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晩翠怪談 第24回 「田んぼの写真」「鯉ではなくて」「割れ鏡」

割引あり

■田んぼの写真

 70年代の中頃、世間が心霊写真の話題で賑わっていた頃の話だという。
 当時、中学生だった未広さんも心霊写真が撮りたくなり、親のカメラを使って撮影に臨んだ。

 神社や墓地など、いかにも出そうな場所を撮った写真には、何も写っていなかった。
 だが、フィルムを使いきるためになんとなく撮影した写真には、妙な光景が写されていた。

 刈り入れが終わって泥土が剥きだしになった田んぼに、継ぎ接ぎだらけの着物を着た若い女がこちらを見ながら突っ立っている。
 女はフレームのまんなかに屹立し、呆けたような表情でこちらをじっと見つめている。

 そんな写真なのだが、撮影時にこんな女は田んぼにいなかった。
 のみならず、暑い時期のことだったので、田んぼには青々と育った稲が繁っていたはずである。

 家族や友人たちに見せたのだが、女も裸の田んぼもはっきり写りすぎているため、心霊写真と信じてもらうことはできなかった。単なる不可解な写真ということで片付けられる。
 納得がいかず、気味も悪かった未広さんは、写真をネガごと燃やして処分してしまったという。


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