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なぜ阪神は開幕から大型連敗しているのか

「イチにカケル」をスローガンに優勝を目指してスタートした2022年の阪神タイガース。しかし、開幕からまさかまさかの9連敗。一体なぜ、このような状況に陥ってしまったのでしょうか。

狂い始めたそもそもの元凶は、2月の終盤に起きた安芸キャンプのクラスターにあると、僕は考えています。これによって、罹ってしまった選手はもちろん、そうでない選手もホテルでの待機を余儀なくされ、チームとしての活動そのものが停止してしまいました。自主トレからキャンプを通じて作り上げてきた選手の身体もリセットとなり、行われるはずだった練習試合や教育リーグの試合も悉く中止に。一軍との入れ替えも不可能になり、一軍はずっと同じメンバーで、二軍の選手を試すこともなくオープン戦を戦う羽目になったのです。
この影響は今でも出ており、ファームは開幕から2週間ほどずっと苦しい戦いを強いられてきました。まだまだ個々の状態としては上がりきっていない選手も多く、あれだけ負けている一軍への戦力供給もままならない状況です。本来約70人ほどの中から一軍メンバーを決めることになりますが、そもそも約半分が開幕時点で使えなくなってしまっていたのです。あまりにも大きなハンデを背負ってのスタートでした。


コロナの影響はこれだけに留まりません。なんと、開幕まで10日を切った直前になって、開幕投手が内定していた青柳が離脱してしまったのです。阪神は既に2カード目の広島戦に相性の良い西、伊藤将、秋山の3人を回すことを決めており、青柳の離脱が決まった時点で彼らを開幕に投げさせるには、調整もなくぶっつけ本番で行かなければならない日程でした。結局、本来2戦目の予定だった藤浪を、開幕投手として向かわせることになりました。


離脱者は、コロナだけではありません。キャンプ中には先発、中継ぎ両方で期待されていたアルカンタラが離脱。3月になると、セットアッパー候補だった岩貞、先発から中継ぎへの再転換が決まっていた及川が相次いで離脱。また、3月始めには復帰すると思われていたガンケルも開幕絶望が決定的となり、開幕2戦目に続いて3戦目の先発投手も空白となります。
その結果、開幕初戦は昨年終盤は中継ぎをしていた藤浪、2戦目は2週間ほどしか先発として調整していないプロ初先発の小川、3戦目はルーキーの桐敷という一切計算の立たない開幕ローテとなり、中継ぎも小川の先発転向も含め、岩崎以外はほぼ一軍実績のない投手を集めた状態となってしまったわけです。

これらの結果、特に投手が全く計算できないまま開幕を迎えた阪神。その不安は、初戦から的中してしまうこととなります。
序盤から打ちまくり、8-3とリードして迎えた8回。開幕の5点差の8回だと、勝ちパに準ずる投手を送り出したいところですが、先程述べたように岩崎以外は計算が立たないため、首脳陣はポテンシャルの高い齋藤に期待をかけマウンドに送り出します。しかし、それが裏目に出てこの回結局4失点。完全に勢いはヤクルトに傾き、そのまま逆転負けを喫することとなります。
どうしても「岩崎を出していれば」というタラレバがチラつきますが、満塁弾でも追いつかれない5点という点差、若手投手を戦力化していくしかない状況、明日明後日も試合があること、右の山田から始まる打順等を考えると、岩崎を出さないことは自然であったように思います。ただただ「裏目に出た」という他ないでしょう。
ただ、開幕から痛い敗戦を喫したことは事実。この後2戦は一軍での先発経験がない若手投手を立て、中盤までは粘るも経験の少なさによるスタミナ切れにより敗戦。先発を早めに降ろしても耐えられるような中継ぎも当然おらず、考えられる継投策のどれもが博打という状況でした。打線も前日打ちながらも敗戦したのが尾を引いたのか、連続で完封されてしまいます。


そして、この最悪の流れで迎える次カードの広島は、開幕カードをビジターで3連勝と最高の流れに乗っていたのです。
広島での初戦は実績ある先発の西が期待通り試合を作り、打線もなんとか2点を挙げます。しかし、新外国人で抑えを任されていたケラーが前試合に続いてセーブに失敗し、サヨナラ負け。
そもそも、ケラーが来日したのは3月6日で、開幕から3週間を切った状況でした。そして実戦初登板は開幕10日前の15日。いくら1イニングとはいえ、正直多少無理させていたことは否定できません。しかし、中継ぎの相次ぐ故障により、スペックの高さは間違いのないケラーを使わない余裕はありませんでした。開幕戦では7点差から1点差まで迫られ山田から始まる強力クリーンナップを迎えるという最悪の状況で登板し逆転を許すという、これ以上なく乗り切れない状況。調整不足な面は否めませんでしたが、それでも彼しかいなかったのです。
ヤクルト戦に続き広島戦でも、初戦に派手な逆転負けを喫したことが尾を引き、2戦目3戦目と逆転で敗北。どこからでも逆転できる──そういう良い意味での余裕を相手に与えてしまった中で抑える力は、今の阪神にはありませんでした。
また、阪神の先発は安定して試合を作るタイプを揃えた布陣で絶対的な投手がおらず、これまでは強みであったこの点も、今回はマイナスに作用しています。終盤を抑えられる中継ぎがいなかったり、なかなか点を取れなかったりと、生き残っていた西、伊藤、秋山も活かすことができなかったのです。

続いて迎えた3カード目は巨人戦。そしてまたこの巨人も、前カードでビジター3連勝を決めて良い流れに乗っていたのです。
巨人戦の初戦では、相手エース菅野に対して初回三者連続三振、その裏に2被弾するという勢いの差を見せつけられ、完敗。2戦目の経験の浅い小川も流れは止められず、打線は最後追い上げるものの1点差の9回1死2・3塁からまさかのライナーゲッツー。なんとか同点に追いつきたい、負けたくないというチームの焦りが、またしても裏目を引き、最悪の流れをさらに加速させてしまいました。3戦目には前週に二軍で復帰したばかりのガンケルを即投入しますが、調整不足は明らかで初回に満塁弾を打たれ勝負あり。こうして連敗は9まで伸びたわけです。

離脱者の復帰を急ぐのも、また博打の一つです。あまりに早まると、調整不足であったり、最悪の場合故障の再発も有り得ます。ただ、それでもその選手がいないと困るというケースもあります。今回の阪神はあまりに離脱者が多く、とにかく戦力が戻ってこないことには始まらないという状況のため、復帰を急ぐのも無理はありません。なにしろ、彼らがいなくなった結果、負け続けているのですから。
しかし、これがまた、裏目に出ているのです。ガンケルはまさにそうでした。選手の大量離脱が負けを呼び、重なる負けが選手の復帰を焦らせ、焦った結果さらに負けを呼ぶ──この負の連鎖が、阪神の連敗を生み出しています。そして、まだまだ離脱者がいるため、早く勝ち始めないと、彼らの復帰も焦らせることとなり、負の連鎖を断ち切ることがさらに難しくなってしまいます。どんな形でもいいので、とにかく勝つしかこれを止める方法はありません。

ここからは、よく見かける「連敗の要因」について、個人的に思うことを書きます。

・監督の退任宣言でモチベーションが落ちた
→選手はあくまで個人事業主で、自分が頑張らないと給料が下がり、最悪の場合職を失うので、そこを理由にする選手はあまりいないのではないか。

・〇〇(選手、監督等)が悪い
→もはや誰かのせいという次元は超えた。野球というスポーツは1人の力で勝ち続けるのも負け続けるのも難しい、そんな単純ではない。そもそもコロナが悪い

・打線が悪い
→打線は意外と打っている。どちらかというと先発投手が崩れていることが最も大きいとは思うが、正直先発、中継ぎ、打線の全てが日によって良かったり悪かったりで、これまた噛み合っていないことが連敗の要因。

・編成ミス
→今年はそもそも戦う中で若手を育てて戦力を増やしていく予定だった。それがコロナや故障でさらに戦力を削がれたために厳しくなったというのが実情で、ここまで編成段階で予見するのは難しいと思う。

・運が悪い
→これはそう。というか何よりこれ。運の悪さなしに2桁前後の連敗をする方が難しい。

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