『人より上手に』夢追翔

僕は人よりも 上手く歌えないから
大好きだったことにさえ目を背けた

僕は人よりも 上手く話せないから
人混みに紛れて笑顔作ってた

僕は人よりも 頭が良くないから
笑われるような夢も持てなかった

僕は人よりも 上手く生きられないから
生きることにすら本気になれなかった

そうやって自分で自分の価値を決めて
傷つかないように黙り込んだ
誰かに否定されることが恐ろしくて
いつだって逃げてばかりなんだ

僕が踏み出す 微かな轍
決して誰にも消されぬ跡
いつも人を見下しては 見下されることが
怖くて動けなくて
空の心に 吹き込む嵐
満たされないと叫んだ日を
それでもと 何かあるとムキになって ここまで来た
それが楽しくて

僕は人よりも 上手く笑えないから
形だけ真似しては張り付けていた

僕は人よりも 人を愛せないから
誰彼構わずに疑っていた

優しい言葉はいつも素通りして
悪口ばかり数えていた
底を見せれば裏切られるだけだって
でもそれは 間違っていたんだ

気付けばそこに 遥かな轍
それを誰かが笑おうとも
そうだ 否定も肯定も全て飲み下して
それでもまだ生きてる
空の心は満たされねども
僕にないものじゃなくて
残っているものを大事に育てて咲かせられたら
それはきっと 僕の宝物

作詞・作曲・歌:夢追翔

Vtuberという文化への共感

今回はバーチャルシンガーソングライターの夢追翔(ゆめおいかける)さんのオリジナル楽曲『人より上手に』(https://youtu.be/1u9ESQRXTMo )について書こうと思います。

夢追さん(以後、ゆめお)はいわゆるバーチャルYouTuber(Vtuber)としてYouTubeを中心に活動されている方です。

YouTubeで様々な企画配信の司会進行役として活躍する一方、自ら作詞作曲して楽曲をリリースしたりもしています。

ゆめおのことはYouTube配信から知りましたが、この『人より上手に』という曲を聴いて、「なんて自分事のような歌詞なんだ…」と衝撃を受けました。

僕は幼い頃から兄の影響でアニメや漫画、ボーカロイド楽曲やゲームなど、サブカルチャーと呼ばれるような文化に多く触れてきました。
その中で、なかなかその趣味を語り合える友達がいなかったり、まだまだそれらが市民権を得ていなかったこともあり、一番の趣味を隠しながら過ごしていることが大半でした。
そうした中で、今でこそアニメやボカロが世間に浸透していますが、Vtuberという文化もまた風当たりが強いものであったのは間違いないと思います。
未だにVtuberのことを「絵畜生」と言ったりそのファンのことを「バチャ豚」と呼んで虐げるような人々は絶えません。

こうした背景から、僕自身Vtuberという存在に、なにか少年時代の自分を投影して見てしまっているのです。
そんな中でまさにそのVtuber自身が作詞したこの『人より上手に』という曲が何よりも胸に刺さったのはもう言うまでもないでしょう。

僕は人よりも

歌い出しから出てくる「僕は人よりも」という歌詞が、それだけでもうこの曲の全てを物語っていると感じました。

「僕は人よりも」…。人それぞれその後に続くものが何かしらあって、コンプレックスや劣等感を抱えながら生きているのではないでしょうか。

それ自体が必ずしも悪いものかはわかりませんが、劣等感のせいで自分を縛って身動きが取れなくなってしまうことってよくあると思います。

僕自身も数々のコンプレックスを抱えながら生きてきて、いつも大事な時に一歩を踏み出す勇気が出ません。
失敗したり否定されたりするのが怖くて、いつもコソコソと遠回りしてしまいます。

そのうちに何をすることも出来なくなって心が内向きになり、自分の殻の中に閉じこもってしまう。
そんな自分を顧みては自己嫌悪に陥り、もう消えたい、いなくなってしまいたい、と願ったことは一度ではありません。

周りと比べたって仕方がない!自分は自分だ!ってわかってはいるけれど、どうにもそう踏ん切りがつかなくて今の今まで来てしまいました。

自分と周りを比べることで、他人に見下されることだけではなく、自分が他人を見下してしまうかもしれないということが何よりも怖いことです。

こんなふうに自分を好きになれずに他人と比較してばかりなのがまさに「僕は人よりも 上手く生きられない」ってことなんだとこの曲を聴いて気がつきました。
おかげでほんの少しだけ、前を向いて歩けるようになった気がします。

サビで歌われる「轍」という言葉が心に刺さりました。
轍とは車輪が通った跡のことですが、ここでは「自分が歩んできた人生」のことでしょう。

どんなに他人と比べて自分を否定しながら生きてきたとしても、そこまでの轍は確かにあって、歩んできた人生があるんです。

あれもしたいこれもしたいとか、出来ることが増えた現代だからこそ、僕たちの欲求が満たされることは永遠にないんだと思います。
でもそんな満たされない心に匙を投げるのではなく、その中でも心の中に残っているものを大切にしながら、誰にも左右されない人生を前向きに生きていこうと思わせてくれたこの曲に、感謝をこめて。


おわり

サポートがあればすぐ次書きます!!