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脈絡を無視してポップアップする言葉を紡ぐ作業と最悪な天候、仮想現実。

仮想現実の時代を経て、湾曲現実、誇張現実、編集現実へと続く。もはや現実などではなくモディファイされた別のものと呼ぶべきかも知れない。心はここにはなく記憶の内の幸福を頼りに脳内をただ彷徨う。

心の現実は、様々な行程を経て中核の「個」でさえ無意味に見え、取り囲む補助的な要素の影響を多分に受けて自らの思考に鉛のような液体でブレーキをかける。

荒れ狂った海面には天使とも悪魔とも取れる凍った微笑が表れては消え、その全てが白い泡に次々と飲み込まれていく。

空と海の境界が曖昧で、実はそれらは嘗てから一体のものであったかのように存在し、この世界に存在する全ての物理を無意味に出来る力を持つ。

窓に叩きつける雨粒は親指大にまでなって、ぼやけた視界を塞ぎ忘却にも似た安堵感を誘う。スピーカーから鳴るハープの音は古く乾いた重い木に、ピンと張られた弦を人間の手で爪弾く姿を克明にイメージさせる。実際はとても素早いパッセージにも関わらずイメージの中でスローモーションで耳に届く音とシンクロする。

紅茶はとっくに冷め、別の意味を持った液体に変わる。全ての言葉に埋め込まれた暗号は巧妙な仕掛けで嘘を隠す。

様々な物事や関係を取り換える事に取り憑かれたように没頭する日々。しかしそれらを取り換えたところで人生がその事自体で本質的な意味を取り戻すものではない事を既に知ってもいる。

益々水量を増す海に怒りの雨をさらに注ぐ。絵の具で塗り潰して行くように現実がフェードアウトする。

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