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The Strong Hexamid - 悪天候時にタープをフルクローズする

 2018年にDD Tarp 3x3 Superlight Tarpを購入したのだが、これを山のテン場でも使ってみたいと常々思っていた。

 しかし、日本の登山の世界ではタープ(広義の、非自立式シェルター)は邪魔者とされている。何故か?幕営面積を取るからだ。海外と違いテントは決まった場所に張るものだし、そのテン場は狭く、まずタープを張るためには、平坦ないい場所を取るために早着しなければならない。
もし寝坊したり、何か予定外のことが起こりテン場が埋まっている場合、交渉の末山小屋泊となったり、最悪撤退もあり得る。

 ハイシーズンの雲取山、三条の湯。川の中しか空いておらず、岩の間にタープを載せて湿気をモロに浴びながら寝たのは痛い思い出だ。
 タープの場合はこの危険性が自立式の山岳テントと比べ高い。
張れたら張れたでまた顰蹙だ。なにせ、一人分のシェルターで2人3人分と占有するのだから。後着の登山者からはさぞ迷惑に見えることだろう。

■主なシェルター遍歴とサイズ
行く場所によって切り替えている。しかしツェルトが一番無難だ。
(1) アライテント エアライズ1
幕営時 205x100cm

(2) アライテント ツェルト1ロング
幕営時 210x80cm 230g

(3) EQUINOX Globe Skimmer Ultralite Tarps 6×8
平面時 245x183cm 295g
https://moonlight-gear.com/?pid=23439365

(4) DD 3x3 SuperLight Tarp
平面時 300x300cm 500g

(5) Locasgear Khufu
幕営時 270x160cm 320g
https://locusgear.com/items/khufu-dcf-b/

(6) Zpacks Plexamid
幕営時 254x157cm 433g(蚊帳とグラウンドシート含む)
https://zpacks.com/products/plexamid-tent

(7) FineTrack+Highland designs ツェルト2ロング
380g

(エアライズの幕営時のサイズ)

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これの対策としては、以下が考えられる。
A. ハイシーズンの人気のテン場を避ける(涸沢etc)。
冬に行けばそもそも人がいない。平日はちょっと・・。

B. 区画が切られたテン場にする。
これは1区画がそもそも小さすぎる、といった場所もあるので諸刃の剣。

C. 予約が出来るテン場にする。(甲斐駒ヶ岳 七丈小屋..冬季は予約不要)
コロナの影響でテント泊も予約が必要なところが増え、無理な詰め込みリスクは少なくなったので、逆に非自立式ユーザとしては嬉しい。

D. そもそも、泊まらない
車中泊などで前泊して夜明け前に早出すれば、日帰りピストンで下山できる。体力がいるし予定がストレッチになりがち。
割り切って、徒歩キャンプで満足しておくか。

そんな時、この張り方に出会った。

Tarp camping in awful weather: yes it's possible with these 5 enclosed setups
「ひでぇ天気でタープキャンプ?できるよ! 5つの閉じられた張り方」
https://youtu.be/L8lw64__n8M?t=288

「Strong Hexamid」。直訳して強い六角錐。
2017年にオランダのPapa Hiker氏の考案したPitch(張り方)で、タープの欠点である「風通しの良さ≒耐候性の低さ・プライバシー」と、「幕営面積の広さ」。これらを解決するPitchだ。

しかし、「設営に練習が要る」ファスナーがないための「出入りが面倒」、タープはシルポリの1枚布なので当然「換気の悪いシングルウォールシェルターの結露」はつきまとう。

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(2018年12月、閉鎖前の奥多摩小屋)

 他には、大きい布を使う割にシェルターの広さはギリギリで、さほど軽量化に貢献していない件も挙げられる。
これは、Khufuなど専用の立て方のためにカットされているテントと比較すると、仕方がない。かといって余計な部分をカットしたり、ファスナーを付けたりと加工はしたくない(其れ位だったらツェルトにする)。。場所がなければトイレの壁にLean-Toしたり、マタギスタイルで体に巻きつけてもいい。タープ特有の臨機応変さを捨てたくないけど、ハイキングのバックパッキングでも使いたい、という我儘な願望なのだ。

課題。

■出入りのし難さ
これはドア部分の自在をLineloc WSR3に帰ることで解決した。
https://outdoormaterialmart.jp/items/lineloc-wsr3/
三鷹のHiker's Depotや、Outdoor Material Mart(Locasgearと同様)から通販で購入できる。
 ドアを、引き解け系の結びで固定してもよいが、地面が雨や湿り気のある雪だとトイレから手を洗って帰って、泥だらけのガイラインを触る羽目になる。撤収のときにはめるゴム手袋を使っても良い。
 最近、7mm x 10mの補助ロープを持ち歩くようになったので、リッジラインを張って、クレイムハイストなりプルージックなどフリクションヒッチで、結び目を握り滑らせても良いな。

■結露問題
 今の所、これはBivy併用で。3シーズンはAs Tucas Mirallis Bivy(165g, 蚊帳兼用), 冬季は多少重いがRab Alpine Bivy(460g)で2泊までなら濡らさず快適に過ごせている。
 どのシェルターでも共通するが、1.外気→2.シェルター→3.Rab Alpine Bivyの順番で温度は低くなり、2.と3.の温度差が大きいとBivy内の結露が酷くなる。1泊逃げ切りでない限り、シュラフを濡らしたくなければ、シェルターもできるだけ密閉したほうが良い。

■幕営面積
2人用 3x3のサイズで、外径2m四方の面積を専有することになる。
長辺が210cm、短辺+ドア部分で200cmほど。前述の通り混んでいるシーズンと場所を避けるのと、幕営面積を狭める努力も必要だ。
オリジナルでは124cmに調整したトレッキングポールを支柱にしているが、耐風性は下がるが130cm等に上げて面積を狭める。
 高さはキープしてタープ自体を小さなものにすることも考えられる。3x3はいわゆる10x10feetだが、男前タープ: 9.5x9.5feet(285x285cm)、もっと下のFieldoor TC Tarp: 9x9feet(280x280cm)でも身長170cm 一人ならば体を横たえることは可能だ。
 DD SuperLight Tarpの460gは十分に持ち運べる重さだが、もっと軽いものであればDyneema素材のFlat Tarpは海外から取り寄せられる。

候補:
(1) HMG: HyperLite Mountain Gear
https://www.hyperlitemountaingear.com/collections/tarps/products/ultralight-tarp
アメリカ。もうマスプロだよね。URLをクリックするとサジェスト汚染。259cm四方で251g。
タイアウトポイントがA-Frame想定に固定なため、自由度は低そう。

(2) ADOTEC GEAR
カナダのガレージブランド。9x9feet(274cm四方) 176g!! で、タイアウトが少ない吊るしの品がある。
https://adotecgear.com/product/9-x-9-flat-tarp/?currency=CAD
しかし ここの強みはタープをカスタマイズ出来ること、縫製が丁寧でループ部分までDyneema素材で結合されていること、Dリングの他に初めからLineloc3をループに選べるところ。
https://adotecgear.com/custom-tarps/
試しにDD Tarp 3x3と同じ寸法とループ・タイアウトポイントで見積もりを出したところ、CAD $700(2021年10月時点で¥65,500)!だった。サイズやタイアウトポイント(1箇所$9)をいくつか諦めればもっと現実的な値段になるはず。

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(ふつくしい・・・)

(3) Etowah Outfitters
アメリカのガレージブランド。吊るしだけだが10x10feetでDD Tarp 3x3と全く同じ位置にタイアウトあり。価格も安い。
https://www.shop.backpackingadventuregear.com/

 数少ないレビューを見るとサポートは良いらしいが、そもそも縫製が雑・・。これはテンションを掛けたくないループだが、価格で悩む。
https://backpackinglight.com/forums/topic/etowah-outfitters-8-510-dcf-dyneema-tarp-review/
あと店主がLinelocが嫌いなのか、Dリングしか選べないらしい。

(4) Bearpaw
アメリカのガレージブランド。どうにもサポートの評判が悪そうだ。
https://www.bearpawwd.com/tarps/flat_tarps.php

(5) bonfus
266x266cm 187g. 売り切れ中。
https://bonfus.com/product/dcf-square-flat-tarp/

(6) GearSwifts
ブルガリアのガレージブランド。小さなタープは良かったが、欲しいサイズはない
https://gearswifts.com/shop/shelter/tarp/

(7) Hammock Gear
アメリカの ガレージメーカー。
Kuri Adventuresの先生のインスタから辿る。ハンモックに特化したユニークなカットで、価格も安いが、ハンモック用しかない。
https://hammockgear.com/dyneema/

(8) Dutchware Gear
オランダ? Harry.I氏の動画から辿る。ハンモック用しかない
https://dutchwaregear.com/product/rectangle-tarp-with-dyneema-composite-options-copy/

 もっと広さがいる場合や2人の場合、支柱にトレッキングポール1本を使うのではなく、木の間にリッジラインを通して頂点のループにフリクションヒッチを結んだり、ポールの2又化(Locasgear DPTEやOGAWAなどキャンプ用品)をしても良い。
 重量と生地の厚さも注意が必要だ。大体0.51oz/㎡で完成品が200g前後となるが、スケスケなので日差しは避けられないしプライバシーも捨てることになる。

■設営に練習が要る
オリジナルのPapa Hiker氏の張り方では、
(1) 1辺 2箇所を固定(Lineloc3)
(2) ドアと反対側の壁をカラビナで結合
(3) (1)と反対側の1辺 2箇所を固定
(4) ポールを立てる

としているが、この人がやっているみたいに、
How to make a Hexpeak Tent with a 3m x3m DD Tarp setup - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=tWLdoZvTs1M



(1) 1辺 2箇所を固定(Lineloc3)
(2) ドアと反対側の壁をカラビナで結合
(3) ポールを立てる
(4) (1)と反対側の1辺 2箇所を固定
自分にはこれがしっくり来た。

また、Linelocやガイラインは、予めタープに取り付けておくと楽だ。
ザックから取り出すときに風に飛ばされないように、ガイラインを体に結びつけておくのも良い。

■準備するもの
DD Tarp 3x3
キャンプ場で使うならば、4x4推奨。
124cm以上に調整できるトレッキングポール(長いのしかないならば、斜めにしても良い)
ペグ・ガイライン(1m+)最低6箇所。最大12箇所
ドア固定のガイライン2本(1.5m)
カラビナ2個
■あれば便利なもの
Lineloc3 x6箇所
Lineloc WSR x1箇所(ドア)

Lineloc3は、持っているタープ全部に取り付けておくと数が必要になるので、30cmのガイラインで作ったループに通したものを準備しておいて、使うタープにカウヒッチで都度取り付けると経済的。(写真は中華Lineloc。黄色い部分をタープのループに結ぶ)

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焚き火用のFieldoor TC Tarp 280x280で。タープのサイズに合わせてポールを115cmに調整する。

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狭いため115cmに調整したポール2本を、Locasgear DPTEで二股化した。
別のTC Tarp 、「男前タープ」は285x285。なぜこんな半端なサイズかというと、feet単位で9.5のためだそう。9feet=274cm, 10"=約300cm。

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