女の子

小学校6年生の時クラスの中で一人だけあまり学校に来ない女の子がいた。その子はぼくが当時住んでいた団地の違う棟に住んでいて、ぼくはその子のお母さんや兄弟のこともなんとなく知っていた。とてもおとなしくて、いつも上品ににこにこと笑っているけど、どこかしら自分に自信がなさそうな感じだった。たまに学校に来ると、一人ぼっちでいるわけではなく、一人か二人、その子と一緒に過ごす女の子たちがいた。しかし毎日毎日続けて登校してくるわけではなく、気が向いたように(彼女の中では色々と考えた結果でだったのかもしれないけど)学校に登校してきた。

担任の先生は当時50歳くらいの男の先生で、怒るととても怖かったけど、授業は楽しくてわかりやすくて真剣で、授業以外の普段の生活の中でも生徒一人一人を見つめててくれて、マッチョな感じの顔なのに教室の黒板の脇の棚の戸に美少女戦士セーラームーンのポスターを貼るようなユーモラスな先生で、僕の知る限りでは彼を嫌う生徒も保護者も同僚の先生もいなかった。先生は結婚して奥さんもいて、子供が好きで、欲しくて、子作りに励んだけど、結局子供ができなかったという話を教室で生徒皆の前で、涙を流しながらしてくれて、とてもそれが強く印象に残っている。

放課後には先生の呼びかけでクラス全員が大縄跳びの練習をしていた。具体的な回数は忘れたけど卒業までにクラス全員が参加して、続けて何回まで飛ぼうという目標を立てて、それに向けてクラス全員で練習に取り組んでいた。

あの女の子が登校しないことが続くと、先生はきっとその子の家に電話するか、家に会いに行くかしていたのだと思う。ぼくはなにもしなかった。あの女の子は今何をしてるだろう。

東京駅に向かうタクシーでカーペンターズのOnly Yesterdayが流れている。ドライバーはぼくがその音楽に気がついたことに気がついたのか、ボリュームをひとまわりあげてアクセルを踏んでいる。

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