見出し画像

チームでつくるチームラボ

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論Ⅱ 第6回(2021年5月17日開催)チームラボの発起人の一人であり、取締役である堺大輔さんの講演を聴講した記録を残します。

チームラボの取締役でありDirector、Co-Founderでもある堺大輔さんは1978年生まれで北海道出身。東京大学に在学時代は、ヒューマノイドロボットのウェアラブル遠隔操作システム関する研究を行い、大学院卒業後にチームラボを起業、主にソリューション事業を担当されているそう。

チームラボは、日本のみならず海外でもデジタルアートの領域では相当有名な会社だと思うが、アートだけではなくソリューション事業も結構しっかりやっている会社というのに驚く。現在、700人の従業員がいて、その7割がエンジニア、その他はカタリストと呼ばれ、作る人の「媒介者」として、あくまでもエンジニアをリスペクトするカルチャーがあるモノづくりの会社

冒頭に、オフィスの紹介をしてくれたが、どうやったらモノづくりをしやすい環境を作れるのかについて、とことんこだわりを持った環境づくりを行っている。印象的だったのが、ホワイトボードを使わないということ。何か書きたいときは、メモデスクというテーブルの上が紙になっているところに書きながら考えたり議論したりできるそう。ホワイトボードだとどうしても「みんなでフラットに」考えるということが起こりにくく、誰かが発言して誰かが書くという構造ができやすいということ。とにかくちゃんとしなきゃいけないっていうことをできるだけ排除して、気軽に参加しやすいとか、横が何をやっているかがわかって気になったら参加できるとか、そういった遊び的な要素をふんだんに取り入れている。発言しやすいとか、集まりやすいとか、かしこまってちゃんとしなくてもアイデアが出しやすいというオフィス環境そのものをデザインしている。

チームラボといえば、もちろんお台場のボーダレスとか豊洲のプラネットとか、常設展をシンガポールや中国をはじめとして世界中に展開しているデジタルアートの集団としてとても有名。

誰かスター的なアーティストがいて、それぞれのメンバーが個性を出し合ってアート作品をつくっているというアプローチではなく、あくまでもチームでつくるということにこだわっている。チームで何かを成し遂げたりつくることが好きな人しか採用しないと言い切る。さらに、既存のアートの概念をデジタルを活用することでリフレームしている。アート鑑賞といえば「1対多」での一方向的なコミュニケーションになりがちだが、デジタルを活用することで物理的な境界を取っ払い、参加者がいることで、他者がそこに存在することでそれがポジティブな存在となるようなインタラクティブなアートを作っている。

チームラボがモノづくりをする上で大事にしていることは、「積み重ねていくこと」。お台場のボーダレスも500台のサーバーが動いているそうだが、大規模システムを作りこむノウハウや技術をどんどん蓄積していく中で「進化」させていく。ゼロからイチを起こすことだけを行う集団ではなく、起こしたイチを積み重ねて進化させていくことを重視している。

その大規模のシステムを開発運用をほぼ内製で行っているとのことでしたが(すごい!!)、それを可能にしているのがソリューション事業での経験がいきているという。ソリューション事業はBtoB事業なのでチームラボがやっているということは消費者からはわからないが、例えばりそな銀行のアプリやANAのマイレージバンクのアプリ、JR構内の自販機など、普段何気なくつかっているユーザーインターフェースをチームラボが手掛けている。

一見とても華やかに見えるデジタルアート集団だが、大規模かつ高い品質が要求されるクライアントワークを丁寧に行う実装力、愚直に実験しながらモノづくりのクオリティを上げ続け、チームとして進化し続けるモノづくり集団の強さみたいなものを堺さんのプレゼンから感じました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?