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例年以上に膨大な情報量の国際ロボット学会 iROS 2020

 毎年秋に米国電気電子学会(IEEE)日本ロボット学会(RSJ) による学術系カンファレンス「International Conference on Intelligent Robots and Systems (iROS)」が開催されますが、2020年はラスベガスで予定されていたものの新型コロナウイルスの影響でオンラインでの開催となりました。今年のテーマは「Consumer Robotics and Our Future」。期間中に 3つのプレナリーセッションの講演がありましたが、その一つには家庭用ソーシャルロボット Jibo の生みの親である MITメディアラボのシンシア・ブリジール氏による、人間の幼児の学習のメカニズムからロボットをはじめとした AIの学習機能への応用の研究や、事業撤退せざるを得なかった Jibo事業の経緯などの話や、東京大学の長井 超慧氏による子供の学習メカニズムの AIへの適用に関する取り組みについての講演もあり、大変興味深いカンファレンスでした。
 iROS は日米からの参加者が多いため発表セッションはオンデマンドでの配信となり、時差に悩まされることなく参加できるよう配慮されていました。しかし通年であれば開催期間の時間の制限で取り上げられる論文の数には限りがあったように思いますが、今年はオンデマンドでの開催となり取り上げる論文数の制限がほとんどなかったためか、発表総数は 1,400本を超えていました。それぞれの内容に目を通すだけでも一苦労でした。参加者数も例年は会場の関係もあり 4千名前後だと思いますが、今年の登録者数は 2万人を超えたそうです。
 カンファレンスの運用形態は例年とほぼ同じで、プレナリーセッションが 3講演、カテゴリ毎のキーノートが 9講演、そして 13分野のテクニカル セッションに加えてカテゴリ毎にアワードも授与されていました。9つのキーノートもそれぞれ個性的な内容で、汎用マニピュレーション技術開発の講演や Agility Robotics の二足歩行ロボット Cassie の開発経緯、さらに最近特に研究が盛んな昆虫などの生体メカニズムの研究からより効率のいい動力源の開発など、普段接することの少ないテーマの講演もあり、とても刺激されます。
 テクニカルセッションはローカライゼーション(SLAM) や認知・認識技術、学習・制御系、ヒューマノイド及び外骨格ロボット技術、ハプティック・エンドエフェクタ、医療ロボットやナノロボットなど 13分野で構成され、それぞれの分野がさらに細かいサブカテゴリに分類されて論文発表が行われました。各発表者は 15分前後のビデオで発表内容の概要を紹介し、詳細は論文を参照する流れになります。今年は二足・四足ロボットの制御系の論文やビジュアルSLAM技術に関する論文が多かったように思います。

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