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絶対わかる「変化球」

野球では投手が様々な変化球を交えて打者と勝負します。しかし、その種類はあまりにも多く、よく分からないという方や見分けがつかないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、現在プロ野球ではどんな変化球が用いられ、それぞれどんな変化をするのかという話をしていきます。皆さんもきっと中継を見ながら「これはスライダーだ!」なんてわかるようになります、この記事を読めばね!

解説の前に

今回の解説では、まず球種を大まかな種類に分け、その後具体的に見ていきます。中継でも見分けられるようにその球種の変化や球速なども載せますが、日本プロ野球(NPB)での一般的なものであり、全投手に当てはまるというわけではありません。その球種を得意とする選手も主な選手数名を記載します。

速球系

まずは投球の中心となる速球系から。速球も全く変化しないわけではないので、れっきとした「変化球」の一種です。とはいえ、ストレートとツーシームに関しては基本的に直球として扱われますが。

ストレート(フォーシーム)

  1. 変化:ほとんどしない。しかし、中には中継でもわかるほどシュート回転する投手や逆にカット回転して「真っスラ」になる投手も。

  2. 球速:140km/h〜160km/h

  3. 解説:いわゆる「直球」。投げた時に球の縫い目(シーム)が1回転で4回見えることから別名フォーシーム。ほぼ全ての投手が投じる基本の球である。よく言われる「最速○○km/h」はこのストレートの速さのこと。

  4. 主な使い手:湯浅京己(阪神)、佐々木朗希(ロッテ)、大谷翔平(エンゼルス)など

ツーシーム

  1. 変化:投手の利き手方向に少し沈む(右投手なら右打者方向)速球。中には落ちる球に近い変化をする投手も。

  2. 球速:135km/h〜150km/h

  3. 解説:投げた時に球1回転で2回縫い目が見えることがその名の由来。打者の手元で少し沈むため、ゴロを打たせやすい。近年は球数を減らして負担を軽減するためにこの球を習得して活用する投手も多い。

  4. 主な使い手:青柳晃洋(阪神)、山崎康晃(DeNA)、大野雄大(中日)など

シュート

  1. 変化:投手の利き手方向に少し曲がる速球

  2. 球速:135km/h〜145km/h

  3. 解説:主に右投手が右打者を、左投手が左打者を打ち取るために使う球。打者の体方向に食い込ませ、インサイドへの意識付けをしたり詰まらせてゴロを打たせたりする。ツーシームとほぼ同じ扱いをされることが多い。ストレートが自然とこの球に近い軌道を描く(シュート回転)投手もいる。

  4. 主な使い手:西勇輝(阪神)、木澤尚文(ヤクルト)など

曲がる系

変化球の代表とも言えるのがこの曲がる系統の球種。傍目にも変化しているのがわかりやすく、またストレートの次に高い割合を占めることが多いのもこの系統である。

カーブ

  1. 変化:一度浮き上がってその後落ちる、弧を描くような軌道

  2. 球速:95km/h〜125km/h

  3. 解説:基本的には最も遅い球。緩急をつける意味でよく使われる。カーブの中にも様々な種類があり、より遅い”スローカーブ”や曲がりの大きい”ドロップカーブ”、爪を立てて投げる”ナックルカーブ”や高速で鋭く曲がる”パワーカーブ”などがある。カウントを取る意味合いで使われることが多いが、カーブに自信のある投手は決め球として用いることも。

  4. 主な使い手:K.ケラー(阪神)、山本由伸(オリックス)、宮城大弥(オリックス)など

スライダー

  1. 変化:投手の利き手と逆方向に曲がる(右投手なら左打者方向)球。中には縦方向に曲げる投手も。

  2. 球速:120km/h〜140km/h

  3. 解説:現在ほとんどの投手が投げる球種。曲がり幅の調整や変化する方向の調整もしやすく、1人の投手が複数のスライダーを操ることも珍しくない。用途もカウントを取ったり空振りを狙ったりと様々。カーブに近い軌道の”スラーブ”や縦に曲がる”縦スラ”など、種類も豊富。

  4. 主な使い手:青柳晃洋(阪神)、ダルビッシュ有(パドレス)、山岡泰輔(オリックス)など

カットボール

  1. 変化:ストレートとスライダーの中間のような球。少しだけ利き手と逆方向に曲がる。

  2. 球速:130km/h〜145km/h

  3. 解説:球を切る(カットする)ように投げることがその名の由来。ツーシームと似たような用途で、ストレートと見せかけて少し変化させることでバットの芯を外してゴロを打たせることが狙いの球種。またカウント稼ぎにもよく使われる。速すぎず遅すぎずで使い勝手がよく、近年はこれを投げる投手も多い。

  4. 主な使い手:伊藤将司(阪神)、大瀬良大地(広島)、平良海馬(西武)など

落ちる系

打者の空振りを狙って投げられることが多いのがこの落ちる球。なぜ落ちるかと言うと、スピンをかけないように投げることで空気の抵抗を受けるから。日本の投手は落ちる球を得意とする人が多い。

フォーク

  1. 変化:縦に大きく落ちる

  2. 球速:130km/h〜145km/h

  3. 解説:指2本で球を挟んで投げる様子がフォークに見えることがその名の由来。ストレートに近い軌道から大きく落ちることで打者の空振りを誘う。そのため、決め球として使われることが多いが、近年はやや高めに投げることでカウント球として使う投手もいる。

  4. 主な使い手:湯浅京己(阪神)、千賀滉大(メッツ)、戸郷翔征(巨人)など

スプリット(SFF)

  1. 変化:高速に少し縦に落ちる

  2. 球速:135km/h〜150km/h

  3. 解説:フォークより浅く挟むことで、よりストレートに近い速さで落とす球種。フォークよりは落差は少なくなるが、用途としてはフォークとほぼ同じ。打者にとって見極めが難しい球種の一つ。

  4. 主な使い手:西純矢(阪神)、大谷翔平(エンゼルス)、髙橋宏斗(中日)など

チェンジアップ

  1. 変化:スピードを抑えた緩い球。落ちる変化をする

  2. 球速:110〜140km/h

  3. 解説:緩急をつけたり、空振りを狙って投げたりと万能な球。高低だけでなく打者のタイミングを外せるため、近年流行りの球種の一つ。打者はこの球種に対して、体を前に出されたような対応になりやすい。投げ方によって”サークルチェンジ”や”スプリットチェンジ”などと更に細かく分けられることも。

  4. 主な使い手:岩崎優(阪神)、今永昇太(DeNA)、高橋奎二(ヤクルト)など

シンカー

  1. 変化:投手の利き手方向に曲がりながら落ちる

  2. 球速:125〜140km/h

  3. 解説:主にサイドスロー、アンダースローの投手がフォークの代用として投げることが多い。ストレートの軌道からややスライド気味に落ちる球種で、ゴロを打たせたり空振りを狙ったりする。

  4. 主な使い手:石井大智(阪神)、石川歩(ロッテ)、與座海人(西武)など

スクリュー

  1. 変化:投手の利き手方向に曲がりながら落ちる

  2. 球速:110km/h〜130km/h

  3. 解説:カーブと逆の軌道を描くようにして落ちる球種。使い手が少なく、その中でも左投手が多いため、左投手版シンカーだと思われがちだが、変化の軌道が違うため別の球種である。

  4. 主な使い手:石川雅規(ヤクルト)など

パーム

  1. 変化:球速が遅く、縦に大きく落ちる

  2. 球速:110km/h〜125km/h

  3. 解説:手のひらで包み、押し出すようにして投げる。その投げ方故に負担は少ないが、コントロールが難しいため、今ではチェンジアップがその代替として多投されるようになっている。打者の意表を突くために使われることが多いが、そもそも使い手が少ない。

  4. 主な使い手:浜地真澄(阪神)、床田寛樹(広島)

特殊球

これまでのどれにも分類されない球種。費用対効果の問題などもあって使い手は少なく、ほとんど見かけることはないかもしれない。

ナックル

  1. 変化:無回転のため、空気抵抗を大きく受け揺れるように不規則に変化しながら落ちる

  2. 球速:100〜110km/h

  3. 解説:指を突き立てて押し出すように投げる。特殊な投法と技術を要するため、打者に判別されやすく、この球を投げる投手は基本これ一本で勝負する(ナックルボーラー)。捕手が捕ることも難易度が高いため、高い技術が求められる。

  4. 主な使い手:山崎康晃(DeNA)、坂田怜(広島)など

イーファス・ピッチ

  1. 変化:大きく縦に割れるような変化

  2. 球速:100km/h未満

  3. 解説:いわゆる“超スローボール“。大きく山なりに投げるため、打者にとってはわかっていても逆に打ちにくい球となるが、ストライクを取ることも相当難しい。

  4. 主な使い手:伊藤大海(日本ハム)、岡本直也(ソフトバンク)など

まとめ

野球には、このように多種多様な変化球があります。そして同じ球種でも、十人十色のスピード、変化があります。それ故に個性が出て野球を面白くする一因となっています。また、変化球は「その投手がそう呼べばそうなる(周りにはカーブに見えても、投げる人がスライダーと言えばスライダー)」ため、そこも難しくて面白い部分ではあります。
調べても調べても奥の深い“変化球”という分野に、この記事から少しでも興味を持っていただければ幸いです。




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