電磁パルス(EMP)攻撃について!

電磁パルス(EMP)の脅威について、防衛省で書かれた文章がネット上にあるのでポイントになる部分を引用しておきます。

文章からは、
電磁パルス攻撃に用いられる電磁パルスには、

高高度核爆発に伴い発生する電磁パルス(HEMP)

高出力マイクロ波(HPM)発生装置が発生させる非致死性の、しかしエレクトロニクスに不可逆的な損失を強いる電磁パルス(EMP)
(以下 p7参照。)

があると言えます。

後者には、テロリストや犯罪者が安価に組み立てることもできるような、スーツケースサイズの高出力マイクロ波(HPM)を発生させる高周波(RF)兵器があり、それは、僅か 400米ドル程度のコストで、1.8GW 級の HPM 出力を持つ RF 兵器が比較的容易に作成できることが明らかになったとされる。

テロリストや犯罪者が、僅か 400ドル程度で電磁パルス攻撃を行うことができると言える。


(GW ギガワットについて参考
地上からマイクロ波ビームを使って飛んでいるロケットに、本格的に飛行エネルギーを供給できるような単位 http://www.al.t.u-tokyo.ac.jp/mwp/ja/research/research01a.html
)

ーー
以下の文章から引用しています。
ネット上にある防衛省の文章なので、やや長めにも引用させていただいています。

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ブラックアウト事態に至る電磁パルス(EMP)脅威の諸相とその展望
- 防衛研究所

一政 祐行氏
(いちまさすけゆき氏 政策研究部防衛政策研究室主任研究官)

以下ではダウンロードが始まると思います。
https://www.google.fr/url?sa=t&source=web&rct=j&url=http://www.nids.mod.go.jp/publication/kiyo/pdf/bulletin_j18_2_1.pdf&ved=0ahUKEwj5rM3-luvWAhXMVxoKHb6gCQYQFggdMAA&usg=AOvVaw1_s7vTXpZdsEsfJkxbh94F

文書名
bulletin_j18_2_1.pdf

(防衛研究所は、防衛省の政策研究の中核として、主に安全保障及び戦史に関し政策指向の調査研究を行うとともに、自衛隊の高級幹部等の育成のための国防大学レベルの教育機関としての機能を果たしています。http://www.nids.mod.go.jp/about_us/index.html
)


p1
近年、安全保障の境界領域上にある問題として、高高度核爆発(HANE)に伴い発生する電磁パルス(HEMP) や、高出力マイクロ波(HPM)発生装置が発生させる非致死性の、しかしエレクトロニクスに不可逆的な損失を強いる電磁パルス(EMP)に対する関心が北米を中心に高まっている。

HPM(電磁パルス) 発生装置が市場で安価に販売され、またその製造や運用に関する知識もWeb上で拡散する中で、テロリストや犯罪者などにより局地的なHPM攻撃が行われる可能性が広く国際的な懸念を呼んでいる。

p2
2005年のハリケーンカトリーナの被害で、電力供給が停止した地域では、僅か数日間のうちに著しく治安が悪化した経験を持つ米国では、こうした事態は肌身で感じられる深刻な脅威だとされ、ことにブラックアウト被害が広域に及ぶ場合、時間の経過とともに電力供給の停止、通信途絶の余波は拡大し、電話、鉄道輸送、無線通信、コンピューターシステム、輸送網、飲料水及び燃料の供給、商取引などの停止といった、国民の生命や財産にも直接影響する重大事態の生起が懸念されている。

p3
EMPの脅威は今日において、大きく太陽嵐(自然現象)、HANE(核兵器)によるHEMP、HPM(通常兵器)の3つに分類することができる。

p6
米国 EMP 委員会(EMP
Commission)が 2004 年に発表した報告書 22 によれば、安全保障上も最も重大な関心が寄せられているHEMP は、地上 40km から400km の上空で、高高度における核弾頭の爆発の結果として発生

電磁衝撃として、電子基板を用いた制御システム、各種センサー、通信機器、防護機器、コンピューターなどの機器の機能を一時的に断絶させ、若しくはダメージを及ぼす。

p7
HEMPのみが今日におけるEMPの脅威というわけではない。実際には様々なバリエーションが存在しており、自然発生によるケースから、EMP テロ攻撃の脅威、そして国家対国家の文脈での EMP 攻撃に至るまで、幾つかのパターンを整理することができる。
本節では、以下 HEMP 以外の EMP 脅威について検討を行いたい。

HPMを発生させる高周波(Radio Frequency: RF)兵器は、近年、例えばイラク戦争でも使用されたと言われている通常兵器である。軍用の RF 兵器は、航空機に搭載して破
壊対象電子機器のあるビルなどの上空で散布し、弾頭にある特殊な高周波発生管からgw単位のマイクロ波インパルス信号を発振・照射する電子回路破壊弾などがあるとされる。また、米国国内では、核抑止力を補う新たな手段として、いかなる攻撃も終結させる、核爆発を発生させない通常兵器型のクリーンな EMP 兵器の開発を促進すべき、との議論 もある。

他方、テロリストや犯罪者が安価に組み立てることもできるような、スーツケースサイズの
RF 兵器についても今日その存在が知られているほか、デュアルユース技術としての医療用機器、例えば結石破壊用の衝撃パルス発生装置などを悪用して、コンピュータや集積回路を遠隔破壊することも十分可能であるとされている。特に前者について

僅か 400米ドル程度のコストで、1.8GW 級の HPM 出力を持つ RF 兵器が比較的容易に作成できる
ことが明らかになったとされる。こうした HPMを発生させるRF 兵器を車載し、例えば秘密裏に航空管制塔や金融の中心街などの近傍でスイッチをON にするだけで、局地的に PCやサーバのデータを破壊し、オンラインの商取引を不通にせしめる、或いは通信や灯火を途
絶させるといった効果を発生させ得ると考えられる。実際に、テロや犯罪事件として RF 兵器
が使用された事例が複数報告されており、こうした兵器によってもたらされる局地的な EMP脅威の存在が犯罪防止やテロ対策の一環として議論されている。

p12
米国議会調査局の報告書では、2004年の時点でロシアと中国がHEMP攻撃能力を有しており、北朝鮮も2015年までに同等な能力を獲得するであろうこと、そして英、仏、インド、パキスタン及びイスラエルも、数年がかりでHEMP攻撃能力を獲得する可能性を指摘するとともに、弾道ミサイル実験を重ねるイランが、先々HEMP能力を獲得することへの懸念を表明している。

p13
再突入体の実証実験が未了の北朝鮮において、数少ない核兵器ストックパイルを有効利用するための手段に、米国本土まで到達可能な弾道ミサイルを用いたHEMP攻撃オプションを示唆する報道もある。また、これは北朝鮮に限ったことではないが、HEMP攻撃が実際に行われる場合、軌道上の人工衛星が、その運用に重大な損害を被る恐れがある。

p18
これまで直接HEMP攻撃に規制をかけるような普遍的アプローチが採られたケースは存在しないと言ってよい。例えば包括的核実験禁止条約や核不拡散条約は、HEMP攻撃を実行しようとする国に対して、それを「非難し汚名を着せる」のに適切な法的根拠を持っているとは言い難い。

p20
EMP脅威とは、ある意味で古くて新しい問題であるが、なかでもHANEによって引き起こされるHEMPは、これまでの核兵器を巡る軍縮・不拡散の取り組みからも抜け落ちてしまった重要課題である。このことを踏まえれば、国家対国家の文脈での今日的なHEMP攻撃リスクを低減するためにも、HANEは核攻撃であるとの共通認識を、まずは全ての核兵器国、非核兵器国の間で醸成することが先決ではないだろうか。このとき一つのアプローチとして、核実験禁止にかかる多国間条約を議論の土台として活用してはどうであろうか。

p21
HEMP攻撃は紛れもなく核攻撃の一形態であり、それは即座に人命を奪うことなく、電力・通信インフラに致命的な打撃を及ぼす非対称的脅威だと見なすことができる。
各国において、EMPに対する社会やインフラの抗堪性の強化であるとか、HANEを想定したミサイル防衛の強化、或いは大規模なブラックアウト事態における多国間での連携といった対応策を講じることが不可欠であることは言を俟たない。しかしその一方で、改めて核兵器の人道的影響にかかる議論の一環としてHANEの問題を個別的に取り上げ、HEMP攻撃を禁止する国際規範の形成を目指すことも、中長期的に見て重要なEMP脅威への対策だと言えるのではないだろうか。




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