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絶対わかる「セーブとホールド」

皆さんは「セーブ投手の条件」「ホールド投手の条件」を正しく説明できますか?おそらく、「3点差以内で出てきて抑えたらつくもの」くらいの認識の方が多いのではないかなと思います。そこで今回は、意外とややこしい、でも覚えてしまえばそうでもないかもしれないリリーフ投手に関する記録の話をしていきましょう。

セーブとは

セーブとは、簡潔に説明すると、僅差の試合を締めくくった投手につく記録のこと。略称で「S」と表記されることも多いですね。ちなみに、日本ではあまり有名ではありませんが、MLBではセーブに失敗することを「ブロウンセーブ(BS)」と言います。では、ここからは本題に戻って、そのセーブがつく条件について細かく見ていきたいと思います。

セーブ投手の条件(大前提)

①勝利投手でないこと
大前提その一です。勝利投手はセーブをあげられません。セーブより勝ちが優先されるためです。ちなみに、勝利投手とセーブ条件を満たすこととが共存するケースってあるの?と思うかもしれませんが、あります。これは後ほど説明しますね!

②勝利チームの最後の投手として投げること
大前提その二です。試合を締めくくった者にしかセーブは与えられません。

③1/3イニング以上投げること
大前提その三です。アウトを一つでも取らないと当然セーブの権利はありません。

④同点・逆転を許さずにリードを守りきって試合を終わらせること
セーブは勝ち試合を守りきる必要があります。同点、逆転を許した時点で、セーブ条件を満たした条件下で登板していたとしてもセーブの権利は消失します。

セーブ投手の条件(場合分け)

上の①〜④を満たした上で、以下のどれかの状況に当てはまる場合にセーブが記録されます。

A:登板時のリードが3点以内かつ1イニング以上投げる
一番よくあるケースです。いわゆる「抑え」の役割を担う投手が出てくるパターンですね。この場合、アウトを3つ取ることが必要です。
例)2点リードの9回に出てきた湯浅投手が、リードを保ったまま1イニングを投げきった。(セーブ:湯浅)
例)3点リードの8回2アウトから出てきた大勢投手が、イニングを跨いでリードを保ったまま試合を終わらせた。(セーブ:大勢)

B:ここから二者連続本塁打で同点・逆転という状況で登板する
しばしばあるケースです。4点差や5点差があって抑えでない投手を出したものの、その投手がピンチを招き、抑えを出すことになったパターンが多いですね。この条件を満たす場合、登板時のアウトカウントは関係ありません
例)5点リードの9回に投手Aをマウンドに送ったが、1アウトしか取れずに満塁の走者を溜めてしまった。ここでバトンを受けた山崎康晃投手が残り2アウトを取り、チームは逃げ切った。(セーブ:山崎康晃)
例)4点リードの8回に投手Bをマウンドに送ったが、2アウトを取りながらも走者2人を溜めてしまった。絶対にこの試合を勝ちたいチームは、ここで栗林投手を投入。栗林投手はこのピンチを切り抜け、そのまま9回も3つのアウトを取りチームは逃げ切った。(セーブ:栗林)

C:3イニング以上投げる
オープン戦や二軍戦でたまに見られるケースです。一軍では珍しいですが、ゲームでこのパターンを知った方もいるかもしれませんね。この場合、登板時の点差やアウトカウントは一切関係ありません。ちなみに、前提条件①で述べた「勝ち投手でないこと」がここで重要になり、同点の状況でマウンドに上がり3イニング以上を投げる中で勝ち越し点をもらって試合を締めたとしても、その投手は勝ち投手になるためセーブはつきません。
例)7点リードの7回、なるべく投手を消費したくないチームは馬場投手をマウンドへ送って最後まで投げさせた。馬場投手は2点を失ったものの、無事3イニングをリードを保ったまま投げ切った。(セーブ:馬場)
例)同点の6回、チームは第2先発として西純矢投手をマウンドへ送った。西投手は7回に自ら勝ち越しタイムリーを放ち、そのリードを守って9回まで投げ切りチームは勝利を収めた。(勝:西純矢 セーブ:なし)

ホールドとは

ホールドとは、最後に投げる抑え投手ではない中継ぎ投手を評価するための記録のこと。略称は「H」になります。ちなみに、ホールドポイント(HP)は、ホールド数と中継ぎでの勝利数を合計したもの。最優秀中継ぎ投手のタイトルはホールドポイントで争われます。

ホールド投手の条件(大前提)

ホールド投手の条件は、セーブ投手の条件と似ている部分も多いですが、少し複雑になっています。

①先発投手、勝利投手、敗戦投手、セーブ投手のいずれでもないこと
ホールドは中継ぎ投手の記録です。先発しても試合を締めても記録されません。また、勝利や敗戦の記録と並列することもありません。

②最終回最後のアウトを取っていないこと
セーブとの大きな違いです。引き分けに終わった試合の延長12回最後のアウトを奪った投手にホールドが記録されないのは、この前提条件が存在するからです。

③1/3イニング以上投げること
これはセーブ条件と同じです。アウトを取らなければホールドも記録されません。そのため、ワンポイントで打者1人に四球を出して即交代した投手にはホールドは記録されません。

④降板後に自身の失点により同点・逆転されていないこと
投手には失点という概念があり、もしA投手が許した走者を残したままB投手に交代し、その残った走者をB投手が帰してしまった場合、A投手の失点として記録されます。この失点で同点、逆転となった場合、A投手にホールドは記録されないというのがこの前提条件の意味です。

ホールド投手の条件(場合分け)

セーブの時と同じく、上の①〜④の前提条件を満たした上で以下のいずれかに当てはまる場合、ホールドが記録されます。

A:チームがリードしている状況で登板し、下記の”条件”を満たした上でリードを保ったまま降板する
ここでいう”条件”とは、上記のセーブ投手の条件(場合分け)のA〜Cのことです。そのため、詳細は上に戻って確認してください。
登板時のリードが3点以内かつ1イニング以上投げる
・ここから二者連続本塁打で同点・逆転という状況で登板する
・3イニング以上投げる
例)3点リードを保って5イニングを投げた先発投手Aに代わり、6回を岩貞投手が、7回を岩崎投手が、8回を石井投手がいずれも0に抑えて9回に繋いだ。(ホールド:岩貞、岩崎、石井)
例)4点リードで7回2アウトまで先発投手Bが投げたが、急に崩れて走者2人を許した。ここで救援した浜地投手がピンチを凌ぎ、4点リードの8回はK.ケラー投手が1イニングを抑えた。(ホールド:浜地 ※K.ケラーは4点差で登板のためホールドなし)

B:同点の状況で登板し、失点を許さずに降板する
ここでいう”失点”は、自身の失点と前の投手が残した走者を帰したことによる失点とを区別しない。とにかく同点の状況を守ったまま次に繋ぐかどうかだけが焦点となる。
例)同点の5回、走者を2人出すなど崩れ始めた先発投手Cに代わって加治屋投手が登板。このピンチを見事に凌ぐと、6回には岩貞投手が無失点、7回に岩崎投手が無失点に抑えてその直後に1点を勝ち越し、8回は石井投手、9回は湯浅投手が抑えて勝利した。(勝:岩崎 ホールド:加治屋、岩貞、石井 セーブ:湯浅)

C:登板中に自チームが勝ち越し、そのリードを保って降板。その後自チームが追いつかれる
実はこれもホールドがつくケース。というのも、登板中に自チームが勝ち越してそのリードを保ったまま降板しそのまま勝てばその投手は勝利投手になるのでホールドはつかないのですが、チームが追いつかれた時点でその投手の勝利投手の権利は消滅するため前提条件①の勝利投手でないことを満たすことになり、ホールドがつくというわけですね。
例)同点の7回にK.ケラー投手が登板し無失点に抑えると、直後に味方が勝ち越し。しかし8回に中継ぎ投手Dが打たれてチームは逆転負けを喫した。(ホールド:K.ケラー)

まとめ

以上がセーブ、ホールドのそれぞれの条件です。難しいかもしれませんが、具体例もつけてみたので、少しでも理解が深まれば幸いです。こうした記録系は難しいものが多いですが、知ることで野球をより深く楽しむことができると思っています。これからも色々な視点から野球を楽しめるように記事を書いていこうと思います。ここまで読んでいただきありがとうございました!




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