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漁師とビジネスマン

先日、工房で働いていた従業員が最後の出社日を迎えました。
少し寂しくなりますが、これからは人を雇わず妻と2人だけで小さな工房を営むことになります。

今まで僕の我がままに付き合って一緒に苦労をしてきてくれた歴代のスタッフの皆さんには心からの感謝を伝えたいと思います。至らぬ社長だったとは思うけれど、一緒に仕事をしたことで少しでも楽器作りが面白かった、楽しかったと言ってもらえたら本望です。

昨年11月の市民タイムスのコラムにセミリタイアの事を書きました。こういうことは口に出すと動き始めちゃうもので、その後状況は急展開。ぼんやりと頭にあった事もフォーカスし始め、方向を定めて動き出しました。僕なりのセミリタイアを実現させるための新しい土俵を作り始めています。

24歳でひとりで工房を立ち上げ、従業員を増やして会社経営という大きな夢を膨らませてきた僕は、今逆に膨らませた風船を上手に小さくして行こうと知恵を絞っています。

ほんの2年前は「これからは後継者を育てたい。それが自分の役目だろう。」と真剣に考えていたのだけれど、それはやはりバトンを受け取りたいと願う人がいてこそのお話。状況は変わるものです。
でも様々なことを考えた結果の、自分にとって一番良い選択になったと思っています。


ところで皆さんは「メキシコの漁師とビジネスマン」の話を読んだことがあるでしょうか。古典的な教訓話でネット上にも少しずつ内容を変えながら広がっているので、探せばすぐに見つけられると思います。

ざっくりと要約すると、

メキシコのとある海岸。漁を終えたばかりの漁師に、通りすがりの優秀なビジネスマンが話しかけます。
「沢山魚が取れるんだね。君は腕がいいからもっと努力して魚を沢山獲って売ればすごく儲かるよ。」

漁師は「家族が食べるのに十分なだけ獲ったから、あとは子供と遊んで妻と昼寝をして、夜にはお酒を飲んでギターを弾いて楽しく歌うのさ。」と答えます。

ビジネスマンは「もったいない。人を雇って船も増やし会社を作ろう。魚の加工会社も作って大きなビジネスにして君は社長として指揮をするんだ。株式公開すれば株でも儲けられる。最後はその株を売って君は大金持ちだ。ワクワクするだろ?」

漁師は聞きます。「そしたら最後はどうするんだい?」

ビジネスマンは、「金持ちになったらリタイアして、悠々自適でのんびり過ごすんだ。魚釣りをして子供と遊んで昼寝して、夜には旨いワインを飲んで歌って暮らすんだ」と答えます。

というお話。


10年くらい前にこの話を教わってから、時々読み返しては考えさせられています。
どちらが良い人生なのか。まぁ人生に良いも悪いも無いかもしれないし、人それぞれだとも思うし。ね。

僕のリタイアは10年後?15年後かな? 気が向いたら少しだけ楽器を作り、おいしいワインでも飲みながらウクレレ弾いて歌を歌って。妻とのんびり仲良く暮らすってのがいいのかなと思ってます。

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