親父が死んだ


実りの秋に
親父は
枯れ葉が朽ち果てるように
瑞々しさを失って
痩せ衰え
ひっそりと
人生の果実を実らせることなく
木枯らしに抗えずに旅立った

野球やラグビーをやっていた程の
強く剛健で怖かった父が
見る影もなく
死神に袖を掴まれて
屍になってゆくさまは
過去の恩讐を超えて
僕が親父の息子である誇りを
取り戻させてくれた

僕ももう
今さら
人生の果実を実らせることは
できないかもしれない
けれど
いつか街角の風に舞う
一塵の枯れ葉のように
お父さん
あなたのように
誇りを持って
朽ちて行きたい

お父さん
怒鳴り合った確執もあったけど
たぶん僕はお父さんが好きだったんだ

どうか安らかに眠ってください
そしてお母さんを今度こそ
守ってあげてください

そうでないと僕も
ずっとふたりが心配で
いつまでも
自分の人生を生きられないから…

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