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大企業とベンチャー企業の協業における要とは? 変化が求められる「関係性」と「コミュニケーション」

昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大により、スタートアップやオープンイノベーションを取り巻く環境は大きく変化しています。

「環境的な変化や不確実性に対して、どのように立ち向かうか」。これは大企業にとっても、スタートアップ企業にとっても、経営戦略上の非常に重要なテーマでしょう。

このような状況を踏まえて5月1日にオンライン開催されたのは「アフターコロナのスタートアップとオープンイノベーション」。SHIN みなとみらいを中心に展開されている、2つのアクセラレーションプログラム「KSAP」と「BAK」の共催で行われました。

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登壇したのは、KSAPを運営するGOB Incubation Partners代表の山口高弘氏、BAKを運営する株式会社野村総合研究所の徳重剛氏、社外人材による「オンライン1on1」サービスを運営するエール株式会社代表の櫻井将氏の3名。

今回のイベントレポートでは、3名のパネルディスカッション部分の様子を中心に、お伝えします。

上下関係から「信頼関係」の時代へ

はじめに話題に上がったのは、アフターコロナにおける「企業」と「個人」の関係性の変化について。コロナ禍の企業活動では、オンラインでのコミュニケーションが急増しています。従来の上下関係から「信頼関係」で結ばれ、より「個」にフォーカスが当たる社会になるのではないかと話が展開されました。

櫻井「アフターコロナにおけるビジネスでは、組織と個人の関係性が変わっていくと考えています。今までは「上下」だった上司・部下の関係が、より「フラット」に結ばれる時代に変化していくでしょう。この契約関係から信頼関係への変化は、どれくらいのスピードかは分かりませんが、確実に変化していくと考えています」

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山口「櫻井さんのおっしゃることに同意です。前提として『人は企業の利益を上げるための“手段”ではない』ですよね。ビジネスにおいて重要なのは、それぞれの役割をどう考えるか。誰が偉いとかそうではないとかって話ではないと思うんです。

会社という場は、会社のビジョンやミッションを達成するためだけではなく、『個人』が持っているビジョンを実現するための場でもある。個人が社会に貢献するための“窓口”として企業があると考えることもできるでしょう。個人と組織間における契約も、あり方が変わってくると考えています」

徳重「私も、お二人の考え方には共感しますね。ただ大企業目線で考えると、例えば雇用契約のあり方が変わるなど、抜本的な変化はすぐには起こらないと考えています。

一方で今多くの方が実感されてるのは、コミュニケーションの仕方の変化でしょう。私自身、オンラインでのコミュニケーションにおいては、肩書きやポジションを前提としたコミュニケーションではなく『Aさんだから』『Bさんだから』など、向き合っているその人『個人』を前提としたコミュニケーションをしている感覚がありますね。
またオンラインでの会話は、相手の表情やリアクションが汲み取りづらいこともあって『私の発言は、今どのように捉えられているだろうか』と相手への想像力が湧きやすくなっている状態でもあります。

イノベーション領域では『価値は組織に宿るのではなく個に宿る』とよく言われます。それを頭ではわかっていたものの、手触り感をもって『やはり、人だよね』と改めて理解するきっかけを与えてくれたのが、コロナ禍の社会変化だと思っています」

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ベンチャー企業と大企業の協業におけるポイント

大企業とベンチャーの協業に限らず「個の時代」というキーワードは、昨今多くの場面で語られてきました。山口氏は「オープンイノベーションにおいても会社組織の垣根を超えて活躍する個人が、マネジメント層にも増えてきている」と話します。意思決定のスピード感など、あらゆる条件が異なるベンチャー企業と大企業。協業におけるポイントについて、議論が展開されました。

櫻井「エールは『聴く』ことをビジネスにしていますが、オープンイノベーションにおいても『聴く』ことは、非常に意味があると考えています。

オープンイノベーションでは多様な価値観を持った人材が集まりますから、より心理的安全性を高める意識が必要になります。お互いが均等に話せる機会をつくることと、相手が本当に伝えたい想いを読み取ることは、心理的安全性を高めるチームづくりにおいて重要な要素なんです。

今、オンラインでの会話が増え、打合せで受け取る情報量が少なくなっていると思います。相手の話をしっかり聴いて『言葉の背景を、短時間で本質的に汲み取る力』を、私たちは試されているのではないでしょうか」

ベンチャー企業と大企業の間に立つことが多い経験から山口氏は、大企業からベンチャー企業への信任が、協業における要であると話しました。

山口「日本の大企業はPoC(Proof of Concept:概念検証)が好きな企業が多いと感じています。ただ今回のコロナで分かったように、今や何が起こるか予測不能な時代。PoCにおける成果を求めて実証して、確度が高くなってから『じゃあ、お願いします』というスピード感では遅いんです。

ベンチャー企業側は大企業に対して、対の関係による信頼感をもとに早期に任せてもらえるようなコミュニケーションをすることが重要だと考えています」

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熱量の共有、経験の共有をいかに行うか

オープンイノベーションの具体事例として徳重氏から紹介されたのは、行動変容と習慣化のためのアプリ「みんチャレ」。本イベントに参加者として参加していた、みんチャレを運営するエーテンラボ株式会社の長坂氏は、未病改善の実証実験「神奈川ME-BYOリビングラボ」での経験を、次のように話していただきました。

長坂「先ほど話題に上がっていたように、オープンイノベーションは、担当者の熱量が重要だと考えています。未病改善の実証実験の際は、神奈川県の担当者の方の熱量が非常に高かった。だからこそ、協業する大学の先生方や私たちも『一緒に走れる』と感じた、というのはありましたね。

大企業や自治体との提携においては、担当者が変わるリスクも見込まなければいけません。熱意のある担当者の方に、上司やその上司まで繋いでいただき、担当が変わったとしても組織内で『重要なミッションなのだ』と認識してもらうよう、心がけていますね」

Withコロナ/Afterコロナの文脈では「熱量」や「経験」の共有が、従来より難しくなっていることが課題として挙げられるでしょう。その課題をどう突破していくのかについて、山口氏は次のように話します。

山口「『同じ釜の飯を食う』という言葉がありますが、同じ時間・同じ場所を共にすることで、豊かな暗黙知が生まれる。そこから価値創造されることが、日本の強みの一つだと考えています。しかし今、それがしにくい時代になっていますよね。
一方で、先ほど徳重さんからあったように、相手を役割や機能、手段の関係で捉えずに『創造し合う間柄』になっていくとすれば、それは非常にいい流れだと感じます」

オンライン1on1では、視覚情報を切ってみる?

イベントの終盤、質疑応答の場面では、参加者の方から「オンラインでの1on1/コミュニケーションにやりづらさを感じる」という相談がされました。

山口「オフラインでの1on1は『対面をしない(膝を突き合わせる形で座らない)』ことがある種鉄則の一つ。オンラインでは、それを再現するのが難しいですよね。対面で話すとどうしても圧がかかってしまう。そのため初めて会話する方などとは、複数人でのコミュニケーションをするなど工夫をしています」

櫻井「本来は同じ方向を向きたいけれど、向けない。そういったオンライン1on1の場で私は、あえてビデオをオフにしていますね。視覚情報があったほうがやりやすいと思うかもしれませんが、視覚情報を遮って声だけに集中すると、相手の機微が分かるんです。ビデオを切れない場合は、画像をシェアするなどして、一緒に横に並んで同じ方向を向く感覚を作るのがポイントです。

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