演劇

妹が演劇をしていたので、何度か舞台を見に行ったことがある。
どの舞台も妹には良い役が当てられていて、1回は主役だった。
主役だった舞台の脚本は書き下ろしで、姉の目から見ても彼女に合った役だと感じられた。脚本を書いたのはプロの俳優さんだったと聞いている。やはりプロの目は鋭い。

妹の演技は、素人目に見てもそこまで上手いわけではなかった。上手い子もいればそこまででもない子もいる。アマチュアなので仕方ない。
その中に、群を抜いて上手い男の子がいた。そこまで出番が多いわけではなかったが、出てきた瞬間に目を奪われた。
ああいう子を「舞台映えする」と言うのだと思う。酒飲みの世捨て人の役で、歩き方から役になりきっていた。声もよく通るし、目線の動かし方や指先の動きに至るまで役そのものだった。

その子は劇団に入ったと聞いた。今はどうしているのか知らない。調べようにも、名前を忘れてしまったので調べようがない。
2020年春、社会のさまざまなものがストップした頃、ふと彼のことを思い出した。彼は舞台に立ち続けていられているのだろうか。
苗字しか思い出せない舞台俳優の今を想う。幸せであれ。

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