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秋山交代のワケ

8/16のカープ戦で矢野監督は無失点投球をしていた先発の秋山拓巳を5回でマウンドから降ろす決断をした。結果的にはその後中継ぎ陣が守備の乱れもあって失点し追いつかれ、そのまま引き分けとなった。この投手交代はなぜ行われたのか、意図を考えていこう。

1.打順の巡り合わせ

5回で降りた理由はやはり打順の巡り合わせの側面が大きい。試合展開としては初回に2点を先制した阪神がそのまま2点のリードを取っている状況だった。しかし、初回の2点だけで簡単に逃げ切れるほど野球は甘くない。特に広島はここまでチーム打率がセリーグトップであり、なおかつ未だに完封負けがない。打線の怖さがあるチームなのだ。そのチーム相手に初回の2点だけで逃げ切るという考えはなかなかできず、やはり追加点が欲しい展開である。
そこで5回裏、阪神の攻撃は9番の秋山からであった。後ろにはここまで13試合連続安打中の近本、遠藤からヒットを放っている糸井、得点圏の鬼サンズが続く打順である。矢野監督はここが追加点のチャンスだとにらみ、対右投手では力を発揮する高山を代打に送る判断を下した。これが”阪神側の”打順の巡り合わせの問題である。

打順の巡り合わせの問題は広島側にも存在する。6回表、広島は3番長野、4番鈴木、5番松山、6番堂林と続く打順であった。つまり広島はクリーンナップから始まるわけである。秋山はここまでに長野、鈴木にはヒットを許しており、また今季の過去対戦で鈴木と堂林には本塁打を打たれている。要するに秋山にとってこの並びはあんまり得意な並びではない。そして対戦としても3巡目、打者の目も慣れてくる頃である。リードはわずか2点、秋山に代打を出して追加点を狙い、広島のクリーンナップをリリーフで抑えよう…そういう判断である。

2.秋山の起用法

上の画像は秋山の今季の投球イニングと球数である(データで楽しむプロ野球より)。実は秋山が100球以上投げたのは20点の援護を受けて完投した試合だけなのだ。その試合を除けばだいたい6イニング、80〜90球程度で交代していることがわかるだろう。そしてこの日は5回82球であった。これは初回に熊谷のエラーもあってピンチを背負い、1イニングで27球投げた影響が大きく出ている。ここまでの起用法と打線の巡りを考えても、もう1イニング〜2イニング引っ張るよりは先頭で打席が回る5回で代打を送ってスパッと代えてしまおうという判断になったというわけだ。

3.中継ぎ陣の強化

今季は非常に不安定な阪神の中継ぎ陣だが、ここに来て大きな強化が図られた。岩崎の一軍復帰と岩貞の中継ぎ転向である。2人の左腕によってブルペン陣は一時よりも厚みを増し、また信頼度も上がった陣容となった。これによって6〜8回まで相手の打線の巡りにも合わせて左腕の岩崎と岩貞、右腕のガンケルと馬場を起用し、9回には守護神のスアレスで抑えるという計算が立つようになったのだ。岩崎は復帰してからの登板は二軍戦での1試合のみだが、その試合では1イニングを2奪三振、無失点に抑え、首脳陣も問題ないと判断して一軍復帰となった。岩貞は前日にリリーフとして初登板を果たしており、元々能力の高い投手であるためリリーフとしては首脳陣の信頼は高いと思われる。馬場もここまで奮闘しており、ガンケルはイニング跨ぎも可能な中継ぎの現在の柱である。この日は日曜日であるため明日に試合はなく、3連投以上になる可能性のある投手もいなかったため、彼らをフルで使える状況であった。矢野監督の頭の中には秋山を5イニングで降ろしても問題ないと判断できるだけのリリーフの陣容・状況が描かれていたはずだった。

結論

秋山の5回無失点での交代は秋山自身のスタミナ、お互いの打順の巡り合わせ、試合展開、ブルペン陣の強化によって判断されたものであると言える。しかし、結果としてこの試合をものにすることができなかった。理由としてはやはり秋山の球数を増やすことになってしまった(結果的に秋山の交代を早めた一因にもなった)初回の熊谷のエラー、そして追いつかれる展開に持ち込んでしまった8回の植田のエラーが大きかった。継投は大事であるが、相手あってのことであり100%成功させることは難しい。その中で成功率を高めるためにはバックの守りも大切になる。そういう視点からすると、この試合は守備が引き起こした継投失敗とも言えるのではないだろうか。

本題からややずれた結論にはなってしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました!

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