『Pellicule』不可思議/wonderboy

久しぶり どうしたんだよヒゲなんか生やして
肌の色も真っ黒だし ヒッピーみたいじゃんか
随分と遠くまで行ってきたらしいじゃん
なにか掴んだかよ とりあえずは飲もうぜ
みんなお前のこと何気に 心配してんだ
みんなっつーとそう いつもの面子のことなんだけど
今日はちょっと忙しくて 来れないみたいなんだ
だから えっと そーだな
二人だけで話そう
それにしても皆いつの間にかいなくなるよな
だから別にそれがどうってわけでもないんだけど
最後に挨拶ぐらいしてって欲しいっていうか
まあ別にそんな事どうでもいいんだけどさ
.
そういえば昔さ いつだったっけ覚えてる?
流星群が来るからって 校庭に集まって
寝そべって 夜空を眺めてたんだけど
時間だけが流れて 星なんか流れないの
ああ今俺もしかして うまいこと言ったかなー
寒かったなー あれもう二度とやりたくないけど
次の流星群っていつ来るんだろうね
まあ別にそんなことどうでもいいんだけどさ
.
そうやって俺達はいつまでも待ってた
来やしないとわかってながら いつまでも待ってた
俺たちの知る限り 時間って奴は止まったり戻ったりはしない
ただ前に進むだけだ
だから今日は戻らない日々を思い出して笑おう
今日だけ 今日だけは思い出して笑おう
こういうのってあんまりカッコよくは無いけど
初めから俺たちはカッコよくなんて無いしな
.
俺たちっていつかさあ 結婚とかすんのかなあ
子供とかできてさあ 庭付き一戸建てとかを
ローン組んで買ったら 出来た気になるかなあ
ってこの話前にも聞いた気がするわ すまんね
とりあえず今んとこは彼女とかもいないし
まったくお金も無いから 可能性はゼロだね
そういえばお前んとこのあの彼女どうしてんの
たまに俺に貸してよって これも前に言ったか
冗談はいいとして 同窓会どうする?
行かないよなー行ったって話すこともないしな
大体どんな顔して行きゃいいって言うんだよ
自慢できることなんて一つだってないのに
あの頃ってなんにでもなれる気がしてたよなあ
いや実際 頑張ればなんにでもなれたか
でもこうやって色んな事が終わってくんだもんな
っていや始まってすらいないか
.
そうやって俺たちはいつまでも待ってた
きたるべき何かが 来ると信じ待ってた
グラスの中の氷はとっくに溶けて無くなって
俺たち以外にもう人は 誰もいなくなってた
だから今日はありもしない未来について語ろう
今日だけ 今日だけは 思い描いて語ろう
こういうのってあんまりカッコよくはないけど
大丈夫 俺たちの事なんて誰も見ちゃいないよ
.
待ってた 俺たちはいつまでも待ってた
来やしないとわかってながらいつまでも待ってた
俺たちの知る限り 時間って奴は止ったり戻ったりはしない
ただ前に進むだけだから 今日は戻らない日々を思い出して笑おう
今日だけ 今日だけは思い出して笑おう
こういうのってあんまりカッコよくはないけど
初めから俺たちはカッコよくなんてないしな


こんにちは、しんです。

みなさんはポエトリーリーディング って知ってますか?
簡単に言うと、音楽に乗せて詩を朗読するようなものです。
ラップと比べると、韻を踏むことに固執せず、言葉により重きを置いたような音楽のジャンルです。

良い歌を聴く時って、歌詞から何かを感じとれることがよくあります。
それだけ歌詞には大きな力があるんです。
特に僕はそういうのをストレートに感じるタイプなので、ポエトリーリーディング は大好きです。

と言っても最初は「音楽に乗せて歌詞を朗読するやつ」くらいの知識しかなくて、ポエトリーリーディング なんて言葉も知りませんでした。
最近になってその言葉を知って色々調べてYouTubeで動画を見て、その時に出会ったのがこのPelliculeという曲です。

この曲を歌っている不可思議/wonderboyという人はすごく歌に気持ちがこもっていて、一度聞いただけで心が動きました。
調べていくうちに、この不可思議/wonderboyというラッパーの生涯が衝撃的な結末を迎えていたことを知りました。
そんな彼の人生は映画になり、今も語り継がれています。

この曲、というか歌詞を読んで、ぱっと思ったのは「おれって無力だなぁ」ってことです。
久しぶりに会った同級生と昔話をしても、変わっていない自分を思い知らされるだけ。
過去にしがみついて、振り回されて、気づけば周りから置いていかれてる。そんな自分を想起します。

ただその中にも希望はあるというか、まあ当たり前なことなんですけど、どんなにぼんやり生きていても、時間は進んでいく。
「時間って奴は止まったり戻ったりはしない ただ前に進むだけだ」
しっかりと時計の針は未来に進んでいくし、自分も先に進んでいく。
嫌でも進んでいく時間の中で、たまには過去を振り返る時間があってもいいよね。
そういう詩だと思いました。

神門というラッパーがこの『Pellicule』をカバーしています。
ところどころ歌詞を改変していて、その中にこんな詩があります。
「過去に名残を 夢に続きを 止まった時間の先に未来を」
不可思議/wonderboyの時間は止まってしまったけれど、彼の時間は数々のポエトリーリーディングを通して僕たちの中で進み続けているのだと思います。

ただ漫然と生きているだけで生きる意味や価値を見出せないことはよくあります。
成功している人は未来ばかりを見て、どんどん前に進んでいきます。
でもそんなにスムーズに生きられない僕たちには、過去を振り返って立ち止まる時間もあってもいいかもしれない。
周回遅れで生きてもいいかもしれない。
どうせ誰も見ちゃいないから。
そう思わせてくれる曲でした。


おわり

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