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追悼 ジェリー・ジェフ・ウォーカー(2)

ジェリー・ジェフ・ウォーカー『ベスト・オブ・ヴァンガード・イヤー』
Jerry Jeff Walker - Best Of The Vanguard Years (Vanguard) 1999

1999年にジェリー・ジェフ・ウォーカーの『Best Of The Vanguard Years』がリリースされる。これはタイトル通りにジェリー・ジェフがVanguardレコードに在籍していた時代の音源を集めたもの。

基本的には、67年のサーカス・マキシマスのアルバム、69年の『Driftin' Way Of Life』収録曲から構成されている。「People Play Games」という見慣れないタイトルがあるが、これはサーカス・マキシマス時代の「People's Games」と同一曲。

となるとアルバム未収の未発表曲は2曲だけ。「Mr. Bojangles」は、68年のATCO盤とも、67年のボブ・ファスとのラジオ・セッションとも異なったもので、Vanguardレコードでもこの曲を録音したのだろう。基本アレンジはATCO版に準じていて、ギターはデヴィッド・ブロムバーグが弾いている。

問題なのはもう1曲。ポール・シーベルの名曲をカヴァーした「Louise」なのだ。クレジットには、ニコレット・ラーソンとマイク・オルドリッジの名前が記されている。

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ニコレット・ラーソンとジェリー・ジェフ・ウォーカー。誰もが考えつかないような意外な組み合わせだ。バック・ヴォーカルというよりも、これはデュエット。そこにマイク・オルドリッジのドブロ・ギターが絡んでくる。実に素晴らしいセッションだ。

ジェリー・ジェフ・ウォーカーがVanguardに籍を置いていたのは、67年から69年の間。この「Louise」も、この期間に録音されたとみるのが妥当だろう。

ニコレット・ラーソンの録音歴をあたると、74年にガスリー・トーマスの自主制作盤に参加したのが初めてのクレジット。その後、コマンダー・コディ、ジェッシ・ウィンチェスター、ビリー・ジョー・シェイヴァー、ジェシー・コリン・ヤングなどのアルバムに参加。

ニール・ヤングの『アメリカン・スターズン・バー』でハーモニー・ヴォーカリトとして抜擢されたのが77年。そして翌年の78年に、『Nicolette』で颯爽とソロ・デビューを飾る。

それよりもはるか前となるのが、このジェリー・ジェフ・ウォーカーとのセッションだ。生年月日から逆算すると、彼女が17才の時となる。これは間違いなくニコレットの初めての録音になるだろう。堂々とジェリー・ジェフと渡り合っている。

何故にこのような素晴らしいセッションが未発表のまま残されていたのか。そして、ジェリー・ジェフとニコレットは、いったい何処で知り合ったのだろうか…謎は深まるばかりなのだ。
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音楽評論家 小川真一

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