【本紹介】Invent&Wander (ジェフ ベゾス)

 言わずと知れたAmazon創業者であるジェフ・ベゾス。彼の言葉で学ぶべき事が多いと感じるのは、彼自身が「変わっていくものではなく、変わらないものに目を向けること」という原則を大切にしているからだと思う。

本質は、なにか。10年経っても価値が残っているものは何か。自分の中で、他者に模倣されない、テクノロジーに置き換えられないものを育んでいきたいと思っている自分にとっては、学びがあった。本書「Invest & Wander」は、ベゾス自身の、味わいのある言葉・文章から成っている。原著の英語版がKindle Unlimitedで無料で読め、和訳版も出ているため、英語の勉強にも最適だと思う。(訳者は Factfullness, Zero to oneを手掛けた関美和さんなので、日本語訳との対比をしながら、英語学習教材として読みたい人にもおススメ)

自分の根底にある情熱は、そもそも見つける事が容易ではないと思う。まして、それに従って実際に行動している人は稀だ。でもそれは見つけようと思わなければ、掘り出す事はできない。行動しなければ、自分の人生を変容できることもない。

あらゆる領域の知識を貪るように学ぶ人は、自然の中に存在する一定のパターンを見つけるのが得意になる。

ベゾス氏の根っこにあるのは、人一倍強い「好奇心」。通っていたモンテッソーリ教育を取り入れている幼稚園では、一度熱中したらそれにのめり込んで周りが見えなくなってしまうため、先生が椅子ごと幼いベゾス少年を抱えて移動させたという。

自らの情熱を大切にし、信念に基づいて生きる彼は、社員にもその大切さを説いている。人は湧き上がる自分の信念や志に基づいて行動するときに最も能力を発揮するからだろう。

社員が会社にとどまるのは、使命のためであってほしい。卓越した人材を採用し、惹きつけておくにはどうしたらいいだろう?
まず何よりも、偉大な使命、本当に意義のある目的を与えることだ。
アマゾンはたくさんの会社を買収している。たいていはホールフーズよりはるかに小さな会社を、毎年何社も買収する。創業者に会う時、私はいつも、まず何よりも1つのことを見極めようとする。その人が使命を持った伝道者か、それとも金目当ての傭兵かということだ。傭兵は株をすぐに手放す。伝道者は自分たちのプロダクトやサービスを愛し、顧客を愛し、偉大なサービスを作ろうと努力する。矛盾するようだが、より多くのお金を稼ぐようになるのは、後者の方だ。相手がどちらのタイプかは話してみればすぐにわかる。

ベゾス氏が、ワシントンポスト紙を買収した時にも、自分が80歳になった時にその決断をどう思うだろうか(今は90歳になった時の事を考えているらしい)ということをひとつの判断基準にしていたことは興味深い。

(ワシントンポストを買収させ、黒字にした事について)
今ではインターネットを使えば、お金をかけずに配信できる。この力を使わないではないし、それが基本戦略だ。比較的少数の読者からたくさんお金を取るモデルから、非常に大勢の読者からほんの少しずつお金をもらうモデルに変えなければならない。私たちはその移行を成し遂げた。

 仕事とプライベートについて。ワークライフ"バランス"という言葉のそもそもの設定について疑問を呈す。そもそもゼロサムでバランスを取るものではなく、双方を膨らますような考え方もできるはずだと。

長い時間、激務続きでヘトヘトになることもあるかもしれない。だが、問題は長時間、仕事に縛り付けられることではない。たいていは活力の問題だ。仕事で活力が奪われているだろうか?それとも仕事で活力が湧いてくるだろうか?
ワークとライフはバランスを取るものではなく、ぐるぐると環のようにめぐるもの、つまり循環だ。ワークライフバランスという言葉は、ワークとライフがそもそも両立しにくいような印象を与えるので、とても危険だ。
私の出発点は使命です。使命があれば、叶える方法は3通りです。営利企業として叶えるか、非営利組織を通じて叶えるか、政府と協力するか。

既に、巨万の富を得ているベゾス氏は、自分が価値あると感じている対象に自分の時間を費やしている。宇宙事業しかり、教育事業しかり。教育については、①ホームレスの家族を助ける活動を行っている非営利組織に資金を提供すること。②低所得地域で生まれつつある新しい良質な非営利幼稚園のネットワークを作ることを目的とした、ベゾスデイワン基金の活動を行っている。

やりたいことの具体的なアイディアはいくつかありますが、さすらう力もまた大切です。仕事でも人生でも、私がこれまでにした最良の判断はいずれも、心と直感とひらめきによるもので、分析によるものではありません。分析で決断できるならそうすべきですが、人生で最も大切な決断はいつも本能と直感と好みと心で決めてきました。それもまた、Day Oneの哲学の一部です。
 We have some very specific ideas about what we want to do, but I believe in the power of wandering. All my best decisions in business and in life have been made with heart, intuition, and guts, not analysis. When you can make a decision with analysis, you should do so, but it turns out in life that your most important decisions are always made with instinct, intuition, taste, and heart, and that’s what we’ll do with this Day One Fund too. It’s part of the Day 1 mentality. As we go about building out this network of nonprofit schools, we will learn new things, and we’ll figure out how to make it better.

宇宙産業に関わる理由、壮大な未来への夢について。

未来の宇宙起業家のためのインフラが整えば、私が1994年にアマゾンを立ち上げた時のように、驚くべきことが起こります。それも凄いスピードで。それは確実です。環境が整えば、人々は思いっきり創造性を開花することができます。私たちの世代が宇宙への道を開き、インフラを気づけば、大勢の未来の起業家が本物の宇宙産業を創造するでしょう。私は彼らをその気にさせたいのです。大きすぎる夢に聞こえるかもしれませんし、実際これは大きな夢です。いずれも簡単ではありません。何もかも難しいことですが、人々の心に火をつけたいのです。ぜひ考えてみてください - 大きなことも小さく始まる、と言うことを。

 叩かれる事が多い大企業であるアマゾンであるけれども、いち早く最低時給15$を実現させたり、たとえアマゾンの仕事と関係なくても、人気のある専門領域のキャリアにつながるような資格や学位を取るための学費の95%をアマゾンが支払うCareer choice Program(16,000人を超える社員が活用)、全米の小学生から大学生までSTEMとコンピューターサイエンス教育を支援するために5000万$をサポートするなど、未来に向けた活動を様々行っている事は、あまりメディアでは報道されていないかもしれない。個人的には、大手出版社が電子書籍の著者に払う印税率は17.5%である中、KDP(Kindle Direct Publishing)では印税率70%を実現させた点は、世の中の書きたいと思っている人達に大きな可能性を与えた事だと思う。


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