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2021年の二軍について

阪神タイガース二軍3年ぶりのウエスタンリーグ制覇おめでとうございます。今回は阪神の二軍を1年間見てきて、思ったことや感じたことを色々書いていけたらなと思います。

全体の戦いを振り返って

まず、昨季の話から始めますが、昨季の阪神はウエスタンリーグ最下位でした。一昨年に高卒選手を多く獲得しており、彼らを積極的に起用し続けた結果なのでこれは仕方がないのですが、全体的に打力不足が深刻化しており、一軍にも打撃力のある選手を送り込むことはあまりできませんでした。
今季も開幕からあまり順調な戦いはできていませんでした。開幕から1ヶ月経過した時には最下位。そこからさらに2ヶ月ほど経った6月終わり頃でほぼ勝率は五分の3位であり、首位ソフトバンクからはおよそ7ゲーム差つけられるなど、正直この時点で今年優勝するだなんてとても思えなくなっていました。この頃までは投手陣が苦しく、2年目の西純が防御率5点台近辺など伸び悩み、開幕投手を託した浜地も安定感を欠き、守屋や加治屋といった実績ある投手も度々炎上するなどといった状況が続いていました。
しかし、7月に入ると、怒涛の快進撃が始まります。なんと7月以降は、たったの5敗しかしていません。先発投手の安定感が出てくると、中継ぎにも安定感が生まれ始めました。また、野手の方では井上や小野寺がチームを引っ張り、そこに一軍と入れ替わりつつ守備走塁が持ち味の中堅選手が流石の経験を見せることで、随分と落ち着いた野球ができるようになりました。特に野手に関しては、結果を残した選手が一軍へと呼ばれていきメンバーが入れ替わる中で強さを維持し続けたこともあって、昨年と比較した時にかなり層が厚くなったことを実感させてくれました。
終盤戦になると逆転勝利や僅差の勝利もかなり増え、逆境でも諦めない、二軍とはいえプレッシャーのかかる展開で己の実力を発揮するという「強い選手」が増えてきたように思います。この「強い選手」を育てることこそが平田勝男二軍監督の根底にある目標であり、ようやくそれに応えられる選手が芽生えてきたのだと感じました。この強さがあったからこそ、ほとんど負けないソフトバンクに対して18連勝で追いつき、完全に一騎打ちとなった優勝争いを制することができたのでしょう。この半年強で本当にチームは強くなりました。

ファームMVP:村上と榮枝、長坂

平田監督はMVPとして投手はルーキーの村上、野手は捕手の榮枝と長坂を挙げました。彼ら3人はシーズン中に大きく成長した3人です。
村上は大卒5位で加入しましたが、当初は怪我しており、開幕当時は投げることができていませんでした。しかし復帰すると、1勝1敗のところから9連勝。投げるごとに進化し、緩急をつけた投球や新たな変化球の習得など、試合を安定して作ることができるようになりました。一軍では2試合投げて2敗と壁にぶつかっていますが、ルーキーでいきなり一軍挑戦できることは立派です。
榮枝も同じく大卒ルーキーで、開幕直後に疲労骨折して復帰には3ヶ月弱を要しました。当初はプロの投手の球を止めることに苦労し、試合を作ることに四苦八苦していましたが、試合に出る中で急成長し、夏場には主戦捕手としてチームを18連勝に導きました。課題だったブロッキングもかなり改善され、配球面でも研究しその成果を発揮しました。打撃面でも、勝負強い打撃で投手を、チームを助ける場面が目立ちました。
同じく捕手の長坂は、榮枝が故障中は主戦捕手として、復帰後は2番手として貢献しました。長くファームの投手と組んでいるだけあって、落ち着きぶりやブロッキングの上手さ、スローイングの精度は監督に高く評価され、榮枝と比べると目立たなかった部分がありながらもMVPに認定されています。

2年目選手の躍動

新人だった昨年に出場機会を多く与えられながらもプロの壁にぶち当たった2年目の選手たちも今季のチームを引っ張りました。
最も目立ったのは、大卒2年目の小野寺でしょう。開幕は育成選手として迎えましたが、広角に打ち分ける打撃を武器に結果を残し続けて4月に支配下登録を勝ち取ると、その後は一二軍を行き来しつつも二軍では安定した成績を収めました。自身初タイトルとなる首位打者や最高出塁率はほぼ確定的です。守備では内外野様々なポジションを守り、打撃では試行錯誤しながら結果を出して何度も一軍挑戦するなど、飛躍の足がかりを作ったシーズンとなりました。
高卒2年目の及川は開幕直後から安定した投球を続けると、5月に一軍昇格し、そこからは二軍に帰ってくることなく好投しています。同じく高卒2年目の西純も二軍で好投すると一軍で先発しプロ初勝利。その後は調子を落としフォームを修正するなど見つめ直した結果、後半戦は威力を増したストレートで奪三振率を大きく向上させました。自身初の規定投球回にも到達し、今後の成長を期待させる1年になったと言えるでしょう。
高卒2年目野手では、井上の活躍が光りました。故障の影響で出遅れ、序盤はなかなか数字が上がってきませんでしたが、夏場になるにつれて爆発力を見せ、4番として本塁打と打点を量産。昨年は夏場に調子を大きく落とし、その反省から体づくりを見直して夏場に強い選手となりました。しかし、最後は故障により優勝の瞬間には立ち会えず。この悔しさはきっと来年活かしてくれることと思います。
また、高卒2年目の遠藤の成長も見逃せません。昨年はプロの壁に苦しみ、打率は1割台。守備でもミスが多く、監督に叱られる姿が目立ちました。今季もなかなか結果が残せず、ベンチとなる試合もありましたが、秋口になると故障者が続出したことでスタメン起用が続きました。それに遠藤はきっちりと応え、追い込まれても粘り、広角に打ち分ける力強い打撃で最後は7試合連続安打でフィニッシュ。遠藤に対しては叱責の多かった監督も、褒める場面が増えてきました。来年は開幕から期待したいところです。

ベテランの存在

ファームといえば若手たちが牙を研ぐ場所だと思われがちですが、その若手たちの模範となるベテランの存在を見逃せません。一軍経験の乏しい若手たちにとって、一軍実績や経験の豊富なベテランたちの存在は貴重であり、その存在の有難みは何度も平田監督が口にしてきました。
特に今季限りでの引退を発表した俊介は、故障もあってここ2年は二軍暮らしが続いていました。二軍での出場も少ない中、毎日のように朝早く球場に来て黙々とランニングをしていたそうです。また、同じく今季限りでの引退を表明している中田も、阪神に来てからの2年間は主に二軍暮らしでした。しかし、ウォーミングアップから手を抜くことなく、最後の一歩まで大事に取り組んでいたそうです。このような姿は必ず若手たちも見ていると思いますし、こういうベテランたちがいるからこそ、二軍であっても気が引き締まり、それが強さに繋がったのだと思います。
今のチームは若返りが急速に進んでおり、こういったベテランはユニフォームを次々と脱ぐことが決まっています。しかし、彼らがいなくなっても、それを見て育ってきた若手たちが大きく飛躍し、そしてまた新しく入ってくる選手の見本となってくれると信じています。このサイクルがチームの黄金期を築いてくれるはずです。

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