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仕事のキャリアを意図的に作ろうとするとなぜ失敗するのか?偶然と成功の意外な小話

過去最大10連休のゴールデンウィークも終わり、さらに5月病もあいまってキャリアの相談に乗ることがかなり増えてきました。この記事を読んでいるあなたも、自分自身のキャリアに悩んでませんか?

特に最近の若い人の相談に乗っていて感じるのが、キャリアをうまく作ろうとコントロールしようとしすぎて苦しんでいる印象を受けました。キャリアを考えることはとても大事なことだと思いますが、実は仕事におけるキャリアほどこの世でコントロール不可能なものはありません。

▪私自身のキャリアを簡単に自己紹介として説明

私は過去に4社(ドリコム、リクルート、メタップス)を転職で事業開発ポジションで渡り歩き、いまはベンチャー企業の新規事業を担当しています。


・学生時代はテレアポ営業のインターンを1年半
・ドリコム:子会社の社長ポジション

・リクルート:スタディサプリの事業開発
・メタップス :時間売買アプリ「タイムバンク」の事業開発
・SmartHR:新規事業を作る子会社の社長ポジション

はたから見ると上手くいっているキャリアに見えるかもしれませんが、私自身のキャリアは失敗だらけ、試行錯誤だらけで、最初からこうなると全く予想できていませんでした。ここで覚えておいてほしいのが、私自身はキャリアを作ろうとしたことは1回もないということです。

キャリアの相談に来た子にこういうことを言うととても嫌な顔をされるのですが!(笑)事実だから仕方ありません(ごめんね)。

▪そもそもキャリアアップとは、市場価値が上がるとは何か?

新卒時代〜若手時代には自分の思うように仕事ができないで辛いことも多いでしょう。特に日本の新卒採用だと、入社後にどんな仕事に就くか予想できませんからね!

日本のこの常識、海外では非常識だって知ってますか?海外では、新卒でもキャリア採用でもJob Description(職務要件)が決まっていて、それ以外の仕事をさせると契約違反で会社側が訴えられたりします

さらにアメリカだと入る学部、取っているdegree(院卒か博士課程か等)の時点で入社できる会社がかなり決まってくる超学歴社会なので、その点は日本のほうが新卒に優しいとも言えます。

話が脱線するのでこれ以上は言及しませんが、一般的にキャリアアップとは主にこういうことをイメージしている人が多いでしょう。

・自分がやりたい仕事を
・自分の意思と能力で実行できること
・そのための裁量があること(自分で決められること)

この3つがあると、基本的に仕事は楽しくやれる可能性が高くなります。では、これらを実現するために必要なことは何でしょう?

一言でいえば「市場価値が高く自分で仕事をコントロールできる状態」にいる人が、これらを得やすいのです。そして、市場価値を上げる方法として私の古巣であるリクルート出身のOBである藤原和博氏が提唱している「掛け算でのキャリア形成」が分かりやすくおすすめです。

「100人に1人×3分野」で、誰でも100万に1人になれる。みなさんもぜひ、今の分野でそのまま走って1万人に1人、100万人に1人を目指すより、3つの分野のキャリアを掛け算して100分の1×100分の1×100分の1の掛け算で100万分の1の希少性あるキャリアを創ってみてください。


logme Biz 藤原和博氏「稼ぎたければレアカードになれ」年収1,000万〜1億円を目指す人生戦略より

要するに、

・1つの分野でずば抜けるためには自分より才能がある、優秀がある人と闘わなくてはならず厳しい
・2つ以上のスキルの掛け算であればずっと簡単にレアカード人材になれる
・スキルの組み合わせによって足し算ではなく掛け算で市場価値が上がる

こういうことを言っているわけです。これは市場価値の上げ方としては王道ですし、私のような凡人にとっても最も成功確率を上げられるセオリーと言えます。

▪一方で、市場価値を上げる努力をしてる人を一気に追い抜いていく人は何が違うのか?

ここまでキャリアアップのことについて話していたのに、一気にぶち壊すようなことを言います!スキルの掛け算でレアカードになるという発想はとても大事なのですが、実はこの「市場価値を上げる」という言葉がすでに罠なのです。

たまに見かける、周りを差し置いて異常なほど出世するタイプの人っていますよね。市場価値という概念を超える理外の一手"ウルトラC"を打ってくるタイプです。

・20代で起業し有名になる
・30代で大企業の役員になる
・発明をして特許を取る
・まだなかった新しい仕事を創る

こういう理外の一手、通常のキャリアアップという概念の先にはありえないことをして大成功する人というのはいつの時代も一定数存在します。そして、こういう「市場を創る人」に「市場価値を上げようとする人」は勝てません。なぜか?

なぜなら「市場価値」とは「市場があること」を前提としていて、市場があるとそこには「競争」が生まれます。競争は、自分よりも優秀で才能がある人と闘わなくてはならないため、必然的に勝利できる可能性は低くなります。

例をあげましょう。誰でも知っているFacebookのファウンダーであるマーク・ザッカーバーグ氏はハーバード大在籍時にFacebookのサービスを思いついています。当時、SNSはまだ一部の若者しか使っておらず、そこにはまだ市場がありませんでした。その市場をほぼゼロ創り出し、世界中に「実名制SNS」を広めたのがFacebookでだったのです。だからこそ、Facebookは一人で大勝することができたのです。Facebookは創業15年で、ここ数年は世界の時価総額ランキングTOP10位に常に入っています。

Facebookよりも歴史のある会社は、世界中に星の数ほどあります。それを全部ぶち抜いていったのは、なによりも「市場を創る」ことに成功したからです。ビジネス用語で言うと「ブルーオーシャン」で、敵がいない中で一人笑いが止まらない状況ですね。うらやましい!

こういった大きな話でなくても、最近で言えばYouTuberのヒカキン氏なんかもこれに該当しますね。まだあまり認知されていなかったYouTuberという職業を一気に世に広め、トップYouTuberとして有名になりました。

何度も言いますが、市場価値を上げるというのは確かに大事です。でも、それは狭い市場の中で、自分よりも優秀な人たちと競い続けなくてはいけないという血みどろの戦争に参加することでもあります。

私は正直、これがとても嫌でした。人と競争することが基本的に嫌いなので、いかに「闘わなくて勝つか」ということを常に意識していました。

キャリアの話をしているのに、こういうことを言うとすごく嫌がられます。ごめんなさい!でも大丈夫です。これは特殊な話ではなく、要するに「キャリアを考えるうえで知っておくべき心構え」だと思ってください。

先程のスキルの掛け算の話は、すでにある市場の中でのスキルを組み合わせる発想です。でも一方で、市場をそもそも作ってしまうことで勝つ人もいるのだと知っておくと「あいつ、なんであんな成功してるんだ!?」と思ったときの知恵になるかもしれません。

▪「市場価値」を上げようとするより「偶然おとずれるチャンス」を掴むことで市場価値が上がる

セレンディピティという言葉を知っていますか?これはイギリスの作家Thomas Walpoleによりはじめて使われました。童話の登場人物の3人の王子が偶然と洞察力を元に自分が本当に求めているものを見つける旅路を描いたお話です。この課程がセレンディピティと呼ばれています。

これはどういうことかと言うと、

・チャンスは偶然によってしか得られない
・ただしチャンスは準備している人にしかつかめない
・チャンスにそなえて日々努力をする人が結果として望んだものを得られる

こういうことを言っています。キャリアもまさに同じで、コントロールしすぎようとすると上手くいきません。キャリアを、市場価値を引き上げる一手は、自分ではなく周りの誰かからもたらされるものであることがほとんどです。優秀な人であるほど、これをコントロールしようとしすぎますが、それはそもそも無理だよという含蓄のある言葉です。

これに近い考えで、キャリア論で有名なものに「計画された偶発性理論」というものがあります。これは、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱したもので、この理論の要点は、こういうことを言っています。

・個人のキャリアの8割は予想しない偶然によって決定される
・その偶然の中でベストを尽くすことで良いキャリアが形成される
・変化の激しい時代にキャリアを計画し尽くすことは不可能

計画された偶発性理論よ

キャリアを予想することは、これだけ変化が激しい時代だとほぼ不可能なんですよね。私自身そうでした。予想できたわけでも意図したわけでもなく、失敗しても成功するか分からないけど必死にチャレンジを繰り返した結果なんですよね。それが上手くハマっただけです。キャリアっていうものは、こういった意外とロジックではないところで形作られる気がします。必死で熱意がある人には、周りがチャンスをあげたくなるものですしね。それはロジックではなく偶然、感情の話です。

何度も言いますが、市場価値を戦略的に上げることは大事です。これに成功すると、そこそこの成功と経済的なゆとりが生まれ、幸せな人生を得やすくなるでしょう。それは間違いありません。

ただ、逆にここにとらわれすぎると、市場という足かせに自分の可能性を引っ張られてしまうこともよくあります。特に、若手社会人がこの市場というものを意識しすぎるのはおすすめしません。もっと自由に、フラットな発想で、まだ誰も気付いていない市場を見つけられるのはオッサン・オバサンよりも若者が有利だと断言できます。

これはなぜかと言うと、年齢を重ねると、どうしても過去の成功パターンを踏襲したくなるからです。私自身、過去にうまくいったパターンを踏襲したことがありましたが、それで上手くいかなかったこともたくさんあります。「今必要なことは何か?」をフラットに考えられるためには、過去の経験や知識をゼロにunlearn(逆学習する)ことが大切なことがあります。ま、これは脱線するのでこれ以上は言及しませんが、そんなもんなんだ〜と思っていてください(老害って言わないで!)

スキルの掛け算をするためにスキルを得ようとしても、そのスキルを得るための経験はやはり偶然によってもたらされます。自分では完全にコントロールしきれない部分なのです。もちろん、独学で学ぶこともある程度できますが、良い学びには良い経験が欠かせません。自分1人よりも会社や組織で社会に大きなインパクトを与えるためにやるとより大きな学びになるはずです。

▪好きなことが見つからないなら、今やっていることを好きになろう

アメリカの心理学者であるエイミー・ルゼスニュースキー博士は、「3つの仕事観」というものを提唱しています

 1.義務としての仕事
 2.評価されるための仕事
 3.天職としての仕事

1と2は、生きるためのお金を誰でも稼ぐ必要がありますし、評価をある程度されないと仕事は楽しくなりませんよね。誰でも3を目指したいところですが、それが難しいのは言うまでもないでしょう。

そういう時は、自分の中のドロドロした感情に正直になると仕事が楽しくなるのでおすすめです。これは例えば、

・有名になりたい!
・お金がほしい!
・もっと認めてほしい!
・いい男・いい女と付き合いたい!

こういう人間の根本にある願望を否定することなく向き合いましょう。そして、自分が本当にやりたいこと、目指したいことは何なのか、考えてみるときっと楽しいですよ。

もちろん、天職はいきなり見つかりません。そして、世の中の多くの人がこの「天職を見つけなければいけない!」という強迫観念にかられて自分を追い込んでいるようにも思えます。

先程のセレンディピティの話でもあった通り、天職は「見つける」ものではなく「結果として見つかる」ものです。ただし、それがきっとあると信じて考えることが何よりも大切です。多くの人は、この考え続けることに挫折してしまうのですが、それは今の延長ベースで考えるから現実に押しつぶされそうになるのです。いったん自由に、フラットに、自分のドロドロした感情を認めてあげてください。きっとキャリアを考えるのが楽しくなりますよ。

それでも嘘だと思うなら槇原敬之さんの「ぼくが1番ほしかったもの」という歌を聴いてみてください。キャリアに悩んでいる時に聴くと割と泣けますよ。

▪自分の人生を「偶然」の前にさらす度胸が成功するカギ

色々と書きましたが、まとめると

1. キャリアを予測してコントロールすることは不可能
2. それよりも今の仕事を好きになること・努力することから始めよう
3. チャレンジをしていれば、その先は偶然が導いてくるえる

これに尽きます。

目の前の仕事を手を抜かずやること、それが嫌いな仕事であっても、まずは腐らず取り組んでみてください。そして、ある程度の経済的なゆとりを持つこと。次に、偶然によってチャンスが来るのを待つこと。そしてそのチャンスをつかめるよう、準備をしておくこと。

どんな仕事をしていても、これに尽きると思います。焦らず腐らず、偶然がもたらすチャンスに備えましょう。それが、結果としてキャリアを築く最良の道なのだと思います。

最後に、私が大好きな本の一節を添えて。

「勝利を得るのは、しばしば学びながら時期を待つ人である」

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