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いつまで生きるか、自分の余命を知る方法

※「死ぬじゅんび」というイベントのレポート記事になります。イベントの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

「死を考えるということは、あらためて生きることを考えるきっかけになる」をテーマに、クラウドファンディング、保険や法律、葬儀のプロなどを講師に招き、みんなで最新の「死」にまつわるあれこれを学びました。

人間はいつか死ぬけど、いつ死ぬかはわからない。それは誰もが抱える悩みです。今回のプレゼンではどうやって大まかな自分の余命を知り、それとどう向き合うかを60歳の東大生、吉岡弘隆さんに話してもらいました。

楽天技術理事から東大生へ

吉岡さんは楽天で技術理事などを歴任した後、昨年2018年9月定年退職。同年9月から東大の博士課程に通うことになりました。楽天の定年退職の規定が60歳で、65歳まで延長できたけれど定年退職を決めたそう。

東大の博士課程に通う吉岡さんはまさにパワフル。勢いに溢れる様子で「今は現役の学生なので、学割も使えちゃう」と会場の笑いを誘いました。先月は東京ステーションギャラリーなど東京駅界隈の美術館をはしごしたりするなど学生の身分をフルに活用しているそう。

定年という節目を迎え、「60歳になったということでそろそろ年について考えるようになった」。そこで行き着いたのが簡易生命表だといいます。そう言いながら事前に会場に配られていた平成30年の簡易生命表の読み方について説明してくれた。

簡易生命表とは

平成 30 年簡易生命表は、日本にいる日本人について、平成 30 年1年間の死亡状況が今後 変化しないと仮定したときに、各年齢の者が1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年 生きられるかという期待値などを、死亡率や平均余命などの指標(生命関数)によって表したものである。  
出典:厚労省 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/index.html

「つまり、この表を使うとここにいる人たちが多分100年後にはいなくなっていることがわかったり、今会場に2くらいの子がいるけど、その子がどれくらいのパーセントで何歳まで生きるかなどがわかる。そういうことを今日考えていきたいと思います」

正解のない人生、どう生きる

「ここ数年、LIFESHIFTだとか喧伝されている。これまでは会社員60歳くらいで定年で、というのが既定路線のように言われていた。今はそれがぐぐ〜っと横へスライドしてしまった。これまでのような規定路線、正解がないからこそモヤモヤする」と現在の人生設計の難しさを語る。

吉岡さんは職業としてはプログラマーをやっていたが、当時よくプログラマー30歳定年説が言われていたそう。しかし実際はそんなことはありませんでした。

転職は若い方がいい説もあたかも真実のごとく言われていたけど、それも全く当てはまらなかったのです。すでに時代を先取りして規定路線を外れた新しいキャリア形成を実践していたといえそうですね。

人生設計を見直す

定年後の生活を考えたときに不安や恐怖感を認識したのは3〜4年前。「私は自称プロの酔っ払い。休日は昼から飲んでいた。仕事をしていた時はもちろん平日昼からは飲めないが、定年退職後なら昼から酒を飲むのかも?!それってアル中?!」と不安になった吉岡さん。その自分の将来を「幸せなのか」などと考えました。

さらに、将来について考えを深める契機となったのは今年登壇したデベロッパーのコミュニティDevLOVE Xでのイベントでした。テーマは「それぞれの10年、これからの10年」。そこで吉岡さんは「エンジニア人生と定年退職」というお話をしました。10年後何をしてるのか、それは吉岡さんにとって大きな問いかけでした。

「生きていれば70歳。今N歳ならばN+10歳。そこでたどり着いたのが簡易生命表だった」

簡易生命表から見えてくる寿命と生き方

先月の厚労省が出した最新の平成30年簡易生命表(女性)の生存数を見てみると10万人生まれたとすると、1年間で181人亡くなる。死亡数を見てみると1歳児の死亡数は27人。1歳からの赤ちゃんは死ぬ確率は格段に下がる。表を見ていくと10代まではほとんど死なない。

例えば90歳の生存数を見てみると5万502人。つまり普通に生きていれば半数の人が90歳まで生きる。「自分の感覚でいれば70歳はおばあちゃん。でも70歳の欄を見ると、女性の9割は70代までいっちゃう」と吉岡さんが説明すると「そんなに生きるの?!」と会場はどよめいた。

日本人の女性の7%が100歳まで生きると考えると10万人いれば、7000人。日本は100歳越えの大国になる。

「いつかは死ぬけどいつ死ぬかはわからない。この簡易生命表をどういう人生にしたいかを考えるきっかけにしてほしい」と熱弁を振るった。

東大博士課程に進んだことに関して友人からは「『吉岡さん、ふざけてんの?』と言われたりしている」と笑いながら話す吉岡さん。「機会があればリサーチインターンもやっちゃおうかなと思ってる」と常に新しい挑戦へ前向きです。「たくさん読みたい論文もあるし、たくさん本も読みたい」とやる気に溢れる姿を見せてくれました。

「ぜひ今回のご縁で生きることについて考えましょう!」と締めくくり、プレゼンを終えました。

プレゼン後、参加者からは以下のような感想が寄せられました

「人生100年とか言うけど、自分はそんなに長く生きれないよねと思っていなかったのですが...確率論を見るとまた違うなと。ちゃんと統計みたことなかったので、新鮮でした。いろいろできる気になってきた!」「吉岡さんのバイタリティにただただ感服、、、久しぶりにすんごい人とお逢いすることができました」

吉岡さんの生き方に刺激を受けた人や、予想よりも長く生きるというデータに衝撃を受けつつもそれを知った上で生き方について改めて考えたいという声が多くありました。

このnoteを読んだ方も簡易生命表を見て、一度自分の人生設計をしてみてはどうでしょうか。

<文:若山友佳 写真:T@ka

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