見出し画像

起業して5年の総括

所要読了時間:5分

今から遡ること約5年。2019年4月、渋谷公証役場で定款認証を受けた。その定款を東京法務局練馬出張所に持ち込み、練馬春日町の建物2階フロア入って右奥の窓口でFIT Trading(エフアイティートレーディング)株式会社の登記申請を行った。初めての出産体験ということで、法人設立手続きを行政書士に委託することはせず、全て自分の手で行った。新卒で入社したアクセンチュアを1年ほどで退職した当時24歳の自分にはほとんど貯金がなく、委託料の5万円が惜しかったのもあるが、とにかく「起業に纏わる全ての体験を全身で味わいたい」という気持ちが強かったことを、今でも鮮明に覚えている。

2019年に創業の春を迎える半年前。2018年11月、アクセンチュアを退職し、私の収入はゼロだった。貯金額は、50万円くらいだったと思う。起業する気で職場を飛び出したものの、在職中は100%コンサルの仕事に向き合っていたので、当然独立後に仕事は一切なかった。まず退職後にやったことは、代々木上原に借りていた家賃12.5万円のワンルームマンションの解約と実家への引っ越し(固定費削減)、日銭を稼ぐための仕事探し(収入確保)である。あと、免許合宿にも行った。余談だが、埼玉県鴻巣市で受験した運転免許の筆記試験に一度落ちた。隣のヤンキーたちは、普通に合格していた。。

完全なゼロからのスタートを切って、初めてFIT Trading株式会社として売上を上げたのは、2019年7月のこと。同年4月にドイツのフィットネス展示会で販売権を仕入れたBODYGEEが、ようやく1台売れた。自社オフィスはないので、商談は恵比寿駅近くの上島珈琲でやった。そこで、記念すべき当社初の売上高(90,727円)が生まれた。自分で仕入れて自分で売ったあの感動は、きっと一生忘れないことだろう。ちなみに、当時まだ法人口座が開設できておらず、お金は私の個人口座に振り込んでもらった。住信SBIネット銀行に法人口座の開設を断られるほど社会信用がなかった創業時のエフアイティーと初取引をしてくださったのは、当時彼もまた無名だったバチェラー4の黄皓(こうこう)さんである。

そんな懐かしい創業の日々から5年の月日が経ち、当社の平均月商は2,000万円を超えた。独立して9カ月、がむしゃらに働いてようやく売り上げた9万円と同じカネである。従業員も増え、色々悩みも増えた。会社のために日々頑張ってくれている社員には感謝の気持ちで一杯で、そんな彼らを幸せにできているか、うちに来て働くようになって良かったと思ってくれているか、いつも不安で、ずっと胃が痛い。起業当時と比べて、少しばかり余裕ができた自分のお財布事情から得られる安心感より、ヒトの問題で生まれた不安感の方が大きいように感じる。社員やアルバイトスタッフが退職する時は、本当に心が抉り取られるような痛みを感じる。自分がやっていることは果たして正しいのか、常に自問自答する日々。夜は眠れないのが当たり前になった。

眠れぬ会社経営者の私にとって、唯一の救いがお客様の笑顔と売上である。創業期からお付き合い頂いているお客様から感謝のお言葉を受けたり、シュアジムで楽しくワークアウトをしている会員様の笑顔を見ると、自分のやっていることは間違っていないのだと、勇気を貰える。売上が上がると、今月も皆に気持ちよく給与が支払えると、一瞬だけホッとする。お客様の笑顔と売上は、私にとってある意味「魂の点滴」みたいなところがあって、これがあるから、不安や苦しみの中でも前を向けるし、闘志を燃やし続けることができた。志を高く、魂を汚さずに自分を保つことができた。

今年4月、練馬春日町の登記窓口で産声を上げたFIT Trading株式会社は創設5周年を迎える。マシン販売、内装工事、24時間ジム事業を展開し、たくさんの素敵な仲間に出会うことができた。これまでノンエクイティ、自己資金と銀行借入(連帯保証人は私)を原資に、すべての財務リスクを私個人で請け負って事業投資を行ってきたが、個人保証が外れる6年目以降は外部資本の力も借りて、より大きくコトに向かいたいと思っている。今までは、正直なところ経営者としての自分の在り方や会社のビジョンにまだ迷いがあり、そんな中途半端な心意気、精神状態で人のカネを扱うことはできなかった。しかし、顧客や従業員との対話を重ね、年商が2億円を超えた辺りから、ようやく自分が為すべきことが見えてきた気がして、これ以上コトを先送りにすべきではないと、覚悟を決めた。自分を信じて付いて来てくれている社員のために、公正名大な目標を掲げ、真に公益に資するに足りる十分な規模で、事業を展開しなければならない。自己資本と私の連帯保証付き借入の中で投資範囲を抑え、最悪自分だけ破産して死ねば良い、という小さな考えでは、社会に対して責務を果たせない段階に来たと思っている。

起業して5年の総括。初めの3年はほとんどコロナ渦だったのもあり人を採らず、1人社長として年間売上5,000万円を目指し、それを達成した。創業3周年を迎えた2022年4月に社員第一号の小畑さんが入社し、そこから2年間、会社の売上も従業員数も倍々成長してきた。1人社長を3年、零細オーナー企業経営を2年、合計5年の起業家ライフは、端的に言って「最高」だった。起業して5年、色々な経験を積み、お客様や従業員に育てられ、29歳にしてようやく自分が人生をかけて取り組む仕事、志が定まったと感じている。よくX(旧ツイッター)などで「30歳成人論」のような言説を見るが、本当にその通りな気がする。22歳で大学を卒業してすぐに人生をかけてやりたい仕事を見つけるなんて、ほとんど不可能。もしこの記事を見ている就職活動中の学生がいたら、安心して欲しい。自分がやりたいことなんて、そう簡単に見つからない。だからこそ探し続ける、価値がある。

最後に、新卒の尖り散らかしていた阿部の面倒を見てくれた前職アクセンチュアの先輩方、長くエフアイティーをお支え頂いているお取引先企業の皆様、そして何より、毎日現場で命を削って働いてくれている当社従業員の皆に、心より感謝の気持ちを伝えたい。まだまだ自分に至らぬ点が多いことは分かった上で、私はこの身が果てるまで、意味のある仕事を追求し、社会全体にとって価値ある会社、商品、サービスを作っていく心構えである。皆様のご協力・ご厚意に恥じぬよう、脳が千切れるまで思考し、生血を沸騰させながらコトを興していきたい。そのまさかを、常識に。気高く、強く、一筋に。

FIT Trading株式会社
代表取締役 阿部信太郎


サポートしてくれた方全員に、六本木ヒルズのスタバで阿部君のおごりでコーヒー飲める券をプレゼントしちゃいます。サポート額は問いません。