【笑い話】カードダスヒーロー
子供の頃に家の近くにあった、個人経営のコンビニのような店。
汐見マーケット。
近所の子供達は放課後そこに集まる。
そこにあるカードダスにドラゴンボールの新弾が入るのが僕達の一大イベント!
とにかく、ドラゴンボールのキラカードが欲しくて、20円を握りしめて1日一回引く。
当然そう簡単には当たらない。
何枚も出てくるクリリンのカードが憎たらしい笑顔で僕をみてるような感覚を今もハッキリ覚えている。
だけど、毎日引く。
そして、その日は突然やってくる。
店頭に置いてある、たった2台のカードダス。
ガラガラっと、いつもの乾いた音とともに回す度に少しずつ、出てくるカード。
当然、裏向き。
ちょっと隠しながら、店の片隅に行き1人でカードをめくる。
少し後ろから、友達のたかしが覗き込む。
孫悟飯のキラカード!しかも、めちゃくちゃかっこよくて、誰も持ってないやつ。
「うえーー!キラやん!」
たかしが大声で叫ぶ。
その瞬間から僕はヒーロー!
その日中に近所に噂が広まり、いろんな友達や先輩から話しかけられ、見せて!とか、交換しよう!とか、言われ有頂天。
なんだか自分が偉くなったような、人気者になったような扱いはとにかく心地良い。
間違いなく、人生の中でもこんなに周りから注目される事は無かったので、その日は一日中ニヤニヤして気持ち悪かったと思う。
というか、たかしから直接言われた。
次の日、とくに仲が良くも悪くもないし、めったに話しかけてこない先輩が話しかけて来た。
そこそこのお金持ちの先輩は、ギッシリとキラカードが詰まったケースを持ち歩いていた。
その中から、僕の持っているカードとは違う他のキラカード5枚と僕のカードの交換を申し出て来た。
僕は1枚でもこんなに人気者なのに、5枚も貰えるなんて、すぐに交換を心の中で決めたが、こう見えて僕はただのアホではなかったので、少し躊躇うそぶりを見せた。
すると、あと一枚ビックリマンシールもつけて貰えると言う、ネゴシエーションに成功!
その直後、孫悟飯のキラカードと交換して5枚ものキラカードと1枚のヘッドロココが僕の手に入った。
そして、その瞬間僕のヒーロータイムは終了した。
僕はキラカードに、ヒーローの元があると思っていたが、実は誰も持っていないキラカードに価値があり、そこそこ出回っているキラカード5枚とみんな持ってるヘッドロココにはヒーローの元は少しも入っていなかったのだ。
これが、僕が希少価値を知った瞬間だ。
こずるくネゴシエーションには成功したが、僕はただのアホだった。
後の祭りの典型例。
でも、これを活かして今後は絶対にこんなミスをしなければ、安い授業料で済む。
無理矢理、そう思い直す当時の僕の顔にはちょっぴり涙があったとか、なかったとか。
あれから約30年。
大人になった僕の目に飛び込んできたのは、希少価値の上がったビックリマンシールのヘッドロココの金額。
およそ70000円
当たり前だが、僕は今そのヘッドロココを持っていない。
時を経て、僕はただのアホからマジのアホに進化していた。
普通に泣いた。
あの時の憎たらしい笑顔だったクリリンは、ジャンプの看板漫画ワンピースのルフィとなって大活躍してるというのに。。。
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