
と思っていたら

トンネルのライトが点いた~!

そりゃそうだ。7時回ってるんだもの。
でも点いた時刻は7:27。
というか、第6号トンネル入る前に7時回ってるのに
ライト点いてなかったし。

これで安心してトンネルを通れる。
でもクマとヒルだけには気をつけよう。

さっき通ってきたトンネルも
ライトが点くと幻想的な景色へと変化する。

第6トンネルで熊ノ平方面に向かっていた
家族連れにすれ違ったんだけど、
(お父さんがマッコイ斉藤さんに似てた)
「熊ノ平にサルいた」って言わなくていいかな…
と思いながらすれ違った。
(あとで鉄道文化むらでこの家族に遭遇)

先程下りなかった碓氷湖に向かう。


■7:50ごろ ふたたび碓氷湖

周りの木々が水面に見えて
水がきれいなことが伺えます。

ここで釣りができるようで
釣り券も売ってて、すでに釣りを始めてる人もいた。

サイドミラーにTシャツをハンガーでかけてた車があったけど
ここで泊まっていたのか…。

湖の周りを20分くらいで1周できるらしいけど
結構足がキテたので諦めて
ベンチで少し休んだあと、アプトの道に戻る。


アプトの道の柵に猿の餌付け禁止の幕が。
やっぱりいるんだな。

先程仙人がいた東屋の前を通る。
まだいた。まだラジオ聴いてた。
コーヒーショップもまだ開いてなかった。


第1トンネルを下っていると
反対側からクマよけのベルを鳴らしてやってくる人がいた。

大学生くらいの男性。
Tシャツ短パンにバッグを背負って走って登ってる。
坂路調教か。


峠の湯から再びトロッコの線路と並走している道を下る。

8時を過ぎてから
ちらほら登ってくる人が出てきた。

中にはゴールデンリトリバー2匹連れて登ってる人もいた。
それに本を音読しながら登る人もいた。ちょっと怖かった。

踏切の信号。「限界」と書いてあるけど、自分の足も限界


■8:45ごろ 横川駅到着

往復約3時間かけて起点にゴール。

トンネルの真っ暗闇に最初どうなるかと思いましたが
なんとか登り切りました。
でも熊ノ平の一番最後まで行きたかったなあ。
それはまたリベンジしたいと思います。

隣の鉄道文化むらは9時に開館するので
すでに数組の家族連れが並んでました。

自分も鉄道文化むらに行きました。
その話はこのあとで。

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