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新神戸駅を出て…

新神戸駅。それは、神戸の中心地から少し離れた位置にある、山陽新幹線の駅だ。新幹線の駅としては決して大きくはないが、「のぞみ」も含めた全ての列車が停車することもあってけっこう便利で……いや、そういう話がしたいわけではない。僕が新神戸駅の話を始めた理由は、この駅の周辺の特徴にある。通ったことがある人は知っているかもしれないが、この駅は長いトンネルと長いトンネルの一瞬の狭間に作られている。長大なトンネルを抜けたと思えば、束の間の停車でまたトンネル───そう、まさに今の阪神タイガースの状況にそっくりなのだ。

開幕してからというもの、タイガースは苦難続き。開幕戦で大逆転負けを喫すると、そこから完封負け、サヨナラ負け、逆転負けとあらゆる負け方を網羅。そしてある日はホームランを固め打ちされ、また次の日にはライナーゲッツーで試合が終わり、その次の日には初回に満塁弾を浴びた。あれよあれよという間に、リーグ最長記録となる、開幕9連敗を記録していた。
しかし、そんな長大なトンネルも、一度は終わりを迎える。先発陣の柱の一人である西勇輝が意地を見せ、無四球完封の快投を披露したのだ。4番がホームランを放ち、エースが完封する。最高の勝ち方であった。
ただ、そこからまたトンネルに入ってしまう。主に投手陣が苦しんでいた前半の連敗とは打って変わって、今度は打線が絶不調に陥った。現在52イニング連続でタイムリーヒットからは遠ざかっており、挙げた得点もここ5試合で3得点。複数得点を記録したイニングも1週間以上なく、打線を組み替えてもハマらない。終わりの見えない、真っ暗闇の長大なトンネルを今まさに走っている。

それでも、悪いことばかりではない。ここまで今の阪神は新幹線の新神戸駅周辺の状況と似ているという話をしてきたが、長い目で見ると、この路線にはさらに特徴がある。実は、新神戸駅周辺の長大なトンネルを抜ければ、その後はしばらくトンネルが一切存在しないのだ。西は西明石駅を通り過ぎて姫路駅を超えるまで、東は新大阪駅を通り過ぎて京都駅を超えるまで、一切トンネルがない。新神戸駅を出発した阪神は今、またトンネルを通過している最中だが、ここさえ抜ければ……そう思わずにはいられない。

そして何より、タイガースの旅はまだ始まったばかり。目指す目的地までが遠いのならば、より速い列車に乗り換えたっていい。そうすれば、きっとまだ間に合うはずだ。そんなのぞみを胸に抱いて、僕は今日もタイガースを応援する。

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