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【レポート②】教育分科会|伊藤学司氏×岩本悠氏

今回からは各分科会のレポートをしていきます!1日目の午後に教育、観光、健康・福祉の3分科会。2日目の午前に食と農、テクノロジー、まちづくりの3分科会が同時開催でしたので、気になる分野の時間かぶっているという方も多かったと思います。各分科会の様子を一緒に振り返ってみましょう。

さて、第1弾は、教育分科会です。

教育分科会 10月8日(土)

本分科会は、ゲストお二方によるスピーチ及びトークセッション、ゲスト×協賛企業×参加者によるワークショップの2部構成で行いました。

まず、本分科会のテーマは、

「本当に良い教育とは何か」

このテーマのもと、高校生から社会人まで総勢40名の熱い議論が繰り広げられました。

(テーマ設定の背景など詳細はこちらから。https://note.mu/shinshu2030/n/nd673031b1c4a)

続いて、本分科会のゲスト並びに協賛企業として参加をいただいた2社のご紹介です。

第1部① ゲストトーク

第1部、ゲストによる講演、ゲストトークでは、分科会のテーマのもと、これまでの活動や今実際に行われていることなどをお話しいただきました。

まず、第1回の信州若者1000人会議から参加をし、今年3月まで長野県教育委員会教育長を務められていた伊藤氏から始まりました。

ゲストトーク① 伊藤氏

「子供たちは未来を生きる」

「これから社会が大きく変化し、多くの仕事が自動化される。その時、どうするか。」といった問いかけがなされ、スピーチがスタートしました。

「これからの時代、求められる能力とは」

全国学力学習状況調査から知識型問題では正答率が高いにもかかわらず、活用型問題では正答率が低いというデータを提示し、今求められている能力は、「生きて働く知識・技能の習得」に加え、「未知の状況にも対応出来る思考力・判断力・表現力の育成」であるとしました。さらにこれからの新しい時代に必要となる資質・能力は「学びに向かう力・人間性の涵養」であるとしました。

「信州学」

今年よりスタートした「信州学」についてもお話ししていただきました。「地域について自分で興味を持ち、調べる。」さらにそこから、「地域の課題を発見し、地域を良くしていくには、ひいては社会を良くしていくには…。」という思考に発展していくことが期待されている「信州学」。座学だけではなく、プロジェクト的学びをも通し、深い学びの機会を提供している「信州学」はまさに、これから求められている力の育成が期待されていると言います。

「学校そのものをアクティブに」

学校そのものをアクティブに、より地域に根ざした教育を目指している白馬高校の取り組みを紹介いただきました。長野県白馬高校では、新たな学科である観光系学科を設置し、岩本氏が島根県隠岐島前高校(後述)で行われた事例を参考に、新たな取り組みを行っていると紹介されました。

「人口減少による地方消滅のピンチな今だからこそ、価値観の転換からチャンスへ変えていこう。ぜひ、信州で学ぼう!」という力強い言葉とともにスピーチが締めくくられました。


続いて、島根県立隠岐島前高校の魅力化事業に従事され、現在は島根県教育魅力化特命官としてご活躍されている岩本氏のスピーチです。

ゲストトーク② 岩本氏

「子どもと地域社会の未来をつくる 〜魅力ある教育へ〜」

教育は「子どもに未来を生きる力を育む場」でもあり、「地域社会に未来を活きる力を与える場」でもあるとし、後者に着目した岩本氏は、前職の際に訪れた隠岐島前地域の実態に目を向け始めました。学校の存続の危機に対して、学校だけでなく地域が向き合っていくことが大切であると考え、地域社会の作り手である中学生(子ども)が「行きたい」、在校生や卒業生が「行って良かった」、さらには地域も「活かしたい」、教員も「行きたい」と思えるような「魅力」ある学校づくりを目指し、高校魅力化プロジェクトが始まったと述べました。

「仕事がないから帰れない」から「仕事をつくりに帰りたい」

岩本氏は、「地域社会のつくり手(地域企業家的精神×グローカルマインド)を養えるような人材を育てるという方針をまずは固めた」と言います。これをもとに、「学校の設備は不十分でも、地域の教育資源を活かす、学校と地域を結びつける知行合一の学びを目指し、自己成長と地域貢献の循環を大切にしている」と述べました。

「存続の危機にあった高校が、今や島根県内で推薦入試倍率1位に」

地域と社会と自分の未来を考えるキャリア探究学習の導入や海外研修による世界での体験、地域の解決策を立案し、実践するプロジェクトなど教室での学びを活用し、実践から学ぶこの取り組みは教育を通じた地域の持続可能性として現在、注目を浴びているといいます。

さらに現在、「あの人だからできた」、「あそこだからできた」という問題を突破すべく、さらなる展開を目指し奔放していると述べスピーチが終了しました。


第1部② トークセッション

続いて、ゲストに質問をぶつけながら、さらに2人の立場の違いからそれぞれの意見を伺うゲストと参加者を巻き込んだトークセッションが行われました。

◯参加者(社会人):「教育や学校は子供が一番大事ですが、その中で教員が軽視されていないでしょうか。学校が魅力的な場であるためには学校の先生が幸せであることをどれくらい大切にすべきであると考えますか。」

◇伊藤氏:「教育は知識を教える面もあるが、大人の輝いている姿を見せることの効果も大きいと考えます。しかし先生がただ好きなままにやっていいということにもなりません。学校の先生は学びの変化の中で大きく戸惑っている事実もあります。自分が身を置いていた学びのプロセスと現在のニーズが一致していないという苦しみもあります。それを歓迎する人も、忌避する人もいます。某高校の先生で当初忌避しているタイプの人がいましたが、今はその人がだんだん楽しそうに今求められる学びのスタイルに挑戦している姿も見えました。アクティブラーニングを通じたペーパーテストの点数向上もみられます。学びのモチベーションを与えることが重要ではないでしょうか。先生は、そういう点に面白みを感じていってほしいと感じます。」

◇岩本氏:「協働性、創造性のない教員のもとで協働性、創造性ある子供が育つプログラムの像は見えないと考えます。しかし、今はなんでも教員に求められすぎではないでしょうか。教員にゆとりがなく、創造的になれない、かつ地域ともつながれません。学校の仕事を「仕分け」すべきではないでしょうか。学校だけでやるべきこと、地域と一緒にやるべきこと、地域が自分でやるべきことを整理していくことで効果性が高まっていくのではないかと考えます。教員が本来力を注ぎたい場所に注力し、それを地域がバックアップするような学校のあリ方を自分たちは目指しています。」

◯岩本氏:「長野県の教育のすごくいいところとこれからの課題は何ですか。」

◇伊藤氏:「長野県の強みは島根県と共通しています。それは公民館活動の活発さです。公民館を拠点にした地域での活動=ソーシャルキャピタルがすでにあります。さらに、信州型コミュニティスクールの構想も長野県にはあります。さらに長野県は、全国でも進んだキャリア教育の実践のある県です。地力はあるので教育関係者が納得できるように目標を設定・共有していくのが大切であると考えます。」

◯参加者(高校生):「学校の中で「私、これやってみたい!」という「やりたい!」という思いを実現していくにはどうすればよいでしょうか?」

◇岩本氏:「学校の中での空気や風土って大事だと思います。崩れたところで盛り返すには、伸びたい子達を徹底的に伸ばしていくことが必要であり、その子達が下方への同調圧力を出す子達を逆に引っ張ってくれるかもしれない存在であるので。」

◯参加者(大学生):「今、キャリア支援の活動をしています。長野県はキャリア教育に優れていると先ほどおっしゃっていたが、具体的にどこが優れているのですか。」

◇伊藤氏:「「キャリア教育をみんなでやろう!」と取り組んだ過去があります。その際、一部の先生と学校とのあいだでの意識差のようなものがあまりなかった点であると思います。さらに「これからはキャリア教育」となって火がついてからのスピードが凄かったんですよ。」

非常に限られた時間ではあったものの、数多くの質問が飛び交い、さらにはゲストお二人の多様な観点からのお話は盛り上げを見せていました。そんなインプットをもとに、このあとワークショップが行われました。

第2部 ゲスト×協賛企業×参加者によるワークショップ

第1部でのインプットを受け、はじめに参加者同士で今考えていることや思ったことを振り返りました。

続いて、ゲストや協賛企業を含め、会場にいる人たちと一緒に考えたい問いを一人一人紙に書いてみました。

書き出した問いを全体に共有し、仲間を集めて話したい人を募ると10名以上が名乗り出てくださいました。関心が近い人同士でグループをつくり、ディスカッションをしました。

「キャリア教育は必要か?」「学校と地域がつながるには?」「変化しても残すべき教育とは?」などの問いがあげられ、自身の経験を踏まえて話したり、今ある自分の立場では何ができるだろうかと真剣に考えたりしている姿が印象的でした。

ワークショップは、それぞれが自由にグループ間を移動しながら、問いを切り口にして話し合っていました。話は尽きないようで、もっと話したい空気を残しつつ、最後に記念撮影をして締めくくりました。

分科会担当者の感想

ここからいよいよ始まるんだなということを強く思った時間でした。あの場でディスカッションしたこと、ゲストのお二人からいただいた言葉、新たにできたつながり、深まった想いをどう繋いでいくか。大きな変革期の只中にあり、予測が難しい未来だからこそ、こうだと思うことを信じて行動にし続けることが本当に大切だと思っています。集まってくださったみなさんの教育に対する問題意識や関心の高さが、一体感を生み出していたように思います。ワークショップ中には、ひとりひとりの中にある想いを共有することの大切さも改めて実感しました。本当に多くの気づきをありがとうございました!これからも信州というつながりの中で、教育のあり方を一緒に考えていきましょう。

(文責:遠山・工藤)

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