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「あなたの提案は、一言でいうと何?」

学生時代、超多忙な経営者の方のもとでプレゼンテーションの訓練をする機会に恵まれたことがありました。想像を絶する忙しさのなかであるにも関わらず、暖かい指導をしてくださった彼女には感謝してもしきれません。今考えると無礼極まりないのですが、当時彼女のお家でベビーシッターとしてお子さんと遊びながら彼女の帰りを待ち、帰宅後「数分でも構わないのでFeedbackをください」と図々しくもお願いする、という手段をとっていました。彼女は疲れている中、やっと帰宅したところだというにも関わらず、日々、愛のある指導をしてくださりました。

その中で言われた言葉で、5年たった今も頭の中で繰り返し聞こえてくる言葉が「あなたの提案は、一言でいうと何?」でした。当時作成していたプレゼンテーションは提案型のものだったのですが、10分間のプレゼンを通しで発表した後に、この言葉を言われました。

当時、「今話したじゃないか」と思うと同時に、「伝わらなかったのか」という失望と、「一言で言えるほどシンプルじゃないし・・・」と混乱したことを覚えています。

そして、伝えたいメッセージが自分自身の中ですら、端的にまとまっていないという事実に愕然としました。「だからダメなのか」と心の底から納得しました。

その後、大学を卒業し、会社に勤める今、この言葉は自分で自分に確認する合言葉になっています。人事として業務する中で、入社者へプレゼンテーションを行う時、育成を加速する仕組みづくりを事業所長に提案する時、「この時間で最も伝えたいことは何?」「これによって起きる1番の変化は何?」と自分へ問いかけています。

しかし、まだまだその姿勢が足りず、先々週、仕事で失敗をしました。原因は「伝えた気になっていたことが伝わっていなかった」ことでした。新たな取り組みを提案・実行したのですが、事前に最高意思決定者に実施事項・それに伴う変化・具体的な進め方をお伝えし、合意をとって進めるように手配していました。加えて、その事前報告時は、口頭だけでは伝わらないだろうと、A4 1枚に概要を記述、それを見せながら読み進めるように工夫しました。

しかし、初見で1回読むだけでは理解できないまとめになってしまっていたようで、その場では合意を得たものの、その後7割進めた段階で同様の最高意思決定者からストップがかかりました。振り返った今、途中の経過報告が不十分だったことも問題でしたが、何よりも、初回の合意形成時に「これに伴う変化は何か?」を一言で伝えられるまでに整理できていなかったことが悪かった、と反省しています。

そして、「一言でいうと何?」の威力を改めて感じました。

安宅和人さんの名著「イシューからはじめよ」のエレベーターテストにも通ずる部分だと思います。

...正直なところ、当時いただいた指導は決して生ぬるいものではなかったので、帰りの電車、意志に反して脚が勝手に震えたり、涙を堪えられなくなったりしたこともありました。けれどもそれだけ手加減なく、20歳の若造に向き合ってくださった彼女の愛を、こうして月日が経った今も思い出す今日この頃です。

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