総会メモ ips2020株主総会

はじめに。
極力聞いたままを意識して整理しましたが、表現や言い回しについては文字起こしの都合上、変更した部分もあります。また、その内容を保証することはありませんし、一部主観が入っておりますこと予めご了承ください。

会場ではマスク着用、アルコール消毒、およびスタッフによる検温チェックの後、会議室に通されました。長机に1人で座るなど、間隔をあけた対策が取られていました。
 
当日の出席株主は30名程度、9割程度が男性、若い方が多かった印象です。
5分前に役員が、次いで宮下社長が着席、定刻どおり午前10時に開会しました。
 
冒頭、社長より「コロナ感染対策として、通常とは異なり、出来るだけ短縮し議事を進行します」との報告がありました。
 
先ず、招集通知に沿い、前年度の事業報告を簡潔に、その後、営業面での対処すべき課題について説明が行われました。大部分が国際海底ケーブル調達の経緯、および今後の展開についての説明に割かれました。
 
■要約抜粋
・フィリピンに展開する数ある海底ケーブルのうち、C2C回線だけが特殊なケースで、国際区間は外資(Telstra)が運用、陸揚局よりマニラ市内までの国内区間は大手2社のうち1社(Globe)が運用しているというもの(他回線は全て大手2社が関与)。
今から10年前に敷設したものの、料金面での交渉がうまくいかず使われていなかった回線であり、予てより目を付けていた。
 
・通常、フィリピン→香港、シンガポールのケーブルを新設すると約200億かかる。
本件は、残りの寿命が15年とのことで、大幅なディスカウントによる取得が実現した。

・これにより、CATV業者は当社の独自回線を使用し、一気通貫で香港やシンガポールのIXまでトラフィックを運ぶことが可能となり、また当社としても大手2社への依存度が大きく下がることで、CATVに対し競争力のあるサービスの提供が可能となった。
(WIN―WINの関係)

・このケーブル取得により、当社で取り扱っている約20倍の生成力を得ることができ、InfiniVAN(以下「IVAN」)の事業についても活用が可能となる。これまで、長年続いてきた大手2社の寡占状態から一つ突っ込んだ形として、「第3のキャリア」として我々の存在が注目されて行くものと期待している。
 
また、この回線の活用については、以下3点を中心に考えている。
IVANへの活用…もう少し積極的、広範囲での営業活動。
地方展開。将来的な所得水準の向上を見越し、可能性のある先には積極的にトラフィックを取って行く。
CATV事業者は未だ同軸ケーブルを使っている先が結構ある。
これを光ケーブル、若しくは5Gを活用した高速通信にアップグレードし、パートナーとして協業していくビジネスを展開していく。
 
■質疑応答
質問には、全て社長が回答しました。
一つ一つ、丁寧に説明されていたのが印象的でした。
Q1
貴社はフィリピンで通信事業をされて、レーシックなどもされてすごく儲かりやすい事業を展開されている印象をもっています。
海外通信事業であればCATV事業者の「裏方さん」である一方、今後5Gの取得により「表に出る」キャリアを目指すという考えもお持ちのようですが、今後どのような立ち位置でフィリピンの通信を拡げていくのか(表に出て行くのか、裏方に徹するのか)。
また、5Gについては、大手競合が同様の展開をしていく中で、勝算はあるのだろうか。
社長のヴィジョンをお聞かせいただきたい。

フィリピンの通信事業に参入したのが2012年。CATV事業者への再販事業を展開してきたが、更なる拡大のためIVANを立ち上げた。
イメージとしては、言われている「裏方」が海外通信事業、一方IVANの法人事業が「表向き」というビジネスと解釈した。今後もどちらということなく、この両輪で進めて行くつもりでいる。また、IVANについて、「何故、法人に特化しているか」というと、単純に「単価が高い」から。個人向けは、今のところはCATV事業者に直接売ってもらった方が良いという考え。
 
また、レーシックの話が少し出たが、この事業の始まりはフィリピンの方に美白の化粧品を販売したのがきっかけ。現地の所得水準の向上により、レーシック事業を展開してきた。この分野は最終的に医療インフラ、例えばリスクの少ない画像診断といった予防治療ビジネス(人間ドッグのようなもの)への参画を考えている。
 
5Gについて、周波数は今のうちに取っておかなければならなかった。実は、既に枠が決まっている。当社は収益率の高い所、商業地域などに特化するスタイル。5Gについても、密度の高い、所得水準の高い所に特化し、CATV事業者との協業によるビジネスを模索していくことで商機を見出していきたい。
 
Q2
(決算短信より)今期通期営業利益が17億となっており、海外ケーブル取得による利益拡大効果と見ているが、これは継続的なビジネスになるのか。また、上半期が11.5億に対し、下半期が5.5億。来期以降どうなるのか株主として気にしている。
 
 

今期業績予想が上期偏重であることについて。
決算発表の時期においては、コロナにより営業活動が停止した状態であった。そのため、来期計画を作成するにあたり、売上が確定している部分のみを予想して開示した。
今後、フィリピンの状況が緩和され、営業活動が復活すれば、下期の数値、または来期の予想も固まってくるという認識でいる。修正すべき場合は適切なタイミングで報告したい。
 
Q3
長期的なフィリピンの経済の成長によって、通信事業のマーケットは期待しているのだが、その成長余地はどれくらいあるとお考えか、また、どのようにシェア拡大をしていくのか教えてほしい。
 

IVANの現在のシェアは推定1ケタ%、しかも前半くらい(笑)。
まだまだ伸びる余地はあると考えている。特にCATV事業者へのインターネット回線については、今後所得水準の向上により大きな期待が持てる。
彼らの売上構成について、本業のケーブル収入とインターネットサービスの構成比は40:60。ブロードバンドの需要はものすごい勢いで膨らんでいる。
既存の大手2社の顧客がCATV事業者に切り替えていくこともあるし、新たな顧客が生まれることもある、魅力的なブルーオーシャンマーケットであると捉えている。
具体的な数値についてはご説明できないが、まだまだこれからのマーケットであることでご理解いただきたい。
 
Q4
在留フィリピン人関連事業について
日本は特定技能職として派遣を採用していく方針であり、一方、フィリピンは世界でも有数の人材派遣国である。このような潜在的な需要と供給がある中、この事業を今後どうするのか。新しい展開を考えているのか。
 

この事業を開始したのは10年前。当時は積極的に外国籍の方を採用する時代ではなかった。
昨今、積極的に採用する土壌が出来つつある中、当社はIT人材に特化した事業を模索しているが、正直苦戦している。
今般、収益性の問題より、母国語の新聞、および放送事業について3月末で撤退した。赤字部門はコストカットし、伸びる部門にリソースを注ぐという考え。当部門は、もう一度方策について模索していく考え。
 
Q5
2点質問。
ミンダナオの敷設工事について現時点での完成時期、および売り上げの計上時期について教えていただきたい。
国際海底ケーブルの使用権取得について、フィリピン国内でこのニュースはどう受け止められているのか。CATVの評価や大手2社をはじめとした競合の反応は?
 

ミンダナオは右リング(東側)と左リング(西側)で時期が変わる。
右リングは「ダバオーカガヤン・デ・オロ」区間となり、7月中に開通できそう。
この時点で6社に対しサービスが提供できる。
左リングは最終的なターゲットを9月末、遅れても10月末には開通させたい。
権利関係が複雑(海外がTelstra、国内が大手◯社…まぁ、Globeでしょ)な中、◯社が自身の持つ陸揚局を当社が使用することを許可していただけた。この協力、および調整が得られなければ実現はしなかった。その背景には、「競合」という姿勢ではなく、今まで大手通信事業者が考えを持っていなかった、例えば鉄道高架への敷設に集中投資し、それを今までフィリピンで根付いていなかった「シェアリングをしましょう」というコンセプトを、時間はかかりつつも提案を続け、徐々にではあるが理解を得られるようになってきた。そういったやり取りの延長で、遊休施設については条件さえ合えばいいよと。
このような取り組みで大手2社においても友好な関係が構築出来ている。
 
Q6
今後、更なる売上拡大が期待できるが、どのようにすれば売上に比例して、利益率も上がっていくとお考えなのか。
 

当社は、基本的に売り先がほぼ決まっている前提で投資を行っている。鉄道系のネットワーク然りである。少し必要なネットワークは借りる、全く無いネットワークは必要に応じ投資するという判断基準を持っている。
出来るだけ負担がかからない、大手通信事業者、大手CATV事業者等に共同で使ってもらう、というコンセプトでの投資を考えている。
投資により収益が悪化することが無いよう進めて行きたい考えである。
 
Q7
フィリピン子会社(2社)の上場予定の進捗について教えてください。
ロックダウンの段階的緩和により営業はやり易くなっていますか。
 

IVANは2016年に設立したが、NTCからの営業許可は2017年に発行されている。
当局との打ち合わせにより、今のところ2022年までに上場するという内容で進めている。
現地では監査法人、引き受け証券会社を交え準備を進めている状況。
shinagawaについても、2022年をターゲットに進めている。
コロナの影響について、shinagawaについては一時的にオペレーションを停止した。現在は開院しているが、感覚的に30%の戻り。潜在的にレーシックの需要はあるものの、想定以上に時間はかかると見ている。
IVの営業活動については、営業戦略自体を大きく変えていくことを考えている。現状では営業に行くビルに入る際も、コロナ陰性の証明を出す必要があるなど規制が多い。
今は慣れておらず、時間がかかるかもしれないが顧客にアプローチをする手法を考えて行きたい。この環境は1~2年かかるかもしれないので、新規獲得に向けて様々な手法を模索したい。
 
Q8
海底ケーブルを何故10年間も放っていられたのか、補足説明をしてほしい。
また、B/Sに乗るものでしょうから、幾らで取得したのか教えてほしい。
下半期の利益5.5億円、これはほぼ固まっているとのお話ですが、順調に行けばまだ2~3割の伸びしろはあるのかな、と思うのですが如何でしょうか。
株主総会の方式について、バーチャル総会にしなかったのはなぜでしょう。
何か考えがあって今回採用しなかったのか?あと、社長の株主総会に対する思いをざっくばらんに伺いたい。他社の総会では、前年の資料の使い回し、コロナなのでなるべく来るな、といったひどい扱いも受けた。
 

Telstraは陸揚局からマニラまでの大手国内◯社との交渉にて、料金面で条件が全く合わなかったため、決裂したと聞いている。あとは契約上制約があり、あまり深くはお伝え出来ない。
下半期は、おおよそ見えている部分を予測で発表、コロナの影響は懸念されるが、伸びしろはある。
総会に対する思いだが、(去年実施したフィリピン視察について)今年は航空便が飛ばない状況下、難しい状況にある。フィリピンの進捗の話はこの総会にて私から皆様に直接伝えたく、配慮の上、総会を開催させていただいたと受け取っていただきたい。
バーチャル総会は来年に向け検討したい。
 
以上で質疑応答が終了。
 
最後、決議議案1~3号は全て決議され、新任取締役、新任監査役の紹介を行い、午前11時10分、大きな拍手の中、閉会となった。

以上