【絵日記】『スカイリム二重人格ロールプレイの旅』第1話(まげま編)
人気漫画のモブとして登場する謎のおじさん「吉田輝和」と、どうぶつ系ダークファンタジーギャグ漫画『ヴァンパイアハンター・トド丸』の原作者「まげま」が送る狂気のゲームプレイ絵日記企画。二人は、PC版『The Elder Scrolls V: Skyrim SPECIAL EDITION』のセーブデータを共有し、それぞれ異なる人格でロールプレイを行っていく。
二人は相手の絵日記を見てはいけない。
吉田輝和はまげまが何を考えているのかわからない。まげまは吉田輝和が何の目的で行動しているのかわからない。互いが起こした行動の結果でそれを推理するしかない。
二人の行動や思考を把握できるのは、この絵日記を読んでいるあなただけ――
■スカイリムに降り立った格闘家、新たな格闘技を生み出す
目を覚ますと、俺は帝国に捕まっていた。
捕まった理由はわからないが、おそらく輝和のせいだろう。シロディールからスカイリムに行くところだったはずだが、そこで何かやらかしたに違いない。
俺は、自分の中に潜むもうひとりの人格「吉田輝和」に怒っていた。あいつは真の格闘家を目指す俺と違って軟弱な性格だし、卑劣な行為を好む。一体どんな悪行に手を染めて捕まったのか……いや、知らないほうがいいかもしれない。
罪人たちが揺られる馬車の上で雑談をしているが、その内容は怒りで頭に入ってこない。……これから向かうのは刑務所だろうか。
「いきなり処刑台かよ!輝和は一体何をしでかしたんだ!?」
まさか行き先が処刑台だとは思わなかった。輝和の凶行の被害に遭われた方、もしくは方々に申し訳ない気持ちになりながら怒りは頂点に達していた。
そんな時である。ドラゴンが襲撃してきたのだ。
辺りは地獄と化し、俺は右往左往するほかなかった。
混乱の中、帝国兵かストームクローク兵のどちらかについていこうか一瞬迷ったが、今は緊急事態だ。彼らの服の色で判断し、青色が好きな俺はストームクローク兵の方に向かった。
屋内に逃げ込み、レイロフという男と行動をともにすることになった。
彼は武器を取れと言ってきたが、俺は格闘家。そんなものは使わない。鎧なども軟弱が着るものだが、万が一に備えて着ておこう。
しかし、その万が一はすぐに訪れた。帝国兵が襲ってきたのだ。俺は素手だというのに向こうは武器を使ってくる。卑怯者!
ところで道中、レイロフから話を聞かされたが、帝国兵は罪が軽い者を捕まえては処刑台に送り込んでいたらしい。
帝国は、ストームクロークと対立する今のスカイリムの状況にヒステリックになっているのか、それともただ単に質が落ちているのか、いずれにしても輝和はその諍いに巻き込まれただけで罪は犯していないのかもしれない。いや、やっぱりヤツは何かしでかしたのでは……。
そんな葛藤を抱えながら、俺は食べ物を集めていた。
にんにくは精がつく。
輝和には食べ物の好き嫌いはない。もっと言えば食べ物に対する興味がないようだ。俺がちゃんとした料理を作らなければ、そのへんの草を食ってしまう。輝和がそのへんの草を食った後、吐き出すのはいつも俺の役目だ。いい加減にして欲しい。
しかし、正直なところ、こうやって食べ物を探すのは楽しい。見つけた食べ物で献立を考えるのは、最近の生きがいになっている。
そんな事をしていたら外に出てきた。ドラゴンは遺跡がある山の向こうへと飛んでいった。
レイロフは、「ここから別行動を取ったほうがいい」と言ったが、俺は頼れる人がいなかったためついていくことに。すると、彼はこの辺のことを観光ガイドのように説明してくれた。本当は鬱陶しくて仕方なかっただろうな……。
レイロフの故郷である村につくと、彼の家族が迎えてくれた。
長ったらしい話をしていたので途中で面倒臭くなって聞いていない。「ホワイトランに行ってドラゴンが出現した事を知らせて欲しい」と言われたが、俺が行かなくても誰かが知らせてくれるだろう。
そんな事よりドラゴンが飛んでいった方向に遺跡があったな。よし、ここに行ってみよう。
ドラゴンが遺跡の方角に飛んでいったのは意味がありそうだ。
道中で盗賊の砦を見つける。
遠くから観察すると最低3人はいるようだ。二人は近接武器を所持しており、一人は弓を背負っている。
素手の俺は不利と言っていいだろう。
そこで、俺はひとりずつ敵をおびき寄せてタイマンに持ち込む。弓兵の狙撃にも気を配らなければならないので、不利なのは変わらないが。
それでも二人の敵はなんとか倒せた。しかし、弓兵の狙撃はなかなかに厄介ではないか。
何か体を防ぐ物があれば……
その時、天啓が降りた。
俺は死んだ敵が装備していた盾を奪い取り、弓兵の方に一気に突っ込んだ。
そして、手に持った盾で弓兵を殴り、動きを止め、渾身の力を込めた右ストレートを打ちまくる。
この瞬間、俺は……盾を駆使する格闘技「たてて」を編み出したのだ!
たてての使い手「たてて家」として覚醒した俺は、遺跡の方に進み、そこにいた動くものを辻斬りでもするかのように手当り次第殺していった。
殺した相手は盗賊なので罪には問われないだろうが、もはや関係ない。
俺は、人間だけでは飽き足らず巨大蜘蛛とも戦った。
しかし、相手は怪物。人間と同じように戦っていても通用しない。しかも奴の牙から垂れていた毒が、俺の体に入り蝕んでいく……。
自分でも信じられないほど命の危機を感じていた。
「たてて」を編み出した直後に俺の人生は終わってしまうのか……そんな絶望感によって断崖絶壁で戦っているような気分に陥った。
そんな時である。俺は「たてて」を「盾を駆使する格闘技」と定義づけたが、その定義に疑問が生じたのだ。巨大蜘蛛と戦っている最中だったが、この危機的状況によって自分の体感時間はスローモーションのように流れており、それが考える余地を与えた。その長い時間の中で、俺は自分自身と議論を交わし、「盾は己を守るモノであらず、また武器でもあらず、己の左手なり」という教義を完成させたのだ。
俺はシールドバッシュの使い方を間違っていた。敵の動きを止めるための行為ではなく、むしろ攻撃の手段なのだ。シールドバッシュを何度も繰り出せば、敵は盾を恐れ、盾ばかり警戒するだろう。そこで右ストレートで不意打ちをするのだ。
これこそ「たてて」である。「たてて」とは即ち、己と盾が一体化する格闘技である。
こうして俺の「たてて」はさらなる高みに到達し、巨大蜘蛛を葬ることに成功した。
その直後、蜘蛛の巣に絡まっている男が話しかけてきた。
「金の爪」がどうのと言っているが、どうでもいい。この蜘蛛の巣の向こうに通路があるようだからついでに助けてやろう。
するとなぜだか知らんが逃げていった。この遺跡に眠るお宝を独り占めにしたいようだ。せっかくだからそのお宝とやらを一緒に拝んでやろうではないかと思ったのだが……。
奴は死者の眠りを妨げた怒りで殺されてしまった。まあいいだろう。
眠りと言えば……そろそろ吉田輝和が目覚める時間だ。
俺と輝和は記憶を共有していないため、戦闘中に小心者のあいつが目覚めればパニックで心臓発作を起こすかもしれない。ここは自分の命を守るために退散しよう。
俺は襲いかかる死者達を倒しながら退却した。
さて、今回は輝和のために料理は出来なかったが、出来合いのものは事前に用意しておいた。炭水化物、タンパク質、ビタミンを豊富に取り揃えてたメニューだ。ちゃんとワインも用意したぞ。
これらのメニューをカゴに入れたのは、衛生観念に気をつけてほしいというより、輝和が陰鬱な遺跡の中でもピクニック気分で食事を楽しめるように気遣いをしたのだ。感謝しろ。
……本格的にあいつが出たがっている。
俺はあいつのために「籠の中のもの食べろ強」と書き置きをして意識を手放した。なぜだか知らないが、書き置きは10文字までと決まっているのだ。
本当は……「強くなれ」と最後まで書きたかったんだがな……。
吉田輝和による第2話は以下からどうぞ!
吉田輝和はまげまに、まげまは吉田輝和に何かしらのイタズラを毎回していく。しかし、イタズラはすぐに気づかれるとは限らない。それでもイタズラは回を重ねることに蓄積されていく。日記が進むごとにスカイリムの地はイタズラの痕跡だらけに……。
今回は無料ですが、2話以降のイタズラの内容は有料枠となります。この企画を応援するために、次回以降は投げ銭&スパチャ感覚で読んでいってください。
吉田輝和とまげまが行ったこれまでのイタズラを知っていると後々の展開でニヤリとすることがあるかも……。
実はカゴの中に「フロストバイトの毒」を入れておいた。
俺が書き置きに「強くなれ」と残したかったのは、栄養バランスの良い食べ物と一緒に、毒も摂ってほしいからだ。食事とは健康に良いものだけを摂ればいいというものではない。毒も食らい、自分の糧とすることが健全な体作りになると思っている。
ただ、毒は苦いのだ。俺は苦いのが苦手だ。バカ舌の輝和ならほいほい口の中に入れてくれるだろう。
強くなれ輝和!
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